第24話
同性だから平気かなと思ったけど、あまり平気じゃなかったみたいだ。
まぁしばらくすれば慣れるだろうし、紹介だけしとけば勝手に仲良くなるだろう。
美人さん同士なら共感する部分も多そうだし。
ってな訳で。
「えーっと……紹介します。うちの美人さん、ソナタちゃんです」
「……ソナタです……ってか琢斗、説明求む……」
「え〜、めんどくせぇ……」
今回のは仕事じゃないし、東雲さんの事情を詳しく説明する訳にもいかんし……よし、放置でいこう。
「で、こちらがクラスメイトの東雲茜さんと……あ、スミマセン、お姉さんの名前をお伺いしてませんでしたね……」
いかん、普通に絡んできて流れるように話をしてたから、名前聞くのすっかり忘れてたわ……。
「東雲茜です! よ、よろしくおねがいします!」
東雲さんは何で緊張してるんだ?
ソナタ見て緊張する人が多いのは確かだけど、東雲さんもお姉さんも美人さんなんだから慣れてるだろうに。
それはともかく。
「はい、改めまして自己紹介を! 東雲真由美、17歳です! おいおい!」
「ここで違うお姉ちゃんのネタぶっ込んでくるなよ!」
何でここでネタぶっ込んでくるかな!
確かにお姉ちゃん被りではあるけど!
しかも妙に前のめりで攻撃的だし!
おかげでややこしくなる未来しか見えん!
「……琢斗……どうしてそんなに仲が良いの? やっぱり浮気?」
「お前はまず思考を手放すな。何故そんな結論になる? あと姉弟で浮気もへったくれもねーよ」
「……琢斗と私、血は繋がってない。普段からラブラブ。でも琢斗の隣に美人が二人。浮気確定。証明終了」
「なんの証明にもなっとらんわ!」
一緒にいただけで浮気認定されたら、アイドルの撮影スタッフは全員アイドルと浮気してる事になるじゃねーか。
あと、姉弟仲が良いのは悪いことじゃないけど、別にラブラブじゃねぇよ。
どっちかっつーと俺が父親でおめーさんを養ってるまであるぞ?
今は母さん達いねーから、飯作ってるのは主に俺だし。
それにしても真由美さんや……何でそんなショック受けたみたいな顔してんの?
あと東雲さんね。
「……むむぅ……」
むむぅ……って何やねん。
敵意っぽいものを感じるが……あれか?
強力なライバル登場ってヤツか?
たしかにうちのソナタちゃんは半端ない美女だからなぁ……。
でもまぁ、その辺の女のプライドみたいな何かを掛けた戦いみたいのは他所でお願いします。
TT−Rがここまでとは想定してなかったから、時間が時間がピンチなのよ。
「とにかく時間が無いんで、チャッチャと運んじゃいましょう。ソナタ、ゲート降ろしてベルト出しといて」
「……了解」
不満そうだけど、言うこと聞いてくれたからいいや。
あと……東雲さんは唸ったままだし、真由美さんはさっきの前のめり感はどこへやら……なんか呆然としてるけど、大丈夫か?
よー分からんけど、話を進めるとしよう。
「で、運ぶのはいいとして……東雲さん、この後予定ある?」
「は、はいっ! 教習所の予約はありますけどっ! それは夜なのでっ!」
こっちもそこまで時間掛からんし、こっちのタイムリミット的にもそんな遅くまでは時間取れないから問題無いな。
あとは。
「真由美さんは?」
「はへっ? あ、私も大丈夫よ?」
よし、東雲さんの足は確保出来たな。
「んじゃ、ハスラーでついてきてもらえます? TT−Rに関してのこれからの話も詰めておきたいですし、KSRの方もエンジン掛かっただけで整備はまだ必要だから、その辺の話もしたいしね」
「わ、分かりましたっ!」
「そ、それじゃすぐ準備してくるから、待っててね琢斗くんっ! ほら、茜ちゃんも早くっ!」
「は、はいっ!」
いや、そこまで慌てる必要はないよ?
でも急いでくれるに越したことないからイイか。
んじゃ、あとは“アイツ”だな。
さすがにメールやメッセージでやり取りの記録残しちゃうのは気分的に嫌な感じするし、電話にしとくか。
ま、とりあえず掛けるか。
コール何回目で出るかな……って、早っ!
1回目で出るとか、逆にビビるわ。
やり手の営業マンかな?
『……どうしました?』
「出るの早ぇよ」
『で?』
用件を早く言えと。
煩わしくなくて、そっちの方が助かるけどさ。
「あのよ……東雲さんの事情って知ってるか?」
『東雲茜さんですか? もちろん知ってますよ。それで?』
だよな……学生の身分だから他人に任せてるだけで、ホントの意味でのうちの学園のBIG−BOSSだもんな。
しかも“問題抱えてる”奴を積極的に集める方針を打ち出した張本人でもあるし、そりゃ知ってるか。
「手伝うことになった」
『……バイクはTT−R?』
ホント、話が早くて助かるわ。
さすが相棒。
「ああ。エンジン逝ってる」
『了解。準備はしておきます。時間に余裕はありますから、慌てずに』
現時点でフライトまで5時間切ってるから、移動時間含めると作業に掛けられる時間は3時間あるかどうかだけど、まぁ余裕だろ。
「ああ、分かってる。チェックまで含めて2時間以内に終わらせるから、よろしく」
『ええ、準備しておきますよ……色々とね』
「……ま、お手柔らかに頼むわ」
『もちろんです。それでは後ほど』
……さて、とりあえず前準備は済んだ。
それにしても、TT−Rって分かってるとか……思い出せば、手直しが多少必要な状態だったとはいえ、KSRをポンと書類ごと俺の前に置いていったのもあいつなんだよな……ここまで全部あいつの掌か?
って事は、この後の筋書きもだいたい決まってる感じか?
まぁ、今はどうでもいいか。
俺に出来る事をやるだけなのは変わらないし。
さて、それじゃTT−R載せちゃうかね。
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