死神



MP 95/95


魔法


魔法の弾丸 使用MP1

魔法の連弾 使用MP2~20

ヒール 使用MP2

フレイムアロー 使用MP3

ウォーターエッジ 使用MP3

ストーンランス 使用MP3

ウィンドカッター 使用MP3

エクストラヒール 使用MP5

リカバー 使用MP5

オールヒール 使用MP10

リジェネレート 使用MP7

オーダー 使用MP15

ラストヒール 使用MP20

焦土炎熱(マーズディザスター) 使用MP32

氷結地獄(コキュートス) 使用MP32

大地讃頌(ジ・アース) 使用MP32

花鳥風月(シムルグ) 使用MP32




 極白天使を倒したことで、アッシュは大量の回復魔法を覚えることができている。


 それぞれの魔法を見ていこう。


 ラストヒールというのは全回復魔法、つまり人のHPを完全に回復させる魔法だ。


 その分使うMPも多いため序盤ではあまり意味のない魔法だったりする。


 それほどレベルが高くなければ、ヒールを二、三回かければ体力は回復するし、レベルが上がってきたならヒールの上位互換であるエクストラヒールを使えばいいだけだからだ。


 ただ時間の短縮にはなるし、終盤になれば魔力の節約にもなってくる。


 オールヒールはパーティーメンバー全員にヒールをかける魔法で、リジェネレートは持続的な回復をしてくれる魔法だ。


 前者は複数人が怪我をしてるときに使いやすく、後者は長期戦に持ち込まれた時に重宝する。


 リカバーは麻痺や毒といった状態異常を治す魔法で、オーダーは石化や狂乱といったより高次な状態異常を回復させる魔法だ。


 回復魔法で治るのは傷のみであり、各種状態異常を治すためにはこの二つの魔法を掛ける必要がある。


 これだけ回復魔法が使えれば、正直治癒師としては食いっぱぐれることはないだろう。


 今のアッシュには、王国で最も名高い回復術士である聖女アーリャに並ぶだけの回復魔法と魔力量があるからだ。


 だが無論、アッシュが覚えたのは回復魔法だけではない。


 漢字で表されるようになっている攻撃魔法、終盤でしか手に入らない極大魔法を四つとも手に入れることができた。


 全体魔法であり、広範囲へダメージを与えられる強力な魔法群だが……正直、これらも現状ではほとんど使い道はない。


 今のアッシュがよくこもる始まりの洞窟ではオーバーキルが過ぎるし、回復魔法の余力のことも考えると二発使うのが限度だからだ。


 それに対人で使うには威力が高すぎるという欠点もある。


 一応ヴェッヒャー戦を見越して色々と試してみたりもしているが、やはり結果として彼がメインで使うのは魔法の弾丸、および連弾だった。


 ちなみに使い続けたおかげか、今では二十まで同時に放てるようになった。


 更にこの二年の苦心の成果として、曲射を行うことで擬似的に遅延(ディレイ)のような状態を作ることができるようになった。


 同時に出した複数発の弾丸の狙いを別々に設定し弾を飛ばすまでにかかった時間は、思い出すのも馬鹿らしいほどに長い。


 そして魔法の訓練だけではすることがなくなってきたので、彼は最低限の身体作りをしてから剣の練習量を増やすことにした。


 現状でできることが、身体を鍛えることしかなくなったと言ってしまってもいい。


 m9ではアッシュは剣と魔法を両方使う魔法剣士だったので、できないことはないはずだった。


 ただ独学では限界があったので、先のことまで見据えた上で彼は今とある人物へオファーをかけている。


 無論原作知識を使っての勧誘であることは言うまでもない。



 アッシュが目を付けたのは――『死神』ナターシャという、後に王国最強の騎士となる女性だ。


 固有スキル『剣神の寵愛』を持っており、彼女とまともに戦える人間は現状ですらほとんど存在していない。


 未だ騎士爵の身分だが、王都防衛戦の時にはその爵位を子爵にまで上げ、父を継ぎ『剣聖』の二つ名を名乗るようになる。


 それほど忙しくない今なら時間に余裕があるだろうから、剣術指南役として雇うこともそれほど難しくはないだろう。


 今は彼女の返事を待ちながら素振りをしたり剣を持ってシャドーをしたりして、とりあえずMPを使い切るまで魔法を連打する毎日を送っていた。


 こんな風に明らかに実力は増し、多彩さを増してきているアッシュであったが、実は彼は自分が今どれくらい強さなのかが全くわかっていない。


 彼の相手はいつだってゴブリンとスライムで、対人経験は驚くことに未だにほぼゼロなのだ。


 一応シルフィは「やろっか?」と言ってくれてはいたが、彼女と戦うとなればまず間違いなく魔法戦になってしまう。


 未だ知力に開きがある現状では同じ魔法を使っても絶対に勝てないし、氷結地獄を始めとするあれらの魔法を使えばもしものことがあるかもしれない。


 今のアッシュは下手に威力の高すぎる魔法を覚えてしまったために、考えなしに人と戦うことができなくなってしまっていた。


 強くなろうと思って魔法を覚えたら、肝心の強くなるための練習ができないとは大誤算である。


 そのため彼がナターシャへかける期待は大きかった。

 自分と隔絶した実力差がある相手なら、どれだけ全力を出したところで問題はないからだ。


 手紙を送ってからしばらくして、彼女から返答が来た。


『一度話がしたいから、うちに来て』


 その内容にガッツポーズをしながら、アッシュは両親に事情を説明し家を飛び出す。


 アッシュ七歳の夏。


 彼は魔法と剣技を共に使う魔法剣士としての一歩目を、ようやく踏み出せそうだった。

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