第35話✤今後の予定が決まりました
※サポーター1000PV記念絵の聖さんをアップしました。
◆◇◆
レトラト村の中央市場は別荘から徒歩20分の所にあった。
朝の6時から18時までやっていて、朝イチから12時、15時からラストまでがピーク時だと説明された。
今回は案内&説明係として屋敷の副料理長が同行している。
ミルッヒちゃんやラクト君の護衛は充分間に合っているからね。
この副料理長は目利きもできるので、料理長は仕入れを全て任せているらしい。
随分と信頼されているなぁ、とおもっていたら理由があるという。
「あいつ……ラドとは料理学校が一緒でしてね、料理の腕はラドが上なんですが、目利きがイマイチ苦手でね。たまに産地を偽られて売られそうになってたから、ラドが扱う食材は俺が一括で仕入れてたんです。それからずっと組んでやってます。俺はラドの料理が好きですから、ラドには料理に専念してもらいたいんですよ」
「へえ。そんな理由が。マルシルさんの目利き、勉強させてもらいます」
「普段料理されてるなら、簡単な見分けならすぐ会得しますよ」
副料理長……マルシルさんとキャッキャと話しながら市場にはいる。
聖からはぼそりと「食材オタクが出会っちゃった……」とか言われたけれど気にしなーい!
市場に入れば人の熱気のせいか暖かく、話し声や匂いが幾重にも重なった不思議空間になっていた。
いいねーいいねー。好きだよこういう雰囲気。
「まずは乾物からいきますね」
「よろしくお願いします !」
7人で歩いていれば結構目立っているけれど、ほぼ毎年レトラトに来ている王族の顔は皆覚えているようで、ミルッヒちゃんとラクト君の姿を見ると、納得して普段通りに接してくれた。
それに、マルシルさんも顔なじみなので、所々で贔屓の店から声が掛かかる。
「マルシル!明日は根菜を持っていくからな!」
「ありがとう、ナダルさん」
「マル坊、お客様に燻製肉をどうだい?」
「そうだな、少し貰っていくよ。こっちのやつを貰えるかな?」
などなど。
その時にこっそりと、燻製に使うチップの木は~とか、ここの店は締め方が上手とか、果物はここを見るといい、とか色々と教えてもらった。
僕がラクト君に料理を教えると話すと、時間が合えば自分とラドも参加したい、と申し出てきたので快諾した。
僕の料理は基本独学で、こちらに来た当時あんまり美味しくなかったショックで自炊に目覚めた感じだからね。
あとは異世界(日本の)通販スキルを得てからは、簡単レシピ本でや○○を入れて焼くだけ!的なやつで高下駄履かせてもらってるだけだし。
「こちらでも可能な異世界の料理があるなら覚えたいです」
「それなら大丈夫ですよ。似たもので代用できますし、ものによってはこちらの食材の方がパンチが聞いてるので美味しかったりします」
ドラゴンステーキとか向こうじゃ絶対ないしね。
そんな話をしながら市場をくるりと1周した。
気がつけばそれぞれ買い物をしていたらしく、聖は干し芋、メルトはドライフルーツを買ってホクホクしていた。
クレイ殿下は2人が買ったもの持っている。
アレコレと3人で楽しめるやつを吟味して楽しんでいるようだった。
そして、そろそろ夕飯の仕込みがあるとの事で、僕らは別荘まで戻ることにした。
別荘に着いてから別れ際に「厨房の皆さんでどうぞ」とお茶菓子セットを渡したら、マルシルさんの目付きが変わったのは気のせいだと信じたい。
魔道オーブンさえあれば簡単に出来るものですからね?!
そしてラクト君が期待に満ちた目を向けてくるので同じものを渡しておいた。
別荘での夕食はマルシルさんの言う通り、食材の持ち味を最大限に生かしたものばかりだった。
味がないのではなく、ソースや調味料に食材本来の味が負けてない、と言う意味で。
「このオニオンコンソメのジュレ、美味しい……。これだけでパンが何枚でも行けそう」
「人参のドレッシングもおいしい」
聖とメルトも絶賛してたし、マルシルさんの言う通り、本当にラドさんは腕がいい。
あれ?なんでラクト君は僕に料理を教えて欲しいんだろうな?
僕、庶民的大皿料理が多いですよ?
夕食後、これからを話し合うために、1度リビングに集まった。
お茶がきたので小さめの1口クッキーを出すと、みんなもっさもっさと食べ始めた。
……夕食食べたよね??
「さて、こちらの別荘のあるレトラト村ですが、冬期と呼ばれてるのはこの季節から少しした辺りから、年明けの3月頭までとなります」
「10月半ばから1月までほぼ雪に覆われます。行商人がくるので中央市場週に1、2回となり、2月に入れば再開します」
「そのあたりからは雪もなくなり、他の街への行き来が活発になりますわ」
「ただ、2月の半ばから末に掛けてぶり返しの雪が振りますから、王都へ帰るのなら雪が止み始めた頃か3月に入ってからの方が安全ですね」
と、ミルッヒちゃんとラクト君は交互に説明してくれた。
街道は定期的に行商人が通るし、レトラト村も街道の雪かきの1区間を担当しているので、早々孤立無援にはならないようだ。
まぁ、いざとなれば通販スキルでこの村位なら何とかなりそうだけどね……。
その場合、またレベル上がりそうだな。
僕の通販スキル、レベル制だから駄菓子屋から始まって百均、300円、500円、1000円~隣、コンビニ(7時~18時)、コンビニ(24時間)、スーパー、業務用大型スーパー、カイ○ズみたいな生活用品専門店ときて、今はデパ地下となっている。
その分利用料金が上がるんだけどね。
幸い、聖が討伐した報奨金があるし、たまーに師匠達がお小遣いくれるので助かっている。
デパ地下のお惣菜とか手数料込で、日本の2倍の料金になるからね!そりゃ作るさ!
業務用大型スーパーは神だったよ。
揚げたナスやらキノコミックスやら冷凍カット野菜があるんだからね。
あと聖さん大好き三元豚の肩ロースブロック2キロ肉とかスペアリブ塊とか。
でもたまーに、お高いケーキ買ってるのは内緒なのです。
「雪かきは手伝うよ。先日いい手が見つかったから、ここら一帯の雪位なら行けそう」
「え?」
「ほんとですか?」
「そう言えばお前ら、あの雪山でどう動いてたんだ?」
王族3人組が驚く中、聖も僕も、にこにこしながら説明した。
「なーるほど、容量1杯まで魔法鞄に吸わせるのか」
「使ったのはこの巾着タイプのだけど、物凄い吸引力だったよ。身の丈程の雪がラッセル車の後みたいにきれーに無くなってた」
「ラッセル車?」
「元の世界にそういうのがあるんだよ」
「へー」
クレイさんはひとしきり、関心していた。
「俺らも時間停止か容量の大きな魔法鞄を手に入れないとなぁ」
「今のは小さいんだっけ?」
「そうなんだよな。だから装備の手入れ道具と天幕と毛布、携帯食は1週間3人分で終わり」
「それ、1番小さいやつだね」
「どちらかさえ手に入れば道具類と食材で分けられるからな。ダンジョンも楽に潜れるぜ」
と、クレイさんは笑う。
ほんとに冒険者が好きやってるんだろうな。
王族だし、ノイエファルカス家から2人を娶る事になっているから、自国限定冒険者だけど。
「そう言えばクレイさんはこの国で冒険者稼業は出来ないの?」
ふと、気になった事を聞いた。
「いや、この国でなら年2回程度なら国王の認可さえあれば依頼受けたりダンジョン潜れるぞ」
「この国のダンジョンてそう言えば……」
「高ランクのアイスダンジョンがレトラト村から北に2日の所にあるな。それと王都から1日の辺にある、ツァルスク要塞ダンジョン。あとはこの国の南にあるウルキオラ商人街の肉ダンジョンかな」
「肉ダンジョン……」
肉ダンジョンてあれだ。どんな魔物を倒してもランダムで肉が必ずドロップするところ。
通称バグ肉ダンジョン。
この国だけのものではなく、五大王国には必ずひとつはある。
神様の救済ダンジョンとか言われているけど、基本的に低ランクダンジョンだから、高級肉は滅多にドロップしないし、しても領主や高級レストランが買い占めるから流通はしないんだよね。
数年前にドラゴン肉がドロップしたけど、ダンジョンを管理する領主が買い上げて、国王に献上してたはず。
でもあそこでしか、安全で新鮮なモツ系が手に入らないんだよなー。
「枢、よだれよだれ……」
「はっ!ごめんなさい。安全で新鮮なモツ肉に想いを馳せてました」
「モツ煮込み……」
「ごま油と塩コショウでレバ刺し……」
「ネギたっぷり甘辛レバー丼……」
……ジュル……。
ダメな大人組を子供組がじっとりと見つめているけど、こればかりは……こればかりは仕方ないんだ!!
「……低ランクダンジョンなら、こいつら連れて行ける……よな?」
「何があろうともこの命を持ってお守り致します。ユアハイネス」
クレイさんの一言に僕と聖の心はひとつになった。
「お肉ダンジョンですか……」
「なんにしても、冬期が終わってからですよ?今から行っても帰る頃には雪で街道の状況が……って……枢さん……」
「お帰りはお任せください。ラクト王子」
「……」
ミルッヒちゃんとラクト君の言葉に、僕は無言で魔法鞄になっている巾着袋を見せた。
「……お父様にお伺いしておきますね」
「枢さん。モツ煮込み教えてくださいね?」
「かしこまりました」
「……」
あ、ラクト君が遠い目をしている。
君もそのうち解るよ……。
お肉大好き家族に囲まれるとどうなるか……。
ダンジョンで体験しようね!
「では、お父様の許可が出ましたら、お肉ダンジョンへ、でよろしいかしら」
「「「「さんせーい!」」」」
「……はい……」
別荘の皆さま、思いつきであちこち行くことになってごめんなさい……。
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