親の再婚で義理の妹と同居するようになった。天真爛漫で可愛い妹は俺に懐いてくれているけど、俺は君に手を出せない

 授業が始まり、俺は窓の外を眺めながら、さっきの事を振り返っていた。あの美人で家庭的で、性格だって悪くない亜希が、俺の事をねぇ……想像すらしてなかった。さっきの光景を思い浮かべると、授業中だというのに、ついついニヤけてしまう。


 おっと! こんな顔をクラスメイトに見られたら、ヤバい奴だと思われる──必死に顔を戻し、続きを考える。


 さて、返事を先延ばしにしたものの、そんな必要あったのか? 俺には勿体ないぐらいの女の子だし、俺には彼女は居ない。気になる人だって──気になる人だって……居ない事もない。


 でも、親には止められているし、我儘だけど大切な妹だからこそ、いまの関係を壊したくはない……よし、決めた。明日、俺は亜希に返事をする!


 ※※※


 次の日の昼休み。俺は人気のない階段の踊り場に亜希を呼び出していた。俺は弁当箱を渡すと「ご馳走様」


「いえいえ。それで、伝えたい事って、その……昨日のこと?」と、亜希は言って落ち着かない様子で、横髪をクルクルと巻き出した。


「うん……俺も亜希の事が好きです。付き合ってください」


 言ってしまった……俺は恥ずかしくて亜希から目を逸らしていると、亜希は俺の手を取り「嬉しい……よろしくお願いします」と言ってくれた。


「うん、こちらこそ宜しく」


 ※※※


 亜希と交際が始まってから数日が経つ。自分の部屋へと続く廊下を歩いていると、掃除機の音が聞こえてきたので、そちらに視線を向けた。


 珍しいな……香澄が自分で掃除している。俺は部屋の外から「掃除なんかして、友達でも来るのか?」と、香澄に声を掛けた。


 香澄は掃除機の電源を切ると「うぅん、そんなんじゃないよ」と言って、掃除機のホースを置いた。額の汗を拭うと、「ふとね、自分の事が出来ない人が、相手の世話なんて出来ないから、やらなきゃって思ったの」


 相手の世話? もしかして「──お前、彼氏でも出来たのか!?」


 香澄は直ぐに顔を振り「うぅん、そんなんじゃないよ。でもいつでも出来るようにしとかないとね」


「なんだ、そういうことか……」


 って、俺……何で焦ってんだ? それに彼氏が居ないと聞いてホッとしてるし……いや、何もおかしい事は無い。兄として妹に彼氏が出来ていたらと焦っただけだろ。そうだ、きっとそう。俺はそう思いながら、香澄の部屋から離れた。


 それから香澄は、暇さえあれば母さんのお手伝いを積極的にし、率先して家事をするようになっていった。何がキッカケでそうなったかは分からないが、何だか妹が巣立って行ってしまうようで、複雑な気持ちだった。


 ※※※


 それから三年の月日が流れる。俺は無事に高校を卒業し、大学へと進んでいた。香澄の方は調理の専門学校を卒業したらしいが、いまは何をしているかは分からなかった。


 そんなある日の事──大学近くのボロいアパートでカップラーメンをすすっていると、インターホンが鳴る。


 俺はカップラーメンの上に割りばしを置くと「はーい」と返事をしながら立ち上がり、玄関へと向かった──ドアを開けるとそこには大きなリュックを背負った香澄が立っていた。


「香澄……行き成り、どうしたんだよ?」

「久しぶりだね。お兄」

「久しぶりだけど、今日は平日だろ。仕事はどうしたんだ?」

「辞めた」

「辞めたって……」

「お邪魔しまーす」と、香澄は言って、どうぞと言っていないのに勝手に玄関の中へと入っていく。


 荷物をドンッ! と、置いて「ふー……」と声を漏らすと、「今日からお世話になります」


「はい?」

「お父さんと喧嘩してきたから、泊まるところが無いの。いいよね?」

「別に構わないけど……何をしたんだ?」


 香澄は居間にある奥の座布団に座ると「内緒!」


「内緒ねぇ……まぁ良いけど。お茶でも入れるか?」

「いや、自分でやるから良いよ! それより、これからお世話になる代わりに色々とサポートするつもりだから、遠慮なく言ってね」


 俺は自分が座っていた座布団に座ると「分かった。ありがとう」


 突然の香澄の訪問にビックリしたものの、一人寂しく暮らしていた事もあり、何だか嬉しくなる。どうせ直ぐに仲直りして帰るだろうけど、それまで賑やかになりそうで楽しみだ。俺はそう思いながら、ラーメンの続きを食べ始めた──。


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