第27話✤閑話︰カルナさんの愚痴
8年ぶりに枢に会った。
相変わらず魔力が灼熱のマグマみたいにぐらぐらと煮えたぎっていた。
その魔力を煮込まされている器、そろそろ壊れるんじゃない?
「ソレ、大丈夫なの?」
僕が枢の心の臓のあたりをちょいと指し示す。
枢は一瞬だけキョトンとしたが、うん、と頷いた。
「まだ大丈夫かな」
「ホントかなぁ?」
ここはノイエファルカス国王宮の離れにあるテラス。
使い魔に枢を呼び出してもらい、このテラスで待っていたんだよね。
で、枢を改めて心眼で検査すると、さっきのようなぐらぐらした魔力が感知された。
「なんならまた1層くらい引き受けて貰ってもいいんですよ?」
「えー、やだなぁ。前の分引き受けたからこんな体になったんじゃないか」
そう文句を言うと、枢ははははと笑った。
そう、僕は以前も枢の魔力の端っこを貰い受けた。
だって、連合軍に参加したばかりのこの子が本当に危うかったから。
事情はぽつぽつ話してくれた。
なんでも自分は異世界転生してて、元日本人であること、ちょっとした他の事情もある事。
出来ればこの戦争で死んでおきたい事。
等など。
この戦争で死にたい云々は先程の、溜め込んでいる魔力がそろそろこの体では待ちそうにないと判断しての事だった。
魔力耐性が高いハイエフルの体なら、と期待しての指定転生だったけど、外部からの耐性はともかく、内部からではさほど効力がなかったらしい。
その後、枢はとんでもないことを言い出した。
「内部メモリから溢れるなら外部ハードディスクに移動すればいいんじゃないかな?」
と。
なにそれ?
疑問を思うまもなく、あれよあれよと枢の口車に載せられ、魔力移行の儀式に放り込まれた。
結果、比較的最近目の魔力の層をまるっと移植されたただの人間が無事な訳もなく。
元々ただの魔法剣士だった僕は急激に数段階もランクアップして
その頃から枢は僕を師匠と呼び出し、あっという間に枢の隠れ蓑の完成だ。
くっそ、この腹黒弟子め。
枢の魔力の層は枢が過ごしてきた人生分、重なり続けている。
このままだとまた誰かに移植するか、メルトちゃんが成人したあたりでひっそりと姿を消すだろうな。
「軽めの層なら引き受けてやらんことは無い」
「え?!」
おいこら、嬉しそうにすんな。
こっちだって負担はあるんだぞ。
「条件は僕をメルトの後見人にすること、あとお前が抱えてるものを全部はなせ。近しい聖では伝えられてないこと全部」
有るよね。
近すぎて伝えられてない事。
おい、視線そらせてんじゃねぇよ。
「·····聞かなきゃ良かった!ほんとに!お前何でそんなことになってんの?!馬鹿なの?アホの子なの?いやもうアホの子だった、そうだった!聖可哀想!メルトちゃん可哀想!」
「いやー、師匠そこまで言われるなんてー」