11話 “Glitch” 後編
「――つまり、彼女は私に懸想していたと?」
「そういうことだァ。テメェが魔王サマにばっかり夢中で、無自覚に死への道を突き進んでるモンだから、一途で可愛いイラソルちゃんは思い詰めちまったのさァ。ケケケ」
「貴女は! ……そもそも、貴女が彼女に力を与え、唆したのでしょう?」
「いやァ? 確かにオレは力を与えたが、ソレはイラソルが望んだからだァ。オレは念を押して確認したんだぜェ? けどなァ、アイツの意思は変わらなかったァ。自分がどうなっても構わねェ、魔王が死んでテメェが生き残る道を切り拓けるなら……ってなァ」
「…………」
「依り代が木だったのはさァ……植物がイラソルにとって強く意識するモノだったんだろうなァ。……そういや、アイツからは花の香りがしていたなァ。テメェの好む花の香水でも使ってたんじゃねェか?」
「……確かに、彼女はいつもシアンの香水を使っていました。政務の妨害にならない程度に仄かに。好ましい香りで、私の集中力を高めてくれていました」
「ケケケ、そういうのは気付いたら一言褒めるのがイイ男ってやつだぜェ」
一通りの事後処理が終わり。
今はウルヴァナがフィデルニクスに、今回の経緯を……イラソルが何故このような暴挙に出たのかを語って聞かせている。
ちなみに。軽症者は数名いたようだが、エルフに死者は居なかった。
予め、フィデルニクスから全権を任されていたイラソルが、森から離れているように指示していたそうだ。
……狂気に陥ろうとも。同族への想いも本物だった。そういうことかもしれない。
「最終的にはァ? 自らが木となり、想い人すら木にしてしまう……そんな化け物に成り果てたって訳だなァ。木になっちまえば、自死なんて出来やしねぇし、使命も忠義も有りはしねェ。ずっと一緒に居られるってなァ」
……そうか。だから。だから樹が生えた時、俺もフィデルニクスも行動不能になったのか。
恐らくは「樹木は自分の意思で動かない」という概念を魔術に落とし込んだ代物だったのだろう。
アレは、彼女は。思慕の怪物。そういう存在だったのだ。
「ケケケ。ま、自分の命は自分のモノだけじゃねェって事だァ。これに懲りたら、もう少し周囲に目を向けてェ、命を大切にすることだなァ」
「それは……」
「アイツがどれくらいで目を覚ますかは知らねェ。分不相応な力を使ったからなァ。目覚めても、後遺症……足が動かねェとか、そういうのが残るかもなァ。テメェが面倒見てやれよォ、色男ォ」
「…………貴女に言われずとも」
甚大な被害はあった。
それでも。フィデルニクスが己の命を捨て去る事は、きっと、もう無い。
「忠義」も「使命」も、変わらず彼を縛り続けるだろう。けれど、そこに新たに加わった「思慕」の鎖が、彼が死ぬことさえ許さないから。
花の香りの女性は、自らの願いを果たして見せた。想い人が生き残るという、望む未来を手繰り寄せて見せたのだ。
ポツリポツリと雨が降って来た。
悪天候で海峡前にて足止めされた事から明らかなように、今は雨期。
雨降って地固まる……では無いけれど。
干からびた大地も、やがては潤う。魔力豊富な木々の再生力があれば、そう遠くない内に森は蘇る……とは、フィデルニクスの言だ。
ここを一時的に離れることになろうとも、直ぐに戻ってくるらしい。
ならば、近い将来。この場所には再びエルフが集う。そして、そこには知将と花の女性も欠けずに居る事だろう。
◇◇◇
「さて、とォ。契約の内容はァ、魔王サマの居場所を知ることが出来た理由を明かす……だったなァ」
俺とウルヴァナの右手の小指に、白い光の輪が現れて強く強く発光する。
契約の条件。48時間が経ち、魔術の強制力が働いている証左だ。
この状況において、契約内容に抗う行動をすることは出来ない。彼女は契約の履行を強制される。
「まァ、簡潔に結論を言っちまえば。「魔王エイジ・ククローク」が「やり直し」の元凶であり、「過去改編」を行っていたから、だなァ。」
「それが俺の居場所を突き止められる事とどう繋がるんだ?」
「おやァ? 自分が元凶って言われても驚かねェんだなァ。推測の範囲内だった感じかァ?」
「まぁな。「魔王」が事態の中心に居るのは間違いないと考えていた。……それで? 何故それが?」
その程度の事はとっくの昔に考えついている。
直感的ではあったが、勇者も同じ結論に至っていた。
「ケケケ、まァそう慌てるなァ。普通、「過去改編」ってモンは出来ることじゃねェ。……裏技でも使わなきゃなァ」
「裏技?」
その通りだ。複数の理論によって、如何なる魔法・魔術でも「記憶を保持したままのタイムスリップが行えない」、即ち「繰り返しても同じ結果になる」、故に「過去改編は不可能」と明らかになっている。
しかし。
「そうさァ、裏技。世界のバグ技だなァ。んで、それを使っちまうと、魂が特殊な……妙な場所に深く繋がっちまうのよォ。オレはその辺りに少し縁があるモンで、魔王サマの居場所が分かったってェ寸法だァ」
「……その裏技というのは?」
彼女が「裏技」と表現するナニカ。それがあれば、「過去改編」を実現させる可能性があるのだという。
それは一体何なのか。問いかければ、彼女は――
「ケケ、ヒントは誰でも見聞きしてる程度の話なんだがなァ。……「交換魔法」、または「契約魔法」だぜェ」
――と、答えた。
◇◇◇
「基礎的な事の確認だァ。契約魔術において、「事物の誤認」が起きないのは何故だァ?」
何故ここで契約魔術の話が……いや。8柱の神々の「交換魔法」を、神々との契約によって人の身で再現したモノが、最初の聖女ヒルアーゼの「契約魔法」。それを大幅にスケールダウンさせた結果が「契約魔術」。
ならば、この話には明確な繋がりがあるということか。
「契約者双方の認識が、限定的に共有されるからだ。それがあるから、同姓同名のヒトであろうとも、契約魔術の対象になってしまう事はない……だろ?」
問いかけに教科書的な模範解答を返す。
例えば、「俺」と「勇者」は「シムナス」を傷つけないという契約魔術を結んでいる。
この時、「勇者」は「シムナス」という名前の人物全員に危害を加えられない……わけではない。「勇者」は「俺」が「師匠として認識しているシムナス」に危害を加えられなくなるだけだ。
これは、契約魔術によって、契約条件の判別に関する事に限り、契約者の「認識」が共有されるから。
「師匠」ではない人物が、自らを「シムナス」と「勇者」に名乗ったとする。しかし、「俺が師匠シムナスとして認識する人物」でない以上、「勇者」はその人物に危害を加えることが可能なのだ。
「正解だァ。模範解答だなァ。……契約魔術ってのはァ、要するに。「特定行動の禁止」と「契約者の認識共有」という2段階の要素から成り立つ複雑な術式だァ」
その通りだ。故にこそ、契約魔術は非常に高度な魔術として知られている。
個人固有の魔法を誰にでも使えるようにしたモノが魔術であるが、契約魔法には適正の有無が存在するというのも、ココに起因する。
「契約者の認識共有」の段階が、先天的に出来る者・出来ない者で分かれてしまうのだ。
「けどよォ。そもそも何故、そんな事が可能なのかァ? ハイ、エイジ君」
「それは、契約者の魂にリンクが結ばれるから、だよな」
ふざけて学校の先生のように振舞うウルヴァナ。どこからともなくメガネなんて取り出して身に着け始めた。
その女教師コスプレには触れず、問いかけにだけ答える。そも、そんな露出の高い女教師が居て堪るか。
すると、彼女はあからさまに不満そうな演技をした後、さっさとメガネを外した。
そして、何事も無かったかのように続ける。
「そもそも「認識」ってェのは「記憶」だァ。んじゃァ、記憶ってのは何処にあるモンだァ?」
「普通は、脳だよな」
当たり前のことだが、「認識したモノ」が蓄積して「記憶」になる。
それが保存されるのは肉体の器官たる脳だ。
