もちろん嫌な事はあったけど、可愛い女性とイチャイチャしたり、ちょっぴりエッチな生活を送って、ハッピーエンドを迎えられたので、幸せ一杯です! (短編集)
幼い頃、俺を馬鹿にしてきた従姉妹が、垢抜けた俺をみて、どちらを選ぶか決めておけと言ってきた。可愛いからって両方、選ぶわけないだろ!
幼い頃、俺を馬鹿にしてきた従姉妹が、垢抜けた俺をみて、どちらを選ぶか決めておけと言ってきた。可愛いからって両方、選ぶわけないだろ!
俺はバイトが終わり、通学鞄を手に取る。すると休憩室のドアがガチャっと開き、チャラい恰好をした二人組の男たちが、大声で話しながら入ってきた。
「今度の夏祭り、行くだろ?」
「行く行く。もちろん可愛い子、ナンパするだろ?」
「するする。で、お持ち帰りするっしょ?」
「するに決まってるだろ。ギャハハハハ」
相変わらず品が無いから、この人たちの事が苦手だ。俺は「お疲れ様でした」と声だけ掛け、そそくさと休憩室から出た。
──家に帰り玄関で靴を脱いでいると、母親から衝撃的な事を告げられる。
「は!? 何で従姉妹が来るんだよ!?」
「一郎さんの仕事の都合らしいわよ」
「まじかよ……俺、居なくて良いよな?」
「ダメよ。一郎さんに挨拶ぐらいはしなさい。そうしないとお父さんに怒られるわよ!」
「そうだよな……」
「挨拶した後は好きにして良いから、お願いね」
「分かったよ」
俺は納得いかなかったが、そう返事をすると、思いっきり通学鞄を放り投げたいぐらいのイライラを必死に抑えながら、自分の部屋に向かって歩き出した。
※※※
当日──俺は約束通り、玄関で伯父さんに「こんにちは」と挨拶をする。従姉妹たちは何だかニヤニヤと気持ち悪い笑顔をしてこちらを見ていた。
「こんにちは」と伯父さんの挨拶を聞くと、そそくさと自分の部屋に戻ろうと動き出す。すると母さんが「ケーキを用意したの。みんなで食べましょ」と言い出した。
俺が聞かなかったふりをして歩き続けると、「おい、どこに行く
俺は足を止め「自分の部屋……」と答えた。父さんは眉間にしわを寄せ「いまケーキを一緒に食べると言ってるだろ」と、不機嫌そうにそう言った。
ネチネチとうるさい父さんを怒らすと後々、面倒だ。仕方なく俺は「はい……」と返事をして部屋に戻るのを諦めた。
皆でダイニングへと移動し、席に着くとケーキを食べ始める──さっさと食べて、今度こそ部屋に戻るぞと思いながら、フォークを手に取った。
「大輔、カッコよくなったねぇ」
「ほんと、ほんと。随分とカッコ良くなった」
「──どうも」
お世辞なんだか、どうだか分からないが、こいつ
「彼女とか居るの?」
「いない」
「好きな人は?」
「──いない」
本当は石川さんの事が好きだ。でも親の前で、いるなんて答える事、出来る訳がない。
「へぇー、いないんだ。だったら明日の花火大会、私といかない?」と、従姉の方が話しかけてくる。
「えー、そんなのずるい! だったら私と行こうよ」
「何言ってるのあんた! 勝手に決めないでよ!」
「そっちこそ!」
こいつらは何を勝手に盛り上がっているんだ……俺はケーキを食べ終え、冷ややかな目で従姉妹たちを見つめながら、立ち上がる。
「ねぇ、どっちにするの!? 明日、19時30分に公園で待ってるから考えておいてよ!」と従姉の方が勝手に言ってくる。
そんなの知ったことじゃない! 俺は黙って空になった御皿を持って、台所へと向かった──。
※※※
花火大会、当日。俺はあいつ
慌てて引き返そうと、後ろを振り返ると「あ~! 大輔。こっち、こっち」と言われてしまう。無視して歩こうとした時、後ろから駆けてくる音が聞こえ、観念する。
「なに、大輔。随分と早いじゃない。そんなに楽しみだった?」と従姉の方が、いじってきてイライラする。
「いや……」
「また~、照れちゃって」と今度は従妹の方が、ニヤニヤしながら、いじってきた。
「それで、どっちにするか決めたの?」
このまま、こんなやり取りを続けたくない。どうせなら今までの恨みも込めて言ってやる!
