第5話の2

 一助の両親を殺害した事件の加害者、遠辺野憲重の勤務先、スピード輸送(株)に出向いた。

「こんにちわ、遠辺野さんいますかあ?」

一助がいないうちに、一助の両親を殺害し刑期を終えた加害者に話を訊きたいと思ったのだ。

「ちょっと待って、もう、車着くから」

トラック運転手をしている彼の上司か?電話では宵倭忠信(よいわい・ただのぶ)と言ってたが、愛想も何もない。勝手に椅子に座って待つ。お茶も出ない。会社といっても机が1つに長テーブルが2つずつ2列に置いてあるだけの事務所、隣にもう一部屋ありそうだが、それは社長とかかな?と考えていると、4トントラックが着いた。

中年一歩手前くらいの、茶髪の男が入ってきた。

「遠辺野さん?」訊いてみると、頷いて

「岡引?とかって探偵か?」

仕事は終わりだというので、近くのファミレスに向かった。

コーヒーを頼んで

「言いずらいかもしれないけど、20年前の、兄さんの川の事件のことで、兄さんとかから直接聞いていたことを教えてほしい」

「それなら、20年前に警察に全部話したけど、細かい話は記録されてる通りだ。兄貴は自分を責めて自殺も仕掛けて、だけど、彼女を助け損った桂林何とかって、名前忘れたけど、そいつの事、随分恨んでいた。手を掴んだのに離したって、それを毎日のようにずっと言うから、可哀想になって、俺も、兄貴をこんなに苦しめたそいつを恨む気持ちになって、事故から6年後に夫婦二人ともやっちまったのさ。知ってんだろう、13年務所暮らししてたの」

「あ〜知ってる。で、殺した後、どうして写真撮ったんだ?」

「ひとつは、兄貴にやった事を見せるため。もう一つは、趣味かな?今思えば何であんな馬鹿なことしたのか、そうだろう、写真から足ついたんだから」

「それで、償えたんだから、良かったんじゃないか」

「ものは考えようさ、気にしない奴は、捕まらないのが一番さ。俺はそれ」

「写真はどうやって撮ったんだ?」

「それは警察に言ったとおりさ、クレーンで水槽に投げ込んで、その瞬間を撮った」

「遺体を、水中にクレーンでなんて人間じゃないな」

「だから償いしたろうが」

声が大きくなり周りが注目している。

ふと、知らない男が2人、自分らのテーブル傍に立っているのに気がつく。

見上げると、俺を睨みつけている。

「何か、ご用ですか?」と尋ねる。

「いや、俺のだち、もう良いだろう、これから用事有るんだ。ここはあんたの奢りだな。ごち」

「最後に、金谷登美子って知ってる?」

「誰だ、そいつ、知らん」

俺の反応も待たずに、何やらぶつくさ言いながら店を出て行った。

何となく犯罪の匂いのする輩だ。


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