第61話✤そろそろ旅に……2
クレイ殿下はティティア国のアークレイン第一王女様に一言伝えておくと言って王城へ戻っていった。
帰り際にこれでもかと作成した保存食を持って帰ったので、またタジェントさんにユーリシスさんらと冒険者を再開するのだろう。
まだまだ冒険者家業は続けるらしい。
その内ティティア国には裏道から尋ねてくれるとも。
それでいいのか国内限定冒険者。
お互い婚姻関係であるお隣のノイエファルカス国なら王族同士の許可が下りればノイエファルカス国でも冒険者として活動は可能らしいが……。
職権乱用では……。
「でもメルトが学校に行きたいって口のしたの、初めてじゃない?」
「そんなに学校へ行きたかったのか……。気づいてやれなくてごめんな、メルト」
メルトの学校へ行きたいという言葉を聞いて、僕らはしきりに反省した。
いかに学業が進んだ現代日本で9年前までバリバリの小学生だった聖と齢80年(前世含めると数百年)の元学生ではだめだったか……?
「父と母をみていると、世間様との差が少しではないくらい常識が離れていると感じた。それに関しては邪龍ちゃんもおおむね同意していたし、この世界をどうこうするにはメルトも邪龍ちゃんも知識不足も甚だしかった。だから、一般……できれば王立系の学校へ行きたかった」
……はい、8歳の娘に父と母は常識不足と言われました。ごめんなさい。
そうかー。そら邪龍ちゃんも心配するよなぁ。って……邪龍ちゃん?
「邪龍ちゃん?」
「メルト……邪龍ちゃんって……いった?」
あれ?いつの間にOHANASHI出来た……の……?
「少し前から父と母に対してのツッコミが激しくなった。だから一緒にこの世界を学ぼう、という結論に……」
「ツッコミ……」
「父、なんでも(勇者)力で解決する。母、なんでも(現代日本)力で解決する。それダメ、絶対にノウ」
「はい……」
「反省します……」
「メルトも邪龍ちゃんも知識不足。だから学校行きたい」
はい、解りました。
こうなればあらゆる伝手を使ってでもメルトをティティア国の第二王立学校へ入学させます。
「まずはカルナじいじと神皇国のお爺ちゃん、里の長に連絡して……」
「まずはあの国だろ?あの国の要人とも挨拶したな……?どうせ道すがらだからGOAISATSUをしに行っても問題はないよな?」
「父、母、そーゆーところだと邪龍ちゃんが言ってる……」
え?
◆◇◆◇◆
クレイオール第二王子side
「てことで、俺の恩人がそっちの第二王立学校へ入学したいっていうから、一枠どうにかならねぇか?アークレイン」
「あの8年前の勇者様がこの国に!?いいそいいそ!なんでも便宜をはかろう!上総側の方に来るのだな?そういえば勇者様は魔族の戦災孤児を娘にするために、あの最高軍師様とご結婚なされていたな?まずは住む屋敷を早急に建設させよう。なに、私のポケットマネーでなんとでもなる。それに第二王立学校へのテコ入れと教師陣の入れ替えだな。より高みへいける向上心のある学者と研究者を送ろう。ならば校舎と研究棟、寮も改築が必要か。それと下総側への行き来もしやすいように連絡馬車も増やして……」
「まてまてまて、アークレイン。落ち着け。聖達がそちらに着くのは早くて三か月は先だぞ?一般冒険者として旅をしつつ、高ランクの依頼をこなしていくんだからな?それに転送陣が使えないからな?」
大大大興奮のアークレインをたしなめつつ、一般冒険者としてここからティティア国の上総側……ナナメな国の左下半分側に着くまでをざっと計算する。
今いるのは王都城下町なので隣の国へは連絡馬車を使えば3日くらいでいけるだろう。
そこからノイエファルカス国を横断しつつ、途中途中で高ランク依頼を片付けて、また作り置きをつくったり、途中途中で休んだり……だと、三か月はかかるのではないだろうか?
「あっ!勇者様は今は一般冒険者として登録をしているのだった」
「そうそう。だからその勇者様、最高軍師様ってのもやめておいてやれ。あいつらはただのアキラとカナメとその娘のメルトだ」
「ふむ。八握聖殿、神宮寺枢殿、エクメルディア嬢か」
「詳しい資料なんかはその国の冒険者ギルド本部の上層部や神皇国の神龍教会のうえーーーの方が共有してるから、必要であれば王族名で申請してくれ」
「了解だ。それまでに万事うまく整えておく」
「……構い過ぎるとメルト嬢に嫌われるからな?」
「……ウン……」
これまでの会話を聞いて解るように、アークレインはガチの勇者オタクだ。
聖で七代目の勇者なのだが、それまでの勇者達の軌跡を綴った本を集めたり、聖遺物(歴代勇者がのこしてったものをそう呼んでいる。アークレインが)を収集したり、聖地巡礼と言っては各所を冒険ついでに巡ったりと行動が解りいやすい。
それに、聖は元……とは言っても今代の勇者様だ。
アークレインのテンションがブチ上がるのは仕方がないことかもしれない。
生身の、会って話せてなんなら一緒に討伐も出来そうなやつだからな。
……うん。
アキラ……がんばれ……。
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