第48話✤リトルフェンリルと!

 ご飯の後、メルト達が何をしていたのか聞いた。

 なんと、中ボスのリトルフェンリルと戦ったようだ。

 フェンリルと名がつくが全くの別種で、雪狼の上位種が変化した狼系最上位のモンスターだ。

 見た目が狼系よりも大型で魔術も使え知能も高く、毛並みも白いのでそう呼ばれているやつだね。

 リトルフェンリルの取り巻きの雪狼が10匹いたとミルッヒちゃんは言った。

 メルトとラクト君で取り巻きを2匹残しつつ、ミルッヒちゃんがリトルフェンリルのHPを削っていったそうだ。

 取り巻きを全て倒すと再召喚され、ドロップも無いから旨みはなく、大体の冒険者がそのやり方で倒している。


「で、その成果がそれなんだ……」

「はい!」


 と、ミルッヒちゃんはリトルフェンリルのマントを見せてくれた。

 鑑定してみると、防寒もだが、魔法攻撃軽減、打撃攻撃軽減、攻撃力向上(小)がついていた。


「これはラクトに装備させます。その方がパーティの底上げになりますし」

「そうだね、その方が生き残ることへの確率が上がるしね」


 だーよねー!と手を合わす。

 世知辛い言い方だけど、モンスターや魔物、盗賊なんかは身分や年齢を考慮しないからね。

 弱いやつから死ぬ世界なんですよ、ここは。

 なので、パーティの生命線であるラクト君にいい物を集中させるのは間違っていない。

 ミルッヒちゃんやクレイ殿下はそのスキルや戦闘スタイルに合った武具じゃないと性能が活かせないからねぇ。

 カスタムしていいなら遠慮なくやるんだけど、それやると勇者一行がひとつの国に肩入れしてると見なされちゃうんだよね。

 その辺の制限も聖が存命の間は有効なのだ。

 でも、小物ならいいよね。

 ってことで、戦闘には関係ない日常品はあげてる。

 やだなぁ、便利グッズですよ、便利グッズ!ってことでおけ。


「リトルフェンリルと戦ってみてどうだった?」

「3人なら余裕でしたわね。2人だとわからないです」

「そうですね。メルトさんの的確な補助や牽制に助けられました」

「メルト、やれることしただけ……」


 お?うちの娘が照れてるな?

 いつも僕らと連携してるけど、守られる立場だからね。

 守る立ち位置を学べたのなら良かった。


「確かにこの3人のバランスは良かったな。ラクトが状態制御フルコントロールが可能になれば、メルトが攻撃側に回れるし、攻撃型バランスパーティ」として有効だぞ」


 と、聖も絶賛した。

 ふむふむ。


「あとは数をこなして行けば、自ずとフルコンスキルは上がって行くよ。2人とも、精進しろよ?」

「はいですわ!」

「わかりました!」


 いい返事。



 ◆◇◆



「さて、今後なんだけど、ここでリトルフェンリル戦の数をこなしたいと思うんだけど、どうかな?」


 と、聖は提案した。


「固定ではなく、総入れ替えでやった方が子供組のいい経験になると思うんだよ。ただ俺と枢は参加出来ない。過剰戦力ダメ絶対」


 まぁね。リトルフェンリルごとき舐めプでもつまらないからね。


「てことで、5人には基本的3人組でリトルフェンリルをやってほしい。あ、クレイ殿下は事にするので大丈夫です」


 冒険者カードって、個人の倒した魔物やモンスターの情報がログとして残るんだけど、中ボスやボス、レイドボスなんかは個人で倒してもパーティ討伐としてカウントされるんだよね。

 それを逆手にとるのか。

 それでも、クレイ殿下は『なんでそんな所に行った!』って怒られそうなんだけどね。

 でもね、クレイ殿下すっごく嬉しそうなんだよね。

 今まで立場上、強いやつとは戦えなかったから。


「クレイ殿下は程々にしてくださいね?一応、僕らはあなたの護衛なので」

「わ、わかってるよ!」


 一応、釘は刺しとかないとね!

 マルさんはどうかな?と見てみると、おもむろにブッチャーナイフを研ぎ出していた。

 あれでトドメさすと、必ず肉が落ちるやつじゃなかったっけ??

 さすが食材の鬼。殺る気満々である。


 それから、お茶を飲んでまったりしてたらいい時間になったので、それぞれ天幕で1晩明かす事になった。


「メルト、連携とかの相談するから、姫様のとこお泊まりするー」

「あ、僕も同じでー」


 と、メルトもマルさんも殿達の天幕へ引っ込んでしまった。

 まぁ、布団関係は持ってったので大丈夫だろう。

 しかし、心配なのが僕である。

 聖がを逃すことは無い。

 ……てことで……。


「あの、ヤル気満々なのは解ったから、手加減してね?」

「枢、ポーションを飲めば大丈夫なんだよ」

「飲むまで大丈夫じゃなくない??僕、おじいちゃんなんだけど?!」

「ハイエルフからしてみれば20歳前後って、カルナじっちゃんが言ってた!」

「あんのクソジジイーーーー!!!」


 2人きりの天幕で、僕は散々鳴かされ続けたのだった。

 朝風呂、気持ちよかったとです……。

 聖お手製の上級の疲労回復ポーション、美味しかったとです……。

 枢です……。



 ◆◇◆



「枢さん、なんだか疲れてませんか?」

「ソンナコトナイヨー?」


 リトルフェンリルのポップ待ち中にラクト君にそう言われたけど、全力で知らないフリをした。

 うん、君もね、いずれこの気持ちがわかるようになるよ、とは決して言えないよね。

 その辺はクレイ殿下の匙加減なので、人様んちのことは口を出さない。


 さて、今はミルッヒちゃん、メルト、マルさんの3人でリトルフェンリルを狩り出したとこ。

 マルさんは、取り巻きからでも肉がドロップするからと取り巻きをメインに狩り尽くしている。

 それでわかったんだけど、ブッチャーナイフは取り巻きにも有効だった。

 それに、取り巻き再召喚5回目以降はリトルフェンリルの再召喚硬直時間が増え、防御力が落ちるってのも解った。

 再召喚の後に、何も出来ない時間が1秒から3秒に伸びたんだよね。

 その隙を狙い、一気に畳み掛けて終わり。

 特殊な倒し方だし、ここまで取り巻きを狩り尽くすなんて普通は無理だ。

 報告はされているけれど、効率悪いから没になったんだろうな。


「枢さん!見てくださいこの肉の山!」


 合計50匹分の肉の山を抱えて、マルさんは興奮していた。

 ブッチャーナイフでこれなんだから、グルメアタッカーなる肉以外の食材をドロップさせる伝説級武器を手にしたらどうなるんだろうか。

 食材の鬼が復活して、狩りまくるのかな??

 見たい気はするけど、深淵を除くようで嫌だな??


「今回も日本の肉やジビエが多いね。鍋にしたいから少しは分けて貰えると嬉しいかな?」

「複数あるのでしたらお好きに使って下さい」

「んじゃ、この猪肉の塊2つと丸鶏2つ貰っていくね」

「はい!」


 猪肉は鍋にして、丸鶏は中にもち米入れたサムゲタンにするか。

 暖かいの食べたいしね!

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