第18話羽柴戦開幕2日前 再会
「ハープですよ。かつてこのアマルフィでチケット入手がすごく大変だったハープ奏者がいたんですよ。多分あれは彼女のものです。」
「ならその彼女が弾くのか?」
「かつて、と言ったでしょう。彼女はとうに亡くなっていますよ。アマルフィに来るのに下調べ位しないんですか?」
「そういうのはお前に任すわ。芸術音痴なの知ってるだろ」
僕は呆れたが、いまさらなので流すことにした。
その時入り口に一人の男がたっていた。
「
良く通る朗々とした声が響き渡る。
その声に誘われるように入り口を見る店内の女性達は一斉にざわついた。
イケメンだとかカッコいいだとか、スタイルがいいとか、モデルか俳優かとざわめきは最高潮だ。
「来た」
「なにあれ!すっげ!イケメン!あの俳優だれだ?ハリウッド俳優か?」
アンドリューが何かを言っている。
「何をほざいているんですか?」
僕が呆れていると、入り口のイケメンは三人と増えていった。
「なんだエンダー知り合いか?」
「そうですけど、仮に知り合いでなくても知っていても不思議じゃないんですけどね……それジョークですか?」
アンドリューの方こそ僕の声に鳩が豆鉄砲食らったような顔をして、メン玉落ちんじゃねーのかって位見開きながら
「いやまじだけど?」
と答えた。
僕がなんと答えていいか考えていると、目の前の床に足がある……?
足音聞こえてなかった……。
何にも聞こえなかった。
このフロアーゴムではない。
ホテルマンのカメリエーレみたいに音がなら無いように靴に仕込みをしてるならいざしらず、足元に見えるこんな高級な革靴……わざわざんな仕込みする訳無い。
それなら、こんな忍者みたいにあるく人物なんて……僕は一人しか知らない。
「まさか」
恐る恐る顔をあげると
「久しぶりだね。エンダー」
綺麗な、まさに清涼というイメージがぴったりな声が僕に話しかけた。
そこに居たのはやっぱり……
「やっぱりあなたでしたか。足音もしないですし、どうせ忍者かあなただと思っていましたよ。悠」
「なんだ悠、知り合いか? って……エンダーじゃないか。
「ずいぶん色っぽい唇で、どんな極上の女かと思えば。元気だったか?相変わらずくちわりーな。また背が伸びたのか?成長期か?」
エンダーの特徴の一つはこの唇だ。口紅を塗っているかのようなすっぴんの唇は目元の泣きボクロと合わさって少年の危うい色気を醸し出す。そのくせ口は超絶悪いと来ている。食えないやつだ。
「バカですか?成長期?いったい僕のこと、いくつだと思ってるんですか!」
傾倒するムッシュにこんな口を聞くのもどうかとは思うが、何故かいつもこの人には……つい突っ込みたくなるのだ。
「そっくりそのままお返ししますよ」
「変わらんな。俺はまだまだ成長期だぞ」
三枝はエンダーの 頭をなでる。
エンダーは恥ずかしそうに頭をふるい……頬を赤らめながら三枝を睨みつけた。
「子供じゃないんですから。もう!成長期の訳が無いでしょ!デブりますよ」
僕は久しぶりの温かい手がうれしくて泣きそうなのをぐっと我慢した。
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