第2話
首領の首を持って、洞窟を出る。
入り口の岩に、少女が背を向け座ってた。
「終わった。聞いていたよりは少なかった」
猫人は生首を置き、布で包みはじめる。
少女はそれを横目で見て、自分の身の丈以上もある杖をゆらした。
「みたいね。やっぱり大げさに言っていただけだと思った」
杖先で包み追えた首をこづく。
「ガジュマル。ほかは?」少女は目を細める。「さらわれた……ヒトは?」
ガジュマルと呼ばれた猫人は首を振る。
「服はあった。聞いた赤い服。鍋に血があった。若い娘の臭いはした」
「……そう」
少女は目をつむる。銀髪からひとつだけのぞく黒いまぶたは彫刻のように感情がなかった。
だが小さく、なにかに祈っているかのようにも見えた。
「貴重な戦利品だ。ふつうは殺さない。先行した奴らが怒らせたのがまずかったんだろう」
先行した奴らとは、最初に依頼を受けた冒険者たちだ。
まだ若く、拙く、それゆえに過信していた。
彼らはゴブリンの洞窟の入り口を荒し、散々怒らせ、暗闇の中囲まれ、半分を失い、逃げ帰ってきた。
「娘の服はしまった。依頼人に会うのは俺だけでいい」
ガジュマルは生首を背負うと、座った少女を追い越した。
「ギルドを通さなかった依頼よ。非があるのは新入りと……軽率だった村人たちだけ」少女は声を低くする。「私たちに過失はない」
「知ってるさ。だが、この娘を失った怒りを、悲しみを、自分たちに向けろとは俺は言えない」ガジュマルは背中で応じた。
やれやれ、と少女は立ち上がる。
「相変わらず恨まれるのが好きね。……待ちなさい、私がリーダーなんだから、あんただけカッコつけないで」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます