クラスで一番嫌いなあいつが、クラスの人気者である幼馴染に告白しやがった。あいつに取られるぐらいなら、俺が惚れ薬を使って幼馴染と付き合いたい

 月日が流れ俺と渚は無事に結婚する。それまでこれといって問題はなく、幸せな時を過ごしていた。そんなある日、仕事から帰ると携帯に電話が掛かってくる。


「はい──あ~……林さんか。──その件ね。それは明日、俺がやるから大丈夫だよ。──うん、うん。また明日」


 俺が電話を切ると「誰から電話? 会社の人?」と、後ろから渚が声を掛けてきた。俺は携帯をズボンのポケットにしまうと「うん、そうだよ」


「最近、入社した男性社員に人気の女の子?」

「そうだけど?」

「ふーん……」


 渚は素っ気なくそう返事をすると、居間の方へと行ってしまった。何だったんだ?


 ※※※


 次の日。仕事のトラブルで遅くなった俺は、渚を起こさない様に静かに家に入った──すると、渚はまだ起きていたようで、ダイニングのドアがガラガラっと開いた。


「あら晴彦、随分と遅かったね」


 渚は不機嫌なようで、そう言った顔は強張っていた。


「あ、うん。ちょっとトラブってさ」

「そう。晴彦だけで対応していたの?」

「いや、林さんと」


 そう言った瞬間、渚の眉毛がピクッと動く。


「林さんと? 二人で?」

「うん」

「はぁ? 女性と二人で?」

「うん、上司の指示だったから」


 ──渚は鼻で大きく息を吸い込み、吐き出す。


「あなた浮気してないよね?」

「はぁ!? する訳ないじゃん!」

「じゃあ何でこんな時間まで、連絡しないのさ!」

「それは……仕事に集中したかったし、電話するぐらいなら急いで帰った方がと思っちゃって」


「本当?」と疑うように渚が言ってくるので、ついカッとなってしまった俺は「本当だよッ!」と声を荒げて答えてしまった。


 渚は納得していないのか、怖い顔のまま「分かった」と素っ気なく返事をして、部屋の奥へと行ってしまった──何なんだよ、まったく……。


 ※※※


 次の日。昨日の事もあり、今日は定時で帰ってきた。


「ただいま」とダイニングのドアを開けると──誰も居なかった。


 渚のやつ、出掛けているのか? でも玄関は開いていた。どういう事だ? 


 俺はとりあえず中に入る。すると、テーブルの上に置き手紙と茶色い瓶が置かれているのを見つけた。


 あれは……近づいて置き手紙を手に取る。そこには可愛い字でこう書かれていた。


『晴彦へ。私があげた惚れ薬の空瓶、まだ取っておいてあったんだね。部屋の掃除をしていてビックリしました。昨日は信じてあげられなくて、ごめんなさい。これをみたら、久しぶりにあの頃の気持ちに戻れて、反省することが出来ました。惚れ薬の方、補充をしておいたので、これからも仲良くしてくれるなら、飲んでくれると嬉しいです 渚より』


 俺もこの手紙を読んで昔を思い出す──そうか。そういえばあいつ、圭子の事件の時『いくら惚れ薬を飲みあった仲でも、不安は不安なんだからね』って言ってたな。


 ──渚、昨日は不安な気持ちで、ずっと俺の事を待っていてくれていたんだな……俺は綺麗に手紙を折りたたみ、ポケットにしまう。


 続いて茶色い瓶を手に取ると中身を確認した──中にはきっちり5粒入っていた。


「ふふ……可愛い奴め」


 俺は中身を瓶に戻し、渚を探しに歩き出す。きっと俺らの寝室にいるだろう──寝室につくと軽くノックをする。


「はい。どうぞ」


 渚は不安なのか、消え入りそうな声で返事をした。俺はゆっくりドアを開ける。


「お帰り」

「ただいま」


 ベッドに座っていた渚はゆっくり立ち上がり、俺の正面に立つ。


「ごめんな。今度から遅くなる時は、ちゃんと連絡するから」

「うん」

「あと──」


 俺は手のひらに全ての惚れ薬を乗せると「これの返事をするね」と言って、口に入れた。すると渚は嬉しそうな表情を浮かべ俺に近づき──押し倒しそうな勢いで抱きついてきた。


「嬉しい……」

「俺もだよ」


 ──口の中の惚れ薬が溶ける頃、渚は上目遣いで俺を見つめ、ソッと目を閉じる。俺達は永遠の|大人の愛を確かめ合うかのように甘~いディープなキスを交わした。

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