「──小さい頃から馬鹿にしてきたくせに……垢抜けたからってコロッと手のひらを返しやがって! お前らみたいな性悪女、選ぶ訳ないだろうがッ!!」
従姉妹は、まさか自分たちと同じようなセリフを言われると思っていなかったのか、俺の言葉を聞いて、呆然と立ち尽くしている。
──従妹が怖い顔で俺を睨みつけ「何それ、調子に乗っちゃって……もう、良い! どんなにカッコ良くなろうが、あなたみたいな男と絶対に付き合わないから!!」と、言い放ち、後ろを向いた時、バイト先に居たチャラ男達が従姉妹に近づく。
「──お、可愛い子みっけ!」
「おぉ、本当だ」
チャラ男たちは従姉妹の前に立ち止まり、「ねぇねぇ、俺達と遊ばない?」と声を掛ける。従妹はまだ腹を立てているのか「遊ぶ訳ないでしょ!」とキッパリ断った。
チャラ男たちはそれを聞いて腹を立てたようで眉毛をピクッと動かし、「何だよ、その態度はよぉ! 良いから来いやッ!」と、低い声で従姉妹たちを威圧した。
従妹は困った表情でこちらに顔を向け「大輔……」と、か細い声で助けを求めてくる。
「なんだぁ? 男が居るのかよ」
普段の俺なら助けに入っている。だけど「──あぁ、気にしないでください。俺は今、あなたみたいな男と絶対に付き合わないと言われたばかりなので」
「おぉ、そうか」と、チャラ男はニヤニヤしながら返事をし、従妹の肩に手を回すと、「行こうぜ」と言って、歩き始める。従姉妹たちは、観念したようで渋々と歩き始めた。
俺は黙って反対方向へと向かって歩き始める──すると正面から「青木君、お待たせ~」と、ネイビーのワンピースを着た石川さんが、嬉しそうに手を振って近づいてきた。
俺は立ち止まり「あ……いま来たばかりなので大丈夫ですよ」と返事をする。石川さんは俺の正面に立つと、なぜかジッと俺の顔を見つめた。
「──どうかしました?」
「ここに来る前に何かあったの?」
「え!?」
「なんかいつもより暗い感じがして」
「あぁ……何でもないですよ」
「そう」
──石川さんはこれ以上、何も言いたくないことを察してくれたようで、ニコッと微笑むと、「じゃあ、行こうか?」と、優しく俺の手を握ってくれた。
「はい!」
俺達は肩を並べて歩き出し、屋台を見て回る──焼きソバやタコ焼きを買うと、土手に移動し、座った。
「まだ時間がありそうですね」
「そうね。じゃあ先に、夕飯にしょうか?」
「はい──石川さん、パック持ってるんで、さきに食べてください」
「ありがとう」
石川さんは御礼を言って、焼きそばのパックを開ける。
「──ねぇ」
「はい?」
「私の事は
「分かりました。じゃあ……真理さんで」
「うん」
──まさか、こんなに大人っぽくて美人な女性とこうして花火を見ることになるなんて、まるで夢のようで始まっていないのに、ドキドキしている。
「そういえば、青木君は○○って恋愛小説読んだ?」
「あ、俺も大輔で良いですよ」
「ふふ、そうね。大輔君は、話題の恋愛小説を読んだ?」
「はい、読みましたよ。真理さんは?」
「私も──」
俺達は夕飯を食べながら、恋愛小説について語り合う──本当に真理さんとは相性が良くて、時間が経つのが早い気がした。
真理さんが突然、立ち上がり「まだ時間があるから、ごみを捨ててくるね」
「あ、はい。ありがとうございます」
俺がそう返事をして、パックを渡すと、真理さんは受け取り、ごみ捨て場へと向かって歩いて行った──。
一人残された俺は、夜空を見上げる──この花火大会が終わったら俺達、どうなるのかな? 進展してもっともっと、違う場所に行けるようになるのかな? それとも──。
「お待たせ~」と、真理さんが言って、横に座る。俺はこのまま終わってしまう可能性も考えてしまい、何だか不安になって、真理さんの顔をジッと見つめていた。
「どうしたの?」
「あ、ごめんなさい。何でもないです」
「そう? ──あ、微かにアナウンスが聞こえて来たよ。そろそろ始まるんじゃない?」
「そうですね」
「楽しみだね~」
「はい」
──数分して、花火が始まる。色様々な光の大輪が、夜空を彩り、爆音と共に散っていった。
「綺麗だね……」
「本当ですね……まるで小説の一節の様です」
聞こえているかは分からないけど、俺は真理さんと一緒に夜空を見上げているのを含め、そう言葉を漏らしていた。
──30分ほど経過して、花火が終わる。真理さんは夜空を見上げながら「終わっちゃったね……」と名残惜しそうに言った。
「そうですね……」
真理さんは俺の方に顔を向けると「帰ろうか! 明日、学校でしょ?」
「はい」
俺達は肩を並べて歩き出す。本当にこのまま終わって良いのかな? そんなことを思いながら歩いていたから、真理さんと人一人分ぐらいの距離が空いていた。
恋愛なんてほとんど縁が無かった俺にとって、本当に今が幸せだ……だからこそ、このまま終わらせたくない。もっともっと真理さんと繋がっていたい。
俺はそう思いながら慌てて駆け寄り──真理さんのスラッとした綺麗な手をギュッと握りしめた。
「え?」と、真理さんはビックリした様子で立ち止まる。俺はゴクッと唾を飲みこむと「ごめんなさい! この日の最後に伝えたいことがあります!」
真理さんはニッコリと優しく微笑むと「え、なに?」
「えっと……その……」
汗で湿っていく手を必死でズボンで拭い「俺……こんな俺を受け入れてくれている真理さんのことが好きです! だからこのまま終わらせたくないです! だからその……俺と付き合ってくれませんか?」
言ってしまった……俺は真理さんの顔を見ることが出来ず、視線を下に向ける。
「いいよ。もっと私の知らない大輔君を、私に見せてよ」
俺はバッと顔を上げ、真理さんを黙って見つめる……何だか思っていたより、返答が軽くて、フワフワと浮いているような気分だけど、もっと俺の事を知りたいという気持ちが、とにかく嬉しかった。
「ありがとうございます!」
性格の悪い従姉妹たちのせいで、俺はダメな男だと思っていたけど、そんな俺でも知りたいと思ってくれる女性は居るんだ。
無理して自分を偽らなくて、本当に良かった……俺は真理さんの手を握り、幸せを噛み締めながら家へと帰った。
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