第5話 人から聞いた話・文鳥の寝言

 文鳥仲間のアヤコさんの話。

 彼女は七才になるオスの白文鳥『ブン太』と一緒に住んでいる。ちなみに『ブン太』は俳優の菅原文太からとったそうだ。


 ブン太には、寝言を鳴く癖があった。晩の10時頃になると、鳥かごの中で「グルグルキュー」と鳴いていた。文鳥も夢を見るらしい。

 先日、彼女はブン太と一緒に2DKのマンションに引っ越しした。

 寝室は一番広い6畳間で、南向きの明るい部屋にした。


 ブン太の鳥かごは、アヤコさんと同じ寝室の窓際である。

 引っ越してから、ブン太の寝言が変わった。

 毎晩0時を過ぎると「ふにゃあ、ふにゃあ」と鳴くようになった。

 


 真夜中に「ふにゃあ、ふにゃあ」と鳴くブン太だが、昼間は元気なのでアヤコさんは心配はしていなかった。

 ブン太の寝言をうとうと聞きながら、寝入っていたという。


 引っ越してからしばらくして、アヤコさんのマンションに友達が泊まりに来た。

 アヤコさんは、自分と同じ部屋で来客用布団を敷いて、友達に寝てもらった。

 次の朝。

 友達は、朝ごはんも食べずに帰ろうとする。


 何か気に障ることをしたのかと、慌てるアヤコさん。

 友達は言った。


「夜中にふにゃあ、ふにゃあっていう鳴き声なんだけど」


 ああ、とアヤコさんは言った。前に話したことあるでしょ? ブン太の寝言だと。

 しかし、友達の表情は暗い。


「あんた、あれ、ブン太の寝言だとおもっているの?」


 文鳥にしては変わっているが、寝言だとそう思っていた。

 猫か赤ん坊のような鳴き声だとは思ってはいたけれど。


「あれ、ブン太じゃないよ」


 友達は言った。


「赤ん坊の泣き声よ」


 怖いこと言わないでよと、怒るアヤコさんに友達は言った。


「あの泣き声の後、しばらくしたら『ねんねんころりよ』って、部屋の隅から女の歌声が聞こえてきた」


半信半疑だったが、気持ち悪い。

だけど、資金や時間の都合で、すぐには引っ越せない。

アヤコさんはブン太の鳥かごと一緒に、北向きの部屋に寝室移動した。


家具を移動していたら、見えない誰かに足をぐっと掴まれたらしい。

友達の話は、本当かもしれない。

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