第13話

「お見事っ!!」


そう言わずにはいられないわ。

だって見事に全て当てただけでなく、旦那の新たな一面を亡くなってから知る事になるなんて思いもよらなかったんだもの。

それはきっと茜も一緒ね。

嬉しそうにしてるのがその証拠。

でも。


「いや……見事って言われても、北海道目指すのなんてバイク乗りなら結構普通の事ですし、それこそ宗谷岬なんて一度は行ってみたいと思う場所筆頭ですし、そんな評価してもらうような話では……」


本人にしてみれば当たり前と思ってるのよね。

確かに北海道を目指すのは当たり前なのかもしれないし旗を見れば分かる人ならそう思うかもしれない……だけどね、そうじゃないのよ。

重要なのは「旦那の事を褒めてくれた」事と「旦那の事を教えてくれた」事なのよ。

でも、そう言ったところで本人は納得しないんでしょうね。

当たり前だと思ってるんだし。

であれば、感謝の気持ちを示すしかないわねっ!


「よし、分かったわ琢斗くん……私のおっぱい揉んでいいわよっ!」

「ブーッ!」


あ、コーラ吹いた。

リアルでコーラ吹くの初めて見たわ……。

そして即座に飛び散ったコーラをフキフキするとか、茜は良く出来た娘だわ。


「ど、どうしてそんな話にっ!?」


慌ててるのも可愛いわね。

でも残念。

私はSなのよ。

旦那に対してもそうだったしねっ!


「そりゃ勿論、感謝の気持ちを込めた報酬よ~」

「突飛過ぎるし豪華過ぎるわっ!」


あ、敬語が消えたわね。

よしよし。


「だって……今の私に払えるのはこれくらいだから……」

「俺が悪徳商人みたいになってるし、何で文無しの苦労人みたいに哀れさ演出してんのっ!?」

「そっか、これじゃ足りないのね……分かったわ……じゃあ力強く揉みしだいてもイイわ。でも出来れば優しくね?」

「話聞いてないし、報酬がつり上がってるし、矛盾した指定してるっ!」


あらやだ、ツッコミまで頭回るのね、琢斗くん。

じゃあ、これならどうかしら?


「私だけじゃ足りないっていうのね……それじゃ茜のおっぱいも好きにしていいわよ?」

「足りないんじゃなくて豪華過ぎるって言ってんだよっ! さっき貰ったコーラで充分だわっ! あと、勝手に身内を商品にするんじゃねーよっ!」


コーラで充分とか、それはそれで自分を安売りし過ぎじゃないかしら?

そして茜は……身体クネクネして、満更でもないのね。


「そんなこと言ってるけど、茜を見てみたら? OKみたいよ?」

「おい、そこの美少女、ちったぁ冷静になりやがれ」


おお、茜を景品にしても慌てることなく冷静に突っ込み入れるとか、流石ね。


「はっ!? す、すみません……」


ダメよ茜……そこは謝るんじゃなくて攻めるところよっ!

ってか茜ちゃん結構ポンコツ気味……まぁその辺はひとまず置いておくとして、まずは茜に突っ込んでもらえたから今はOKとしましょう。

少なくとも「ただの」クラスメイトから「仲の良い」クラスメイト位にはジョブチェンジしたでしょうしね。

でもこれだけじゃ足りないのよねえ……もっと知りたいのよ、色々と。

茜にとって……いえ、我が家にとっての有望な優良物件候補……逃さないわよ?


「ってな訳で、茜へのツッコミも無事済んだところで……」

「何が無事なのか意味が分からない……」


いいのよ、分からなくて。

こっちの話だから。


「そろそろお昼なんだけど、食べていくわよね、琢斗くん?」


茜から話を聞いてたから、一緒に準備してたのよね〜。

予想以上で驚きはしたけど、一応計画通りよ?


「……まぁ元々コンビニ弁当辺りで済ませるつもりでしたから、頂けるのであれば助かりますが……」

「じゃあ決まりね!」


よしよし……根掘り葉掘り聞いちゃうわよ〜っ!



----------------



本当にお見事と言うしかありません。

さすがは神です。

まだケイちゃんが直った訳ではありませんから不安な気持ちが無いと言えば嘘になりますが、彼が居てくれるだけで安心できますし、何よりこんなに楽しいと感じたのはお父さんが亡くなってからというもの初めての事です……って、どうして琢斗くんがお母さんの胸を揉むという話になるんですかっ!?

意味が分かりませんっ!

琢斗くんもそう言ってますしっ!


「私だけじゃ足りないっていうのね……それじゃ茜のおっぱいも好きにしていいわよ?」


あ、あれ?

私ですか?

はうぅ……ど、どうしましょう、心の準備が……。


「おい、そこの美少女、ちったぁ冷静になりやがれ」

「はっ!? す、すみません……」


あ、危ないところでした……イロイロとパニックで思考がおかしくなっていたみたいです。

でも、琢斗くんに突っ込まれました。

初ツッコミですね。

普段はお母さんからしか突っ込まれたりしませんので、新鮮です。

あと「美少女」だそうです……嬉しくて困ります……。

兎にも角にもお昼ごはんです。

ランチタイムです。

朝のうちに下準備はしてありますので、彼をお待たせすることはないと思います。

満足していただけるといいのですが……。

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