もちろん嫌な事はあったけど、可愛い女性とイチャイチャしたり、ちょっぴりエッチな生活を送って、ハッピーエンドを迎えられたので、幸せ一杯です! (短編集)
幼い頃、俺を馬鹿にしてきた従姉妹が、垢抜けた俺をみて、どちらを選ぶか決めておけと言ってきた。可愛いからって両方、選ぶわけないだろ!
幼い頃、俺を馬鹿にしてきた従姉妹が、垢抜けた俺をみて、どちらを選ぶか決めておけと言ってきた。可愛いからって両方、選ぶわけないだろ!
「モップ、持っていくよ……」
俺は掃除用具入れからモップを取り出し、近くに居た同じバイトの女の子に聞こえているか分からないぐらいに小さな声でそう言って、そそくさと立ち去る。
俺は女子が苦手だ。小さい頃、お人形のように可愛い二人の従姉妹に、「あなたみたいな男子とは絶対に付き合わない!」
なんて言われ続けてきたからだ。正直、俺はそれが原因で男として自信が持てず、従姉妹たちが引っ越した後も、それを引き摺っている……。
でもそんなのをいつまでも引き摺っているのは嫌で、高校デビューをした訳だけど、女子にちょっぴり話しかけられる程度で、大きくは変わらなかった。
きっともっと積極的になったり、陽キャラの真似をすれば変わるのだろうけど、自分を偽ってまで変わりたくない! なんて思い、彼女居ない歴=
──休憩時間に入り、俺はいつものように鞄から文庫本を取り出す。携帯でも小説は読めるけど、やっぱり手で持って読む方が集中できるし、落ち着く。
──数分して、誰かが休憩室に入ってくる。この時間帯の休憩は、きっと先輩だろと、気にせず読み続けていると、「青木、なにを読んでるの?」と、女性が後ろから声を掛けてきた。
ビックリした俺は、直ぐに文庫本を閉じ、後ろを振り返る。
「あ。いきなり、ごめん。ビックリするよね」と、石川さんは円らな瞳を細め、苦笑いを浮かべながら、ウェーブの入った茶髪のセミロングの横髪を耳に掛けた。
「あ、いえ……」
俺はそう返事しながら、文庫本をリュックの中にしまう。何でこの時間帯に石川さんが居るんだ? 女性と二人っきりなんて、緊張して嫌だな……。
「私は気にしない方なんだけど、人によっては何を読んでるのか聞かれるの嫌だよね? 私も小説を読むの好きな人だから、ついつい何を読んでるか気になっちゃって」
意外……二歳しか離れていないのに、大人っぽくて垢抜けていて、性格はとても明るい人だから、俺はてっきりアウトドア派かと思っていた。
そのギャップから何を読んでいるか知りたくなり「えっと……石川さんの好きなジャンルは何ですか?」と聞いていた。
「ん? 恋愛!」と、飾る気配もなくそう言って、ニコッと笑う石川さんが薄暗い部屋なのに何だか眩しく感じる。
「青木君は、ファンタジーかな?」
「え、あ……」
何だか見入ってしまっていた俺は返事が遅れ慌てて「ファンタジーも好きだけど、恋愛も読みます」と素直に答えていた。
しまった? 引かれるかな? 馬鹿にされるのが嫌で俺は石川さんから目を逸らしたが、石川さんは「じゃあ今度、おススメ教えてよ!」と受け入れてくれた。
「今から先輩と交代なの。これからしばらくこの時間帯は先輩の代わりに入ると思うからよろしくね」
石川さんはそう言って、手を振りながら休憩室を出て行った。なるほど、そういう事か──これから先、石川さんと仕事ねぇ……不安な気持ちもあるけど、ちょっぴり楽しみな気がした。
※※※
それから数ヶ月が経つ。石川さんとは世間話を交わせるようにまでなり、偏見することなく、ありのままの俺を受け入れてくれる。そんな彼女に惹かれていくのはそう遠くはなかった。
「青木君、もうすぐ夏休み終わりよね?」
石川さんは窓の掃除をしながらそう言った。俺はモップで床を掃除ながら「はい」と返事した。
「じゃあ、最終日。一緒に出掛けない?」
「え……」
いきなりの石川さんの誘いにビックリして、手が止まると同時に思考も止まる。
「なにか予定あるの?」
「あ、いや……その……恥ずかしい事に今まで女の人に誘われたことが無くて、ビックリしちゃっただけです」
「そうだったの。それはビックリするわね」
「はい。あ、最終日ですけど、空いてます!」
「良かった。じゃあ──」
石川さんはそう言って、待ち合わせ場所と時刻を指定する。
「分かりました。それでは楽しみにしています」
「うん!」
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