「そうだァ。だが、「転生者」ってのは、脳味噌が違ェくせに記憶を持ち越してやがる。これはオカシイだろォ? その記憶は何処から来たってんだァ?」
「それは魂の記憶、だろ?」
これも当たり前の話で。
転生したら、「前世」と脳が異なっている。ならば、普通は記憶が持ち越される訳がないのだ。記録された記憶は、脳と共に消え去っているはずだから。
しかし。「魂」にも「記憶」が存在しており、これこそが「転生者」の「前世の記憶」の正体である。ファンタジーが普通の世界で、かつ「転生者」という存在が居たからこそ明らかに出来た事実だ。
「そうだァ。生命は「脳味噌に蓄えられる記憶」と「魂が記録する記憶」の2つを並行的に保有しているわけだなァ」
生物が死ぬと、その一生の記憶が魂に転写される。魂はコレを繰り返し続け、数多の一生の記憶を蓄積し続けるのだ。
前の一生の上に次の一生が積み重なる。或いは、地層や、玉ねぎの断面図のように。
「転生者」が「前世の記憶」を朧気ながらも思い出せるのは、この「記憶の地層」の最も表層部分が表出した結果。魂が世界に定着しきっていない故に起こる現象と考えられている。
要するに。「脳の記憶」と「魂」にはパイプが結ばれている。
そして、「脳の記憶」=「認識する事象の堆積」であるため、「生物の認識」と「魂」も間接的に繋がっているのだ。
これを利用して。契約魔術は契約者同士の魂にリンクを結び、その繋がりを介して「認識の参照」を行う。故に、契約魔術において「事物の誤認」は起きない。
「それでなァ、契約魔術の元となった契約魔法も魂にリンクを繋げるんだよなァ。ただし、術者同士の魂を繋げるんじゃねェ。術者の魂を、ある存在に繋げるのさ」
……そういうことか。何となく話が見えてきた。
「つまり、その特殊な繋がりが俺の魂にあるんだな? ウルヴァナはそれに縁があって辿ることが出来た、と」
「大・正・解ッ! 流石は魔王サマだぜェ!」
大袈裟な動作で、わざとらしく褒めるウルヴァナ。快楽主義者って面倒くせぇ……。
動作は無視して、さっさと会話を進める。
俺に「契約魔法」の特殊な繋がりがあると彼女は言う。加えて、「契約魔法」はヒルアーゼが8柱の神々と契約する事で発動させたと伝わる魔法。
ならば。俺の魂が繋がる先。「過去改編」を可能とさせた存在は……
「……その存在ってのは、「神」か?」
「ブッブ~! 外れェ! ウルヴァナポイントはゼロになりましたァ~! また頑張って貯めてくれよなァ!」
うぜぇ……!
外れたという事実よりも、彼女の言動が気になってしまう!
てか、ウルヴァナポイントって何……? いつの間に貯まってたの? 貯まってたとしたら、たった1回の不正解でゼロになるって厳し過ぎない?
別にいらないけども! なんか気になる!
◇◇◇
「そもそもよォ。「神」なんて何処にも居ねェ。「創造神」も「8柱の神々」も、なァ」
「何だって?」
神が居ない? それはどういう事だ? それなら何故、「神」と契約を結ぶ「契約魔法」なんてモノがある?
「残念だがァ。それは話せねェ。ちょっと大昔の約束があるからなァ。……それよりも聞かなきゃいけねェ事があんだろォ?」
どうやら、ここから先はNGのようだ。
……ウルヴァナは「信条」に生きる者。話さないと決めたのなら、絶対に話さないだろう。
それを無理やり聞き出そうとするより、今は優先して聞くべき内容がある。彼女の言う通りだった。
その内容とは、即ち――
「交換魔法……或いは、契約魔法で「過去改編」が可能になるってのは、どういう事だ?」
――最初の話。そもそもの出発点だ。
「8柱の神々は交換魔法を使って何をしたって伝えられてるよォ?」
「そりゃあ、「有」を物質や命、法則に変え……」
創造神は「創造魔法」を使えた。しかし、それは「無」ではない「有」を生み出すことしか出来なかった。
故に。創造神は自らの似姿として8柱の神々を生み出し、神々は「交換魔法」によって「有」を物質や命、法則といったモノへと変えた。
……まさか!?
