第36話✤すごろくか!
魔道通信機でミルッヒちゃんとラクト君が国王であるお父君に確認を取ったところ、クレイ殿下の所とは提携を結んでいるから、2人のレベルアップに協力する形であれば低レベル地帯なら活動可能にしてある、と教えてくれた。
まぁ、2人に合わせるなら低レベル帯のみになるだろう。
そして意外なことに、ミルッヒちゃんは剣聖スキルを持っていた。
これには聖も驚いていた。
剣聖っていったら、勇者スキルの代表として認知されているスキルだからね。
でも実はそれは間違いなのだ。
勇者のスキルにはもれなく【神】系がつくから。
聖は【神槍】スキル、初代勇者は【神知】、 【神剣】【神弩】など。
剣聖は【聖】系でどちらかと言うと【聖女】と同系統となる。
ちなみに【聖女】と【騎士】スキルを得ていると【
どの道、エクストラジョブだから、滅多に居ないんだけどね。
つまり、ミルッヒちゃんは勇者に次ぐ強力なスキルを持っているのだ。
ちなみにラクト君は【大賢者】。
これは探究心が特化されるスキルなので、ラクト君が料理に意欲的なのも頷ける。
「お父様に『許可が頂けるのでしたら肉ダンジョンでレベルアップしたい』と言ったら、『すごろくか!』て言われましたわ!」
「確かに双六みたいですけどね……」
「拠点はこことはいえ、あっちこっちに飛びそうですからね……」
ははは、と僕とラクト君は乾いた笑いを浮かべた。
「どの道、剣聖スキルなんか持っていても、鍛錬をせねば宝の持ち腐れですし、私だって王族にですから多少は自分の身位は守れませんと!」
「僕も大叔父様に教えてもらった魔法をある程度は使いこなしたいです」
ね?と2人にお願いされたらクレイ殿下の意思なんか無いに等しい。
肉ダンジョンは低レベルだし、お肉大好き人間が3人居るし……え?ミルッヒちゃんもお肉大好きなの?え?4人もいたのか。
余りそうでも収納して置けばいいか。
「俺としてもクレイ殿下の護衛だから、どこでも着いて行きますよ!」
「メルト、お肉ダンジョンいってみたい!」
「あーはいはい、解ったよ。2、3日したら準備して行くぞ。それでいいな?」
というクレイ殿下の言葉に、全員が頷いた。
「でもなんで、2、3日?」
「ここについてすぐ出てったりしてみろ、なにか落ち度がー、とか思われるだろう?だからだ」
「まぁ……そうですね……」
一応、リビングからは人を下がらせて居るから言うのだろう。
たしかに、思いつきで決めた手前、罪悪感はあるね。
「あと枢、ウルキオラ商人街まではここから馬車で2日は掛かるから、道中の作り置きを頼みたい」
「了解です。ラクト君、一緒に作ろうか?」
「ほんとですか!?是非に!」
「母!メルトも手伝う!」
「私はやめておいた方が良さそうですね、料理は壊滅的にセンスが無いので……」
ミルッヒちゃんは切る事なら出来るのだが、加工しようとするとダークマターが生まれるらしい。
流石、刃物を扱う事だけに特化したスキルだ。
「んじゃ俺は、クレイ殿下と2人でミルッヒちゃんに稽古つけるか」
「まぁ!本当ですの?私、槍も使えましてよ!」
「まーじかー。やばい、俺8年前以降あんまり自己鍛錬してないのバレそう!」
「まずは剣を見に行くか。ミルッヒ用にショートソード辺りを購入したいからな」
「そうしたらラクト君用に杖もいるな……なら、この辺か?」
と、聖は魔法鞄の中から数本の片手剣と脇差、魔法使い用の杖も何本か出した。
「聖、お前これ……」
「お世話になる礼だと思ってくれていいよ。俺らは使わない装備だし、スキルの有無やステータスによっては手に取ることが出来ないやつだからな」
「まぁ確かに一癖も二癖もありそうな武器だな」
「クレイ殿下にはこれかなー」
と、取りまわしのきく片手剣を出した。
「俺がギリギリまで精錬したやつの不良在庫で悪いんだけど……」
「いやお前、不良在庫って品じゃないだろこれ」
あれらは聖が今腰に下げてる片手剣を作る際、ドワーフの鍛治職人から数打ちをありったけ買い込んで、精錬スキルを上げるためにコツコツしてたものの名残なんだよね。
まだ未精錬の物も有るけれど、今の1本ができた時に、聖はそれを使うと決めたので作業が終わったのだ。
以来、空間収納の肥やしになっている。
その結果、勇者自身が精錬したおかげか、『へへへ、自分、やってやりましたぜ!』的な片手剣が量産されたわけです。
なんかやたらキラキラしてるんだよね。
「私はこれがしっくりきましたわ!」
「僕はこれで!」
そう言ってミルッヒちゃんが手に取ったのは一振の脇差で、ラクト君は20cm位の木の杖だった。
「業物の大脇差か。攻撃力もあるし剣聖スキルで重さも軽減されるからちょうどいいな。そうしたらサブウエポンはこの辺で……」
「ラクト君が選んだのは優曇華の杖だね。聖属性で回復や調伏に特化した杖だよ」
聖と僕でそう説明して、2人はそれを自分の魔法鞄に収納した。
王族ともなると、1人に1つ、支給されるんだなぁ。
時間経過はないけど、容量は少ないタイプらしい。
肉ダンジョン、楽しみだね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます