一日前
次の日珍しく朝の八時に目が覚めた。この機会を逃すまいと私は急いで着替え外へ散歩に出掛けた。
散歩は大学生以来でとても新鮮だった。
朝日は東の空に浮かんでいる。二月の空気は透き通っていて気分がいい。
一歩ずつ歩みを進めていく。見知らぬ道を行く。
公園で幼子が遊んでいる。自分も子供の頃はこんなにはしゃいでいたのかなと思った。
それと同時に自分が幼い頃遊んだ時の情景を思い出した。
昔はよく妹と遊んだな、と思い返す。それを母親がにっこりと微笑みながら見守る。
シングルマザーの私の母親はいつだって
それを思うと何故か涙が出てきた。誰にも気づかれたくないため、私は公園を去った。
こんな事で泣くのは恥ずかしいしなんせ何年もの間泣いていなかったから驚きもあった。
あぁ、母親に会いたい。と不意に思った。
一昨日のようにいつも電話でしか話さないため顔を見るのはかなり久しぶりになる。
一応、実家ぐらしの香代に電話をしようと携帯を取り出した。
ぷるるるるる、ぷるるるるる、ぷるるるるる、ぷる、ガチャッ
【もしもし?】と聞こえてきたのは香代の声だった。
「もしもし、香代?今から実家に帰っていい?」と私は単刀直入に言った。
【いいけど、、、お母さん今外に居る。当分戻らないと思う。】と香代から言われ少しショックを受けた。
【どうしたお兄ちゃん?】と香代が訊いてきた。
「別になんでも無いよ。」と私は返す。
【そう、、】と言う香代の声は寂しそうだった。
「やっぱり今日は行かない。」と私は香代に告げ、電話を切った。
母親がいないなら意味が無い。と私は突発的に思ってしまった。
ごめんよ、香代。
その晩、モチベーションが上がらないまま私は椅子に座ったまま時が経つのを待った。
天井を仰ぐ、ずっと仰いでいる。
すると、ヴーー、ヴーーと携帯から鈍い音がした。
画面には香代の文字が浮かんでいる。
通話ボタンを押し「もしもし?」と私は言うと。
【ごめん、お兄ちゃん。ごめん、お兄ちゃん。】と香代が泣いている声がした。
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