第60話✤そろそろ旅に……あれ?
作り置きも沢山出来たので今後のお話をいたします。
聖と竈に張り付いて焼き物をしたり、おやつのクッキーや携帯食を作りながら
「俺としてはメルトをそろそろ学校へ行かせてあげたいんだよなぁ。魔族への差別がない所ってどこがいいんだろうか?」
「学校ねぇ……。今後を考えるとそれもありなんだろうけれど、メルト的にはどうしたいかだよね。メルト、学校行ってみたい?」
「学校……」
メルトは8歳なので日本でいう所の小学校2年生あたり。
でもこの世界だと市民は家のお手伝いをしているし、貴族は家庭教師が居る頃あいだ。
街が運営しているパブリックスクールは大体2年位で読み書き計算とちょっとした社会の仕組みを教わって終わり、なんだよねぇ。
貴族は幼少期から全寮制で入ることも珍しくはないけれど……。
「でもメルトの基礎学力って……」
「……ああ」
「?」
……そう、メルトは僕と聖により年齢以上の学力があるのだった。
それこそ読み書き計算は3歳ころから教えたらできたし、聖によって魔術も武術もそこらの冒険者では敵わないだろう。
「……学校……いく意味って……?」
「それはメルト次第になっちゃうんだよねぇ……」
うーん、とお茶を飲みながら考える。
メルトはというと、お茶とお菓子に夢中で此方の会話には参加してない。
「それでもお前ら非常識人枠だから、世の常識を知るには学校が一番だぞ?」
「そうなんですよねぇ……。って誰が非常識人枠ですか。あ、お茶のおかわりは?」
「貰う貰う。メルトさえよければ俺の伝手でそこそこいい学校に推薦できるぞ?」
「そこまでしてもらうのもねぇ……」
「っていうかクレイ殿下、しれっとまざらんで下さいよ……」
そうそう、クレイ殿下。なんでいるんですか?
「ここの支配人から、そろそろお前らが出立しそうだって聞いてさ。その前にあいさつをってね」
「ああ、作り置きはもう今日で終わりですからねぇ」
「そろそろ次のところに行こうかなって」
「それでメルトの学校の話か」
「そうそれ」
聖としては一度でもちゃんとした学校を……と望んでいる。
僕もそうなんだけれど、メルトがどうしたいかっていう話。
「そうだなぁ。魔族の戦災孤児に対して偏見がないっていうのはその土地によるからなぁ」
「そうなんですよねぇ。そうするとまず、神皇国は無理かなって」
「あそこは魔族との戦争で主体になった国だしなぁ。それに……」
チラリ、とクレイ殿下はメルトを見る。
まぁバレてますよねぇ。
「だとするとノイエファルカスに戻ってミルッヒとラクトの推薦状もって王立アカデミーの短期留学かなぁ」
「後はいっそ、ティティアの王立学校か?あそこは神皇国から近いが、メッセラ双星国とガルド公国も近いし、亜人にも慣れてるぞ?」
「ふむ……」
そうすると帝国から出てノイエファルカス経由で行くルートかな。
それに、ティティア国はナナメに伸びた領土で、先の二国に近い場所はそれなりに発展はしているがのどかな場所と聞く。
「なら今から一筆書いておいてやるよ。ティティアの第一王女のアークレインとは帝国のアカデミーの同期だし、ミルッヒやラクトとも顔見知りだ」
「……いいんですか?」
ほぼ引退しているとはいえ、元(今代)勇者にそこまで便宜を図っていいものなのか……。
「この程度ならな。戦災孤児の救済も王族の務めだし、才能ある子は国の資産だ」
と、クレイ殿下は魔法鞄から王族専用の公式書類を作る時の文箱を取り出すと、ささっと二通、その場で推薦状と紹介状を書き上げた。
特殊なインクに自分の血を一滴たらして魔力を込めた特別製で、書かれた手紙に魔力を通すと王族紋が浮かび上がる仕様だ。
これは血と魔力に反応するので、偽造はできないのだ。
「ほい、できたっと」
「ありがとうございました」
「所でメルトは学校、行きたいか?」
「うん!」
「だってさ」
そうだったのか。
今まで乗り気じゃないような感じだったんだけれどな。
「今後を考えればメルトはちゃんと学ぶべきだと思っていたんだけれど、父と母の事もあったから……」
あらやだ。逆に気を使われていたよ……。
「子供の方がよくみて考えてるもんだよ……」
「ですねぇ……」
という事で、北上経由で冒険者ギルドをはしごして高ランク問題を解消しつつ、ティティア国の南側を最終目標にきめた。
南側には第二王立学校があるようで、亜人や魔族も通っているようだ。
入学には試験があるようだが、クレイ殿下はメルトなら問題ないと笑っていった。
学校かー。ほぼ数百年前の記憶しかないけれど……楽しかったなあ……。
あれ?楽しかった……よね?よね???
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