第47話✤アイスダンジョン4階層
塩辛い簡単スープを全部飲み干したクレイ殿下は、ふはー!とため息を吐いた。
「これ、俺らが作るよりも味が薄いし美味いぞ?枢、これのレシピ売ってくれ」
「えええ?レシピって言っても、干し肉を削って沸騰させたら煮汁すてて、それからスープ二しただけだよ?あ、隠し味にちょっとだけはちみついれた」
「あー。俺らそのまま煮てたからもっと塩辛かったんだなぁ」
「乾燥野菜もたっぷり使うのがミソです」
「そうか……」
と、クレイ殿下は金貨3枚を握らせてきた。メルトに。
くっ、僕がペラペラ話してこんな事でレシピ代貰いませんよ!ってゆー作戦は無駄に終わった。
突然のお小遣いに、メルトは僕と聖を見たので、頷いて見せた。
「クレイ殿下。ありがとうございます!」
と、自分のお財布をだして、その中にいれた。
お財布も魔法鞄になっていて、聖によって指定魔法が施されている。
銀貨10枚、銅貨20枚、銭貨20枚以上は収納される仕組みだ。
ほんと、聖は神槍の勇者なのにこういった魔道具やアーティファクトの制作が得意なんだよね。
有難いなぁ。
「ふむ……、何かあればメルトに支払えばいいのね……」
ちょっとミルッヒちゃん?なに不穏な発言いてるのかな??
休憩後、3階層を抜けて4階層へ。
ここは3階層までの氷の洞窟みたいな場所ではなく、樹氷が点在している氷原フィールドになっていた。
ここはアイスゴーレムとスノーウルフはもちろん、この階層からイエティとアイスリザードが追加される。
そして、高ランクダンジョンだからか、ボス階層の手前の階層には中ボスが出る。
この階層はリトルフェンリルと取り巻きにスノーウルフが数体、3時間ごとにポップするようだ。
「正直、中ボスのリトルフェンリルさえ注意していれば、2人の実力なら余裕そうなんだよねぇ」
と、僕がいえば、聖とクレイ殿下は頷いた。
「そこにメルト嬢も入れば鉄壁の布陣だと思います」
マルさんもそう言って頷いた。
「そうだな、相性とバランスがいいから、パーティとしてはしっかりしてると思うぞ?」
「解ります。前衛・盾役としてミルッヒ様、中衛で、指揮がメルト嬢、後衛と指揮補佐でラクト様なので、連携が取りやすいんでしょうね」
「ミィは割とガンガン行くタイプの剣聖だからな。あの二人が指揮と補佐なら大事無いんだよなぁ」
ふふふ。そうでしょうとも。
うちの子、そろそろ魔術は減らして物理攻撃も教えるつもりですよ!
槍なら聖がみっちり教えるハズなので、中衛としてはかなりの腕前になる予定ですよ!
「枢がドヤ顔してるぞ、聖……」
「ふふーん」
「お前もかよ……」
うちの子褒められてドヤ顔しない親なんかいませんよ!
「3人は周りの気配をよく探ること、その上でどの程度の数までなら対処可能かちゃんと見極めてね。少し無理すれば大丈夫、は大丈夫じゃないからね。指揮官としては無能極まりないからね」
「わかりましたわ!」
「お2人をしっかりサポートしますね!」
「メルト頑張る!」
3人には注意をしたからこれでいいとして、クレイ殿下がそわそわしている。
今まで見守るだけだったもんね。
「クレイ殿下、気晴らししますか?」
「う……枢が俺の面倒みるのか?」
「もちろん?」
にやり、と生命の杖を掲げてみせる。
「癒し殺す気か?」
「おや、殿下はアンデッドでしたっけ?」
「そうならないための咀嚼措置なんだろうけどなぁ……」
だって護衛なんだもの。
ヒールの掛けまくり位は当然でしょ?
怪我したそばから回復させるから、即死効果さえ無効にしてしまえばほぼ無敵状態で突っ込めるんだよね。
あ、聖が殿下とマルさんに即死効果無効とステータスアップの護符渡してる。
ならばとバフ特盛で全体に掛けると、2人は死んだような目で武器を構えた。
「3人は俺がみてるからー。楽しんでこいよー」
「聖もねー」
あはははは。たーのしー!
「俺はさ、はみ出た1匹とかを任せてもらえれば良かっただけなんだよ……」
「諦めましょう、クレイ殿下。枢さんが1匹とかで満足すると思いますか?」
「あいつ、こういう所はほんと連合軍最高軍師だよな。悪魔とか言われてたの理解したわ」
何かボソボソ言っているけれど気にしない。
さて、サーチではここから10m向こうに楽しそうな塊があるぞーう?
聖にここにいます、とピン付きのマップを送ると、了承したと返事がきた。
「Let's party! Ya-ha-!!ですよ!2人とも!」
「なんだそれ」
「はぁ……行きましょうか、殿下……」
僕が先行してそ塊をみると、イエティ五体とスノーウルフの群れだった。
混合編成なのかたまたまかち合ったのか。
まぁ、関係なく経験値とドロップ品になるんですけどね!
「ささ、お膳立ては致しましたので!」
「持続回復魔法掛けながら言うセリフじゃないよな?」
「絶対死なないハズなのに、なんでこうも不安しかないんですかね?行きましょう、殿下!」
「oh.....。マル、お前もか…….」
ははは、とマルさんは笑いながら剣を構え、一団に駆け出した。
それを追ってクレイ殿下も駆け出し、いざ、尋常に勝負となった。
まぁ、公平ではないんだけどね!
あの後、もう2つほどの塊を散らしたので聖の所に戻ってみたら、メルトたち3人は物凄くご満悦な顔をしていた。
話はセーフティエリアに行き、本日はそこで泊まる準備をしてから、ということになった。
セーフティエリアに着くと、誰も居なかった。
3階層のパーティは先に行ったようだ。
セーフティエリアの中央には大きな煮炊き台が設置しており、4台程の竈と水場があった。
人気ダンジョンのセーフティエリアはここの2倍の広さがあり、煮炊き台や竈も多く、なんなら水場の他には簡易風呂場まで用意されている。
まぁ、ダンジョンを有する国や領地の方針にもよるんだけどね。
ここは高ランクダンジョンだけど滅多に人が来ないが、それでも標準セットは設置さてれいた。
お風呂は無いから天幕の中で済ますかな。
とりあえず、天幕2つを設置して、いつものようにビニールシート、敷物、クッションに加え、ハーフサイズのフリースブランケットもそれぞれに渡した。
せっかく煮炊き台があるから、スープでもつくる?と聞いたら、ミルッヒちゃんが、あの干し肉と乾燥野菜の簡単スープを作りたい、と言い出した。
「冒険者としてクレイ様と行動を共にしたいんですの」
「枢さん、冒険者の方々の好むご飯を教えてください!」
と、2人に言われたら断れないよねぇ。
クレイ殿下、ほんとにいい2人を婚約者に持ったなぁ。
そして僕が教えたのは、簡単スープとドロップした肉類の下処理。
肉は下処理さえできていればあとは串に刺して焼くだけでいい。
固いパンを炙り、削りチーズを敷けば皿替わりにもなるので、そこに焼いただけの肉を載せればOKだ。
あとは簡単スープにラードを入れ、固いパンを1口大に切り、ふやかして食べるやつ。
この場合、スープを少し濃いめに作ると美味しい。
それと、出来ればレモンやライムなどの柑橘系のドライフルーツを持っていれば食事は賑やかになる。
柑橘系のドライフルーツにお茶を注いだだけでもほっとするしね。
2人はふむふむとメモを取っている。
ついでにマルさんもメモをとり、帰ったら日持ちのするドライフルーツを研究し、そのドライフルーツに酒を浸したやつも作ると意気込んでいた。
とりあえず、それらはもう作ってあるので、自家製干し肉と共に参考品として4人に配っておいた。
自家製干し肉は肉ダンジョンから得た物で作ったので塩辛くはなく、美味しいと思う。
うん。ダンジョンや野営ではご飯だけが楽しみだからね!
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