「……ははは、そういう事かよ。初歩的過ぎだろ。「バグ技」って表現も納得だよ。ユーザー舐めてるタイプのヤツだ」
「だろォ?」
「『パラレルワールド修正力学』、『タイムパラドックス否定説』、『絶対世界法則論』……何であれ、法則を造り出した「交換魔法」なら変えられるとでも? ルールなんて無いじゃねぇか」
「ケケケ、それは言い過ぎだァ。交換魔法や契約魔法はそんなに万能じゃねェよ。あれは徹頭徹尾、「等価交換」しか出来ねェ。単純に、既存の法則を僅かにスリ抜けられる可能性があるって程度の話さァ。そこまでクソゲーじゃねェから安心しなァ」
……何だって?
どういうことだ? 「交換魔法」でも法則を曲げる事は出来ず、別の方法で「過去改編」を実現するのか?
他にも疑問はある。ウルヴァナの言う通りに「神」が居ないのなら、「交換魔法」で法則を創造したのは誰なんだ。
そもそもの話。なんでウルヴァナは、こんな誰も知らないような事を知っているんだ。
疑問が次々と湧いてきて止まらない。
いや、落ち着け。ゆっくり考えるのは後でも出来る。
今はウルヴァナから情報を聞き出すことに専念しろ。
「交換魔法を使った所で、記憶を保持したままタイムスリップする事は出来ねぇ。多分だけどなァ。……だがァ、「普通の時間遡行」とは少ォし違う手法を取るのさァ」
「違う手法だって?」
「大真面目に時間遡行魔術を編み出そうとするなら、触媒も魔術も儀式場も「
「あ、あぁ。勿論」
そう。別に「時間の巻き戻し」自体は不可能じゃない。
超絶複雑で膨大な術式と、アホみたいな魔力と、ヤベェくらい貴重な触媒が山程必要になるというだけで。理論的には可能なのだ。
とはいえ、どれだけ苦労した所で記憶は持ち越せず、全ては同じ結果になってしまう。……つまり、何事も無かったのと同じになるのだ。無限ループが起きる事もなく、時間軸は先へ先へと進んで行くだけ。本当に無意味に終わる。
故に、「過去改編」は不可能なわけだが。
それとは別の方法による「時間の巻き戻し」を「交換魔法」は行える。ウルヴァナはそう言っているのだ。
「契約魔法は魂が契約で結ばれて発動する魔法。そして、魂は物質とは少ォしだけ異なる時間の流れを有してるんだよなァ。……だからこそ、紀元前3000年に死んだ奴と紀元後2000年に死んだ奴が一緒の時間軸に居たりする訳だァ」
……成程。
思い出すのは、茶髪クソガキのノイン。
アイツは古代エジプトで死んで、この世界この時代に転生した。
死んだ時期が全く違う者が、同じ時間に転生している。それは、魂が物質やヒトの認識とは全く異なる時間の中に存在する事を示す。
「要するに。魂に作用する魔法である「契約魔法」は、その対価を過去から徴収する事も出来るって訳よォ」
「そうか。やっと分かった。魔王エイジが隻腕だったりしたのは……」
「だなァ。「交換魔法」で「やり直し」の対価として捧げたんだろうなァ」
つまり。法則やら何やらを捻じ曲げたわけでなく、既存の方法とは別の方法によってタイムスリップを行っていただけ。
その対価として、何かを捧げていたのだ。
ビクトの魔王が「隻腕」だったのは片腕を捧げて、前回の記憶無しのタイムスリップを行ったから。
カルツの魔王が「魔術を使えなかった」のも同じ。
エイクや他のルートの魔王も、きっと何かを失っていた。
「記憶が無くとも、身体に欠損とかがあれば展開は変わっていく。それが魔王エイジの「過去改編」のカラクリだったわけか」
腕が無ければ、重点的に魔術を鍛えただろう。
魔術が使えなければ、剣技を極めただろう。
それらの差異によって、「未来」を変えようとしたのだ。魔王エイジは。
己を捧げて。捧げて。繰り返して。繰り返して。繰り返して……。
しかし、そうだとしても。
根本的に大きな問題が1つ残っている。
そもそも――
「……けどよ。交換魔法も契約魔法も。誰も使えない代物じゃないのか?」
「契約魔法」はヒルアーゼ固有の魔法。
「交換魔法」は8柱の神々の魔法。
そして、その神々さえも存在しないかもしれないという。
ならば、一体誰が使えるというのか?
