第62話✤そろそろ旅に……3

 枢です。邪龍ちゃんからダメ出し食らったけれど、へこたれません!


「ではルート確認をいたします」

「おう!」

「はい!」


 僕はテーブルの上に世界地図を置き、赤ペンを取り出した。

 この世界地図、実は僕が連合軍時代にこっそりと作り上げたもので、これの縮小簡易版の国ごとのだけを各国に提供したんだよね。

 時代によって開発したり、村が出来たり無くなったりするけれど、それらの更新作業は国ごとの仕事としている。

 で、僕はこの世界地図を毎年更新して、複製品を何枚か作ってある。

 ので、今回の様に長期の旅をする場合に役立っている。


「今いるのがエイラ・アスラーク帝国の真ん中ちょい上にある王都にいます。そこから聖ノイエファルカスまでは連絡馬車や車中泊、車外泊が出来る長距離運行馬車を利用します。聖ノイエファルカスに入ったら一度ミルッヒちゃんやラクト君、カルナじいじにご挨拶してからティティア国まで行くんだけれど、各ギルドや村、街に寄りつついくから移動期間は半年くらいかかります。ここまではOK?」

「それでいいぞ」

「わかった!」


 世界地図に記載されている大きな街道に赤ペンをなぞっていく。

 一応ティティアまでの一本道を引いたけれど、そこまでにはいくつもの街を経由し、なんなら地方の村へも行くことが予想される。


「高ランク依頼の解消も俺の仕事だからその辺も理解してくれるか?メルト」

「メルト、父の依頼に付き合うの好き!大丈夫!」

「ありがとうな~!俺、いっぱい依頼こなしてお金稼ぐからな!メルトは学校に入学したら好きにしてていいからな~」

「うん!メルトも稼ぐよ!」


 うんうん。

 メルトは道中でお小遣いを稼ぐ気満々らしい。

 メルトなら問題なく稼げると思うし、聖が傍にいるなら安心だね。


「じゃぁ俺は明日、冒険者ギルドに行って移動することを伝えて、高ランク依頼を集めておいてもらうわ」

「父、メルトも一緒に行く!剣、おしえてー」

「おう!一緒に稼ごうな~」

「では出発は明後日でいい? 僕は乗合馬車の窓口に行ってチケットを買っておくね」

「「は~い!」」


 てことで、出発しますよ。

 珊瑚の卵亭の支配人さんにも言わないとな。



 ◆◇◆◇◆



 幸い、チケットは国境近くの街・レイリントまでの物を買う事が出来た。

 これは期間と行き先が決まっている特別チケットで、イズルさんの伝手により手に入れたものだった。

 指定席ではなく空きがあれば乗り込めるものであり、途中下車をしても期間内であれば指定場所まで乗車する事が出来るものだった。

 青春なんとかチケットみたいなものかな?


「さて、最初の目的地は隣の第二王都街・ドーラ。そこで半年以上消化されてない高ランク依頼が3つほどあるようだ。討伐が2つ、採取が1つ」


 聖が早速、冒険者ギルドで未消化の高ランクイラの情報を仕入れてきた。

 国境の検問街まで3つの街と2つの村を経由する様だ。


「国境の街までで結構な数の依頼があるからなぁ」

「安全第一で行こうか」

「そうだな」

「メルト……稼ぐ……!」


 おお、メルトが燃えている……。

 どうやら稼いで可愛い文具や着ていく服を自分で選びたいようだ。

 この世界、制服ありの所は貴族御用達の王立学校くらいしかないんだけれど、ティティア第二王立学校には制服がないらしい。

 一応式典用の白いジャケットの指定はあるが、それ以外は基本男は黒か紺のスボン着用、女子は紺か紫のスカート着用であれば派手めな色でなければなんでも大丈夫らしい。

 生地も無地が好ましいが、そこは王立学校、目立つ柄物でなければいいっぽい。

 ダメな場合はその日に一言貰うようだ。

 いいねぇ、自由な制服……。

 聖は小学校からこっちに召喚されたので制服を着たことがない。

 僕は……うん……その……田舎でしたからね?

 なんの変哲もないふっつーーーーの詰襟学ランに丸刈りでしたよ???

 召喚されたときに髪の毛生やしてもらってよかったよ!

 神様に今後召喚勇者が居るなら髪の毛丸刈りのままだけはやめてあげて!って言っといたしね!

 ハハハハ……。


「可愛い制服になりそうなお洋服買おうねぇ。僕と一緒に通販カタログみようねぇ」

「うん!」


 通販スキルは僕しか注文決裁はできないけれど、カタログを取り寄せて一緒に見る事は可能だ。

 どこの街でも必ずある大型店舗にはいろんなファッションもあるからね。

 服飾専門通販カタログもあるし。

 地方貴族が来るんだからその辺の小物まで吟味しないとね!

 素性を隠しているとはいえ、田舎冒険者の娘とか侮られないようにしないと!


「父、母が燃えている……」

「メルト、そっとしておきなさい。枢がなんかスイッチはいったようだから……」

「うん、そうする……」


 最愛の娘を着飾りたいだけですーぅ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る