親の再婚で義理の妹と同居するようになった。天真爛漫で可愛い妹は俺に懐いてくれているけど、俺は君に手を出せない


「お兄ちゃん」


 幻聴か? だけど俺はそう呼ばれた気がして目を覚ます。


「おはよう、お兄ちゃん。朝ごはん出来たってよ」


 幻聴ではなかった……目を開けると目の前には薄いピンク色のパジャマを着た香澄さんが、ニコニコと笑顔を浮かべて立っていた。


 俺は恥ずかしくなり、腕で目を隠しながら「あぁ、分かった。ありがとう」と返事をする。


 香澄さんはクスッと笑うと「じゃあ、先に行ってるね」


 スリッパが擦れる音が遠ざかっているので、部屋を出て行ったのが分かる。お兄ちゃんねぇ……いくら昨日、沢山話したとはいえ順応力が高すぎないか? 嬉しいけど、ビックリしてしまった。


 俺はムクっとベッドから起き上がる。──まぁ、ギクシャクしてる関係より、ずっと良いか、と思いながら歩き出す。


「おっと……」


 下に行く前に壁に掛けてある鏡をみつめ、何かおかしい所が無いかチェックする。


「──大丈夫そうだな」


 俺は手グシで髪を整えながら、一階へと向かった──。


 ※※※


 朝ごはんを食べ終え、自分の部屋でブレザーの制服に着替えていると、コンコンとノックが聞こえてくる。


「はーい」

「お兄ちゃん、準備できた? せっかくだから一緒に行きません?」

「あぁ、分かった。着替え終わったら下に行く」

「分かりました。玄関で待ってますね」


 美女と登校ね……彼女いない歴=年齢の俺にとっちゃ勿体ないシチュエーションだな。母さんが行き成り再婚するなんて言い出したときゃ正直、嫌だなとは思ったけど、母さん……グッジョブ!


 俺は着替え終えると、玄関へと向かう──廊下を歩いていると可愛らしいセーラー服姿の香澄さんが目に入る。うちは男女ともにブレザーだから新鮮で眩しいぜ!


「お待たせ。行こうか?」

「うん」


 香澄さんは返事をすると、外に出る。俺も直ぐにスニーカーに履き替え、外に出た。


 ──肩を並べて歩いていると、「やっぱり制服に着替えるとガラッと雰囲気が変わっていいですね。お兄ちゃん、似合ってるよ」と、香澄さんは言って、照れ臭そうに自分の髪を撫でた。


 同じ家に暮らしているのだから、当たり前の事なんだが、微かに俺と同じシャンプーの香りが漂ってきて、何だかドキドキしてしまう。


「あ、ありがとう。えっと……香澄さんの制服も──似合ってるよ」


 女性に対して褒め慣れていない俺はぎこちなく、そう返す。香澄さんは俯き加減で「ありがとうございます」


 何だこの初々しいカップルのような雰囲気は……とっても恥ずかしいぞ。俺達はそんなやりとりをしながら会話を続け、電車に乗った─。


 ※※※


「それじゃ私はここだから」と、香澄さんは手を振りながら電車を降りていく。俺は手を振るのはさすがに恥ずかしかったので、手をあげると「じゃあ、また」


 電車が出発して外を眺めていると「瑠衣、いまの誰?」と、後ろから女子の声がした。後ろを振り返ると、切れ長の目で俺を見ている幼馴染の亜希アキが立っていた。


 鋭い目をしているからか、どことなく怒っているようにも見えるけど、気にせず「おはよう」と声を掛ける。


「おはよ」

「さっきのは、ほら。妹だよ」


 俺がそう答えると、亜希は茶髪のポニーテールの横髪をクルクルと人差し指で巻き取るように触りながら、「ふーん……可愛いじゃない」


「でしょ?」

「──だからといって、あまりデレデレした顔を見せない方が良いわよ? 嫌われるよ」


 俺、そんな顔をしていたのか? だから亜希は一瞬、不快そうな顔を浮かべたのか……気を付けないと。


「分かった。ありがとう」

「うん」

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