もちろん嫌な事はあったけど、可愛い女性とイチャイチャしたり、ちょっぴりエッチな生活を送って、ハッピーエンドを迎えられたので、幸せ一杯です! (短編集)
可愛い幼馴染はいつの間にか俺に素っ気ない態度をするようになっていた。それでも俺は君から目が離せない
可愛い幼馴染はいつの間にか俺に素っ気ない態度をするようになっていた。それでも俺は君から目が離せない
次の日の昼休み。同じ選挙管理委員会の先輩が教室を訪れる。
「もうすぐ選挙だから、これをクラスの皆に配っておいて」と先輩が言って、A4の用紙を渡してくる。俺は受け取り「はい」と返事をして、自分の席へと向かって歩き出した。
「
「なに?」
「委員会の仕事?」
「うん。でもプリントを配るだけだから」
佳奈恵は手を差し出し「貸して」
「え、良いよ」と俺は言って、プリントを上に持ち上げる。すると佳奈恵は俺に近づき、体を密着させて「半分でも良いから貸して。手伝うよ」と手を伸ばす。
いや、ちょっと待て……どこがとは言わないが当たってるし。興奮してしまいそうな気持を必死に抑え、俺はプリントを下ろして「分かったよ」と半分、佳奈恵に渡した。
「素直に渡せば良いのよ。まったく……」
佳奈恵はそう言って、そそくさと行ってしまった。俺はまだ残っている佳奈恵の肌の温もりを感じながら、ドキドキと胸を高鳴らしていた。
※※※
放課後になり部活に行こうと廊下を歩いていると、音楽室でモップを持ちながら誰かとしゃべっている佳奈恵が目に入る。
声からして相手は男か? 佳奈恵は困ったように眉を顰めているので何だか気になってしまって足を止めた。微かだが話し声が聞こえてくる。
「えっと……俺、佳奈恵さんと同じ委員会になってから、ずっと好きだったんだ。俺と付き合ってくれないか?」
マジか! どうやら俺は聞いてはいけない場面に出くわしてしまったようだ。は、早く隠れなくちゃ……そう思うものの続きが気になってしまい、動けない。
佳奈恵が俯き「えっと……」と言い掛けた時、「ちょっと待って」と話し相手の声がする。まずい! と思って動こうとした時は、もう遅かった。
同学年の男子は俺に向かって歩き出していて、眉を吊り上げながら「お前、そこで何やってんだよッ!」と、怒鳴った。
「ごめん……たまたま通り掛かったら見ちゃって」
「だからって盗み聞きなんてすんなよッ!」
「ごめん」
男子は佳奈恵の方を向くと「邪魔が入ったから、返事はまたで良いかな?」
「うん」
男子は佳奈恵の返事を聞くと、俺を睨みつけ去って行った。俺と佳奈恵は取り残され、沈黙が続く──俺は目を合わす事さえ出来ず、「ごめん!」とだけ伝えて、返事を待たずに走り去った。
※※※
数日後の美術室。真弓は通学鞄を肩に掛けると「先輩、今日はバイトなので私、帰りますね」
「あぁ、お疲れ様」
「お疲れ様です」
真弓は小刻みに手を振り、笑顔で帰っていった。俺と佳奈恵は静かな教室で二人っきりになってしまう。あれから俺達はまともに会話を交わしていなかった。
とても気まずくて、もう帰ろうかと椅子から立った時、佳奈恵は「亮介」と、俺を呼び止める。
「ん?」
「もう帰るの?」
「うん、そのつもり……」
そう返事をすると、佳奈恵は椅子から立ち上がり俺に近づく。前掛けのポケットから三角巾を取り出すと、俺に背を向けた。
「じゃあ帰る前に手伝って」
「何をすれば良いの?」
「三角巾をしたいから、髪を持っていて」
「え?」
「なに? 嫌なの?」と、佳奈恵はドスの効いた声で俺を威嚇する。
「い、いや……良いのかな? って思っただけだよ」
「良いからお願いしているんでしょ?」
「そうなんだけどね……」
女の子……特に好きな女の子の髪を触るなんて、俺にとっては特別な事だし、そういう気持ちになってしまうのは、仕方ない事だとは思うけど、女性はそういうのは気にしないのだろうか?
俺はそう思いながら「で、どうすれば良い?」
「後ろ髪を束ねて、私が縛り終わるまで待っててくれる」
「分かった」
言われた通り、ゴクッと固唾を飲むと佳奈恵の後ろ髪を束ねる。猫の毛のように柔らかくサラサラで気持ちが良い。フワァっと良い香りが漂ってきて、心臓の音が聞こえてきそうなぐらいドキドキしているのを感じる。
「あのさ……」
「なに?」
「私……告白のこと断ったから」
「え?」
佳奈恵は三角巾をキュッと縛ると「もう良いよ」
「あ、うん」と俺は返事をして、佳奈恵の髪を離した。
「もう帰るんだよね? お疲れ様」
「あ、うん。お疲れ様」
佳奈恵はそれ以上、何も話をしたくないのか、それとも彫刻に集中したいのか分からないが、黙ったまま作業を再開した。
俺は通学鞄を背負い、「じゃあね」と声を掛け、美術室を後にした──廊下を歩きながら、なぜ佳奈恵が断ったことを伝えてくれたのか、考えてみる。
──俺が心配していると思ったのかな? それとも佳奈恵も俺の事が好きだとか……って、それは無いか! 何にしても、伝えてくれたことが俺を特別に想ってくれているようで、嬉しかった。
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