第3話 クリスマスの奇跡



 時は二〇一五年 十二月二十五日

 俺たちは十四歳。出会ってから四年の歳月が流れていた。


「悠、今日は何時に帰ってくるんだ?」

涼は孤児院の三階建てベッドの一番上から見下ろすと悠に向かって話しかけた。

「内緒ですよ」

サラサラの黒髪は、とても上質とは言えないようなシャンプーを使用してる癖に、なんでこんなにと思うほど手触りがいい。

 極意でも本にしたら、うれるんじゃねーの?って思うくらいのナイスビューティー

「秘密主義も大概にしろよ!今日はエマの誕生日だぜ!俺たちが出きることって言ったら、うまい飯に綺麗な花だ!」

「さっさと帰って来いよ?」

「うん。今日は結婚式のお手伝いだからコンセプトにあう良い花が残ったら貰ってくるよ」

「あー、俺も今日はモーニングだけだからさっさと帰ってきてディナーをつくるぜ!」

 その時はまさか悠があんな捨て猫を拾ってくるなんておもわなかった。

「おい!涼!今日夕方まで仕事延びたり出きるか?」

「すんません。今日はちょっと」

親方はおやっという顔をするとニヤニヤ笑いながら近づいてきた。

「なんだなんだ、これか?」

 親指をたてる親方は

「ガキのくせに一丁前だな。さすがにイケメンは違うじゃねーか!どこいくんだ?」

 俺は嫌そうな顔をして

「エマの誕生日ですよ!だからレモンとクルミのパスタとあと何かを作ろうと思って」

「なんだババァの誕生日か。ならお前これ持っていけよ!」

 親方はエマが大好きだ。いやこのアマルフィでエマを嫌いな奴なんかいるのかって位の人気者のババァ。


 俺は親方にもらった赤ワインを抱えてメルカートに向かって歩きだした。

「よお!涼。今日はぇーじゃねーか」

「女か?」

「ちょっと涼ちゃーん。暇なら遊ばない?」

 あわよくばゲットしよう。って奴らが男も女も、後をたたない。


 外野がガヤガヤうるさくなってきた。

 そろそろ視線も邪魔くせーし黙ってもらうか!


 俺はワインを掴み紙袋からだして高く掲げた。

「あのさー皆、今日エマの誕生日だから、今日は腕を振るうんだ!エマに 最高の飯を作ってやりてー。食材のプレゼントならありがたく受け付けるぜ!」

 俺は皆にウィンクをし歩きだした。

「ひゅー」

 あたりから口笛が飛んでくる。

「相変わらず良い声じゃねーか。歌手でもなりゃいいのによ。もったいねーな」

「なんだババァの誕生日か。赤ワインあんのか?なら牛肉の塊やるよ。ブラザート作れよ。この前安い肉で賄いに作ったの親方が残さずくったって聞いたぜ?」

「冬だしポレンタ作るにゃー絶好の季節だよ」

 横から髭じぃが口を挟んでくる。

「なんだあの親方が全部くったのかよ!スゲーなお前。今度俺にも食わせろ」

冬のアマルフィは観光客がほとんどいなくなるから威勢の良い港町の男達がそりゃー目立つ。


「ブラザートいいなー。肉くれんの?大将!」

「野菜もっていきなよ。エマ野菜食べないから太るんだよ!野菜にしようよ涼ちゃん!」

 新鮮な冬野菜をルッツォが沢山持ってきてくれた。ニンニクも入っていたし、バーニャカウダは確定だ!

 アンチョビ欲しいなー。お得意の人たらしの声で

「なあ誰かアンチョビくれよ」

 ゲットできないわけがない!

「バーニャカウダやるの?私が買ってあげるよ」

 さすが良くわかってるじゃねーか!

「レイラ!気が利く良い女になるぜ」

「今度デートしてよ」



 これだけゲット出来たら大丈夫だろう!レイラの最後のセリフには投げキッスで返し早々にホームに帰ってきた。





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