妻に裏切られた俺は、家政婦になっていた高校時代の同級生を雇うことにしました。その女性は俺に優しいので幸せです


「ねぇ、奈々さん」と、俺は夕ご飯を食べながら、向かいに座っている奈々さんに話しかける。


「なに?」

「最近さ、会社の後輩の女の子が、ちょくちょく話しかけてきて、腕とか触ってくるんだけど、気があるのかな?」


 奈々さんの顔がみるみる強張り、心なしか頬っぺたが膨らんでいるように見える。怖いけど、ちょっぴり可愛らしい。


「さぁ? そんなの普通にあるんじゃない?」

「そうか」

「栄治君は──その子の事が気になるの?」

「いや、普通に何でかな? って思っただけ」

「そう」


 奈々さんは返事をすると、無表情でスッと立ち上がり、台所の方へと歩いて行ってしまった。


 相手にされたのが嬉しくて、ついつい話してしまったが、気を悪くしたかな? 女性はこういう所があるから気をつけねばと思う。


 ──静かな部屋にカチャカチャと洗い物の音が響く。何だか気まずい雰囲気だ。


「食べ終わったら、食器持ってきてくれる?」

「はい」


 俺はその雰囲気に飲まれ、思わず敬語になってしまう。食べ終わると言われた通り、食器を台所へと運んだ。


「ご馳走様でした。美味しかったです」

「ありがとう。この後はどうするの?」

「お風呂に入る」

「分かった。お風呂からあがったら、居間で待ってるから来てくれる?」

「う、うん。分かった」


 待ってるって何だろ? まさか、契約の話かな? 俺は心配しながら風呂へと入った。


 ──お風呂から上がり居間に行くと、奈々さんは無表情で静かに正座をしながら俺を待っていた。ゴクリッと唾をのみこみ、ゆっくり近づく。


「どうぞ、座って」

「はい」


 奈々さんはテーブルの上にあった耳かきを手に取る。


「ゴロンして」

「はい?」


 一瞬意味が分からなくて呆けていると、奈々さんは顔を赤くしながら「ほら、ゴロンして」ともう一度言った。ようやく意味を理解した俺は「あ、うん。分かった」と返事をして、畳の上で横になる。


「違うよ、ここ!」と、奈々さんは言いながら太ももをポンポンと叩いた。

「えぇ~! い、良いの?」

「これ──オプションだから」


 俺はそれを聞いてあの日の夜の事を思い出す──つまり気にするなと? でも良いのか、今の奈々さんの姿は女子高生そのもの! むちむちの太ももに、頭を乗せても良いのか!


「ほら早く。それともキャンセルする?」

「いや、しないしない」と俺は慌てて手を振る。


「じゃあ、恥ずかしいから早くしてよ」

「は、はい」


 俺は固唾を飲みこみ、太ももにお邪魔する──女性特有の柔らかさが何とも言えず心地よい! はぁ~~~……ちょっと女性に相手にされたからって何を考えていたんだ。俺は完全に骨抜きにされてしまった。

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