平日
薄い黄色に輝く朝日が私の肌を焦がす。日焼け止め塗っとくべきだったな、と後悔しているうちに学校に到着した。
外履きを脱ぎ上履きに履き替える。朝日が入らない昇降口の廊下は外とは違って薄暗い。上履きの踵を踏みながら自分の教室に向かう。
当然のことだが教室に入るとクラスメイトがいる。
それぞれ、教科書を忘れたやめっちゃ眠いやと呟いている。
私は自席に荷物を下ろす。それと同時に「おはよう。」と明るい挨拶がくる。中学一年生から同じクラスの
「おはよう。」と私も陽子に返す。
「今日も暑いね。こんな暑いのに先生はエアコンつけないってどういう事?」と陽子は愚痴る。
「そうだね。この暑さだったら干乾びちゃうよ。」と私も共感しながら荷物を机の中に入れるなり、ロッカーにリュックを入れるなり、作業を進めた。
その後、自席に座って一点をじっと見つめた。
「小夏、また
そう、私が見ていたのは石崎くんという男子の席だ。丁度私の席から、三つほどに位置している。
石崎くんとは二年生の頃から同じクラスの男子。元気で頭が良くクラスの中心人物の一人と言える存在だったが、二年の夏にいきなり登校しなくなった。
休日に見かけた人もおらず、一時期誘拐に巻き込まれたのではという噂が流れたが二学期に入ると石崎くんは登校を始めた。でも、一学期と比べると登校日数は大幅に減少していた。
そんな石崎くんは今日も欠席である。
「小夏、やっぱり石崎くんのこと好きなんじゃないの?」と陽子が私をからかう。
「だから、そうじゃないって言ってるじゃん。」と私は反論する。
陽子は私の反論に対して、ふ〜ん。と意味ありげに反応した。
本当に好きではない。ただ、何故登校をしなくなったのか気になっているだけでその理由を突き止めたら興味がなくなるのは目に見えている。
そんな話をしていると直ぐにホームルームの時間になった。
今日の日直が教室の前に出る。予定を確認し、健康観察をし、係などからの連絡をし、最後に先生の話がある。その先生の話が始まろうとした直後、ガラガラガラ、トンと教室の後ろの方からドアを開ける音がした。そこには私が朝から見つめていた席の人、石崎くんが居た。
彼は焦ってもいなければ、息を切らしていない。ただそこに悠然と立ち「遅れました。」と一言だけこの教室に投げた。
先生は「石崎、早く座りなさい。」と怒っているとも呆れているともいえない口調で石崎くんに言った。
石崎くんは「はーい」と間の抜けた声で席へ移動した。
私の前で石崎くんは準備をしている。そんな中、先生は話を続ける。
何事も無かったかのようにホームルームは終わった。
するとクラスメイトが一斉に喋りだした。内容は、やべ、宿題やってねー。や今日なんかダルい。というものでホームルーム前の会話と大して変わっていない。
私はそんな声たちの間を縫いながら一限目の準備をした。
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