親の再婚で義理の妹と同居するようになった。天真爛漫で可愛い妹は俺に懐いてくれているけど、俺は君に手を出せない

 どうも落ち着かない……日曜日の昼過ぎ、俺は自分のベッドで漫画を読みながら、母親の再婚相手と、その娘が来るのを待っていた。どうやら今日から、一緒に住むことになるらしい。


 父親となるただしさんとは何回か会っていて、誠実そうで安心できる人だと分かっているが、その娘さんとは俺が部活の時に同居の話が進んでいたため、まだ会っていない。


 一歳下とは聞いているけど、一体どんな女の子なのだろう……漫画をベッドに置き、天井を見据える。


 俺も男だ。可愛い子だったら良いな……とは思う。でも性格が最悪だったらと思うと、不安で仕方がない。


 そう思っていると家のチャイムが鳴る。来たのか? 俺はいつでも一階に行けるよう

 ムクりと体を起こした。


「あら、いらっしゃい」と微かに母さんの声が聞こえ、「お邪魔します」と野太い正さんの声がする。続いて、アニメのヒロインのような可愛らし声で「お邪魔します」と、聞こえてきた。


 相性が良いのか、声はすんなり入ってきて嫌な感じはしない。むしろ好きな方だ。俺はドキドキしながらスッと立ち上がり、部屋を出る。


瑠衣るい~。来たわよ」と母さんの声がして俺は廊下から「分かった。いま行く」と返事をした。


 ゆっくり階段を下りていくと、彼女の姿が見てくる。黒髪のストレートロングに、アイドルのような整った顔立ち。黒縁眼鏡を掛けていて、どことなく大人しそうな雰囲気がある女の子だ。


 彼女は俺に気付いたようで、恥ずかしそうにしながらも優しく微笑んでくれた。俺は自分が思っているより単純のようで、可愛いと思いながら笑みを零していた。


 俺が二人の前に立ち、「こんにちは」と挨拶をすると、二人も「こんにちは」と、返してくれた。


「そういえば、瑠衣君にはまだ娘を紹介してなかったな。香澄かすみ、挨拶しなさい」

「はい。初めまして名前は香澄で、17歳です。今日からお世話になりますが、よろしくお願いします」と、香澄さんは言って、ペコリと頭を下げる。


 俺も頭を下げると「瑠衣です。こちらこそ、よろしくお願いします」


「二人とも、上がって頂戴。美味しいケーキを買って来たの。みんなで食べましょ」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


 二人は御礼を言って靴を脱ぎ始める。正さんが先に上がると、母さんは案内するかのように動き出す。俺は慣れない家で、香澄さんを一人にする訳にはいかず、待っていた。


 香澄さんは家にあがると、ニコッと笑顔を浮かべ「待っててくれたんですか。ありがとうございます」


「いえ……」


 俺は当たり前の事をしただけなのに御礼を言われて照れくさくなり、返事をすると直ぐに、香澄さんに背を向け、廊下を歩き出した。


 ──少ししてパーカーの袖を香澄さんに掴まれて、歩みを止める。体を香澄さんの方へと向けると「どうかしました?」


「あ、大した話じゃないんですが、その……私、昔から一人っ子でお兄ちゃんが欲しかったんです。だから……慣れてきたらお兄ちゃんって呼んでいいですか?」


 意外……と言っては失礼だが、正直、ビックリした。大人しそうだと思っていたけど、積極的に話しかけてくれるタイプなんだな。


「うん、大丈夫ですよ。俺も一人っ子で、妹が欲しかったなって思っていた時期もあったんだ。だからそう呼んでもらえると嬉しいです」


 香澄さんの顔がパァァァ……っと明るくなり「じゃあ、遠慮なくそうさせてもらいますね!」と、胸のまでポンッと両手を合わせた。


 可愛いな……妹、最高!


「じゃあ、兄妹に敬語はおかしいですよね? 慣れてきたらタメ口でも良いですか!?」

「もちろん、今からでも良いですよ」

「やった~」と香澄さんが嬉しそうに両手を上げると「二人とも何やってるの? 早く来なさい」と声を掛けてくる。


「あぁ」

「は~い」


 俺達は返事をして、ダイニングへと向かった──。


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