「じゃァ、何でヒルアーゼは使えたんだァ?」
「それは彼女オリジナルの魔法だからだろ?」
「ヒルアーゼが死んでから約1400年。ずっと同じ魔法の使い手が1人も現れなかったァ? 本当にそんな事があり得るかァ?」
……正論だ。
確かに、魔法とは個人個人に固有の力。けれど、命の数だけ魔法があれば、当然ながら似たような効果の魔法もたくさん現れる。
だというのに、1400年もの間、誰一人として「契約魔法」に目覚めなかったのは流石に異常だ。
「つまりよォ、そこに最大のカラクリがあるのさァ」
「……そのカラクリってのは?」
「残念だがァ、これ以上は語れねェ」
「……厄介な奴に目を付けられて命が危ないから、か?」
「違ェ違ェ。そっちもあるが、さっきも言った「約束」の方だなァ」
約束……。
そう言えば、さっきも「大昔の約束がある」と語っていた。
「オレは自分が楽しくない事は御免だァ。この約束を破っちまえばァ、オレの気分は沈んじまう。なら、絶対に破らねェよォ。「前回」の魔王サマにもココまでしか教えてねェしな」
彼女が一度話さないと決めたら聞き出すのは無理だ。ましてや、それが彼女の「信条」に関する事なら尚更。
そして、「魔王エイジ」がこの情報だけで最後まで辿り着いたのであれば。
「魔王」を超えると宣言した俺も成し遂げねばならない。
それに――
「……まァ。ここまで知れば、次は分かるだろォ?」
――次に目指すべき場所・調べるべき事は明白だ。
「大魔聖堂……だな」
「ピンポンパンポン、大・正・解ッ! ケケケケケ!」
ゼクエス教の開祖、聖女ヒルアーゼが「契約魔法」を使えたのならば。
目指すべきは大魔聖堂……「ゼシドラル」。教皇直属の人員が構成する教会の最高権力機関。そして、「聖女」に関する情報を徹底的・独占的に管理し続けるブラックボックス。
そこで始まりの聖女ヒルアーゼや、神々について調べなければならない。また、教皇周辺を探る事で、ウアたちの情報を得ることが出来る可能性もあるだろう。
ただ、問題があるとすれば。
人間の支配領域は新型の「探知魔術」によって侵入できないという点なのだが――
◇◇◇
「エイジ君、これを」
「良いのか?」
フィデルニクスの手には指輪型の魔導具。
探知魔術を欺くべく開発された魔導具だ。
「これは巨人討伐に対する、エルフの長からの報酬です。信賞必罰は大切ですからね」
「そういう事なら遠慮なく受け取るよ。ありがとう、フィデルニクス」
「勘違いなさらないように。今は復興を優先させますが、私と貴方は敵のままですよ」
「……分かった。次に会う時は気を付ける」
「えぇ。その時は相打ち覚悟ではなく、完封して見せましょう」
「ははは……お手柔らかに頼むよ。マジで」
こうして、俺は再び人間の領域へと歩みを進める事が可能になった。
故に。目指すは大魔聖堂。教会の中枢。
恐らくは。
世界で最も「魔王」に敵対的な場所である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます