いつもあなたに出来る訳ないでしょと煽って来る幼馴染に、俺は出来る奴だと分からせるため、好きな人に告白する

 カラッと晴れた夏の朝。俺と芽依めいは、汗を垂らしながら、いつものように肩を並べて、通学路を歩いていた。


「あちぃ……」と、俺は言って、額の汗を腕で拭う。


「ちょっと言わないでよ。我慢しているんだから」


 芽依はそう言って、グレーのスカートから白いハンカチを取り出すと、額の汗を拭った。


「俺達、もう高校二年か……来年になったら進路とかで忙しいんだろうな」

「何を行き成り」

「いやさ、部活の先輩が引退の話をしていたから、そんな風に思って」


「あぁ、そういうこと」と、芽依は言って、暑くなったのか茶色のミディアムウェーブの髪を耳に掛け、「そうなるかもね」


「俺、そうなる前にやろうと思っている事が一つあるんだ」

「また何を言い出すの」

「いつも変な事を言い出すみたいな言い方、やめて貰って良いかな?」

「失敬。それで、今度は何をしたいの?」と、芽依は言って、こちらに顔を向けてくる。


「彼女を作る!」

「はい?」

「だから、彼女を作る」


 芽依は顔を正面に向けると「――みなとが? 無理、無理。あなたに出来る訳ないでしょ」と、手を振った。


 こいつはいつもそうだ。アイドルグループに居ても、おかしくない様な可愛い顔をしているのに、サラッとキツイ事を言う。


「上等だ! じゃあ好きな人に告白して、俺は出来る奴だと分からせてやるよ」

「え?」と、芽依は俺に好きな人がいる事が意外だったのか目を丸くして驚く。


「なに驚いてるんだ? 好きな奴ぐらい居るだろ」

「――そうだよね。いや、今まで聞いたことなかったから驚いちゃった」

「あぁ、そういや話したこと無かったもんな」

「うん」


 芽依は返事をすると黙ってしまう――数分そのまま歩いていると、「あ、カオリが居る」と、走って行ってしまった。


 俺がそんな話をしたから、気まずくなったのかな? 仕方ない、一人で行くか。


 ※※※


 それから数日が経つ。あれから芽依に避けられているのか、話しかけられなくなってしまった。


 だけど後戻りをする気はない。


 さて、今日は部活も無いし、サッサと帰るか! そう思い椅子から立つと、芽依が俺の方へと近づいてくる。


「湊。今日、部活ないんでしょ? 一緒に帰ろう」

「おう、いいぜ」


 いつものように笑顔で芽依が話しかけてくれたので、内心ホッとする。


 ――俺達は肩を並べて歩き出し、教室を出る。


「ねぇ、湊。告白の事だけどさ、そのままでするつもり?」

「そのままって?」

「イメチェンとかしないのかなって」

「あぁ……したいとは思って、ネットで調べたりはしてるけど、何が良いかサッパリだ」


 芽依はそれを聞いてクスッと笑う。


「湊らしいね。もし良かったら手伝ってあげるよ」

「まじで! 助かる。でもどういう風の吹き回しだ?」

「別に……」

「あ、分かった! パフェでも食べたいんだろ? 奢ってやるよ」

「――パフェはもちろん食べたいけど、幼馴染としてサポートしたいな~って思っただけ」

「そっか……サンキューな」

「うん。いつが良い?」

「今週の日曜日が良いかな? 大丈夫?」

「大丈夫。湊の家に行けば良いでしょ?」

「うん。まずは床屋に行きたいから9時ぐらいに集合で」

「オーケー」

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