第27話

「おっ……お待たせしました!」


驚きやがれ、琢斗くん!

うちの茜ちゃんの凄さを思い知るがいい!


「コスプレしてって言いましたっけっ!?」


レザースーツに身を包んだリアル・不二子ちゃんよ!

インドアの遊びを突き詰めて衣装作りまくったのが功を奏したわね!

自分で用意しておいてなんだけど、似合いすぎて恐ろしいわ!


「えっと……あの……これを着るべきだって、お母さんが……」


そりゃ勝負に出るわよ。

だって負けられないんだもの。


「どーよ、うちの茜ちゃんは? イケてるでしょっ!?」

「イケてるかイケてないかなら、イケ過ぎてるわ! ってか、クルマに乗るのに何でこの服選んだのよ!? あとすっかり騙されたわ、年齢不詳めっ!」


よし、掴みはおっけーね。

あと、ホントに姉だと思ってくれてたのね。

おねーさん嬉しいわ!

でもね?


「年齢不詳って程じゃないと思うけど? 私一応29だし?」

「何歳の時に東雲さん産んだんだよ!?」


そこはねぇ……うふふ。


「茜産んだのは14の時ね。誕生日は茜と一緒だから、3日後には30になるけど……プレゼントよろしくね?」

「詳しく聞いていいのか困る話をぶっ込んでくるなよ! あとプレゼントね! 分かりましたよ!」


あら、興奮してるように見えても冷静ね。

あとプレゼンの確約頂きましたー♪

何なら私に本命プレゼントでもいいのよ?


「アリガトー。楽しみにしてるわね。あと茜産んだのは、色々と身の危険を感じた末に、誰かに犯されるくらいなら旦那とヤッちまえって旦那拘束して無理矢理ヤッたら見事に当たっただけだから」


あの当時はもうストーカーとか酷かったから……路地裏に連れ込まれて危うくってのも片手じゃ足りなかったし、義務教育すら放棄しようと真剣に考えてたからねぇ。

それに母親は自由人過ぎて私もお父さんも放り出して行方知れずだったし、お父さんはそれがトラウマになって私を避ける様になってたし……まぁお母さんの若い頃にそっくりだって話だったから、思い出しちゃうんだろうなぁ……と思ったら避けられるのも仕方がないとは思ったけどね。

むしろ逆ギレされてDVなんて事にならなくて良かったとさえ思ってるし。

そういう点で考えれば、やっぱりお父さんは優しかったんでしょうね……あれだけ自由人だったんだから、その可能性は頭に無かったのかと問い詰めたくはなったけどね。

と、まぁそんな感じで頼れるのは昔から仲が良かったお隣さんで、そこのお兄さんに頼りきりだった私の行き着いた先もお兄さんだった訳で。


「犯罪臭がヤバ過ぎだわ! 反応に困る返答とか聞きたくなかったよ! 良い旦那さん捕まえておめでとうございますね!」

「アリガトー。旦那は私の事大好きだったから合意よ、合意」

「さっき拘束したって言ってましたけど!?」

「……後々でも旦那が納得すれば、それは合意なのよ!」

「開き直りやがった!」


これでもお父さんには元気出してもらおうと自分なりに頑張ったんだけどなぁ……結局お父さんも夜逃げしちゃって、どうしょうもなくなった私が隣のお兄さんに頼るしかなかったってのも……いや、それは言い訳ね。

あの時はもう頭がグチャグチャで「お兄さんと結婚するしか生きる道は無い!」って思い込んでたから……完全に獣だったわね、あの時の私は……後悔は無いけどね!

さすがに「私が襲いました!」って旦那の両親に話したらドン引きされたけど……良い人達だったから後見人になってくれたし、16になってすぐの結婚も認めてくれたんだけどさ。

婚姻届はどうしたって?

そりゃ夜逃げする前にお父さんに書いてもらってたわよ?

「16になったら隣のお兄さんと結婚するから、今のうちに婚姻届にハンコ押しといてね」って言ったら「そっかぁ……」って悲しそうな顔されたけど……仕方がなかったのよ!

だってホントに頼れる人が旦那しかいなかったんだから!

あ、そんなこと考えてたら、琢斗くんが話終わらせちゃったわ。


「とりあえず、東雲さんは違う服に着替えてきてね」

「あの……これはやっぱりマズいでしょうか?」


なんでよ!

似合ってるでしょうが!

私達はそこのウクライナ美人さんに勝たなきゃならないのよ!

あと多分同じレベルでヤバそうな妹さんにもね!

ネタに走ってる感じなのは、私の趣味だけど!


「似合ってはいるんだけど、もう少し普通の服でね……」

「……はい、分かりました……」


そこで分かっちゃダメよ、茜ちゃん!

負けられない戦いなんだから!


「茜ちゃん……やっぱりアレよ! アレを着るのよ!」


もう一つの勝負服……アレなら琢斗くんだってイチコロよっ!


「……ちなみにアレとは?」


そこで聞いてくるとか……ダメよ、琢斗くん。

ネタバラシは良くないわ……って、あ……ヤバい。

少し本気で怒ってる……ゴメン、ネタバラシします……。


「……メイド服ですが何か?」

「『何か?』じゃねーよ!? ちっとも普通の服じゃないだろうが! ってか、何でメイド服があるんだよ!?」


だって可愛いでしょ!?

仕方がないじゃない!

茜ちゃんにすっごい似合うんだから!

メイド服姿の茜ちゃんにご奉仕されてみなさいよ!

琢斗くんイチコロよ!?

だから!


「負けられない戦いだからに決まってるでしょ!」

「何と戦ってるんだよ、アンタは!? あと負けられないと何でメイド服なんだよ!? あと、ちっとも所有の説明になっとらんわっ!」


そんなの決まってるでしょ!


「最強のメイドと言ったら日本一有名なまほろさんでしょ! 勝負服としてまほろさんバージョンのメイド服は鉄板よ!」

「鉄板どころか398日後に活動停止しそうだからヤメロ!」


そんなツッコミは欲しくないのよ!

でも……意外と知ってるわね、琢斗くん?

これはもしや……危険な問題を孕んでそうね……要チェックや!


「……あ、あの……結局私はどうすれば……」

「メイド服に決まってるでしょ!」

「いや、ホントに普段着でいいから……」

「……はい……分かりました……」


くっそー、普通の服かぁ……インパクト弱いけど、茜ちゃんの可愛さなら何とかなるわ!

きっと!

たぶんね……あぁ、茜ちゃんの落ち込みも分かるわぁ……。


「あ、東雲さん、チョット待って」

「はい?」

「今の東雲さんスゲー似合ってるから、写真撮ってもイイ?」


おおっ!

ここで褒め殺しに来るとか、この女誑しが!

でも褒めてつかわす!

茜ちゃんの喜びぷりったらもう……。


「はっ、はい、どうぞっ!!」


さり気なくポーズまで取っちゃって……ホント、ウチの娘は最強だわ。

でもね……。


「わ……私に突っ込みはないのかしら? かしら?」

「めんどくさいんでパスの方向で」

「ひどい! 頑張ったのに!」


ネタに反応してくれるかどうか確認したくて頑張ったのにっ!

私のセンサーにはびんびんに反応してるのにっ!

二次元レーダーがねっ!

あと……やっぱり凄いわね、琢斗くん。


「……琢斗……今日はホントにヒドい……もう泣くよ?」

「マジごめん……あとでフォローするから、ホントに勘弁して……」


こんな美人さんを放置出来る琢斗くんには戦慄を覚えるわ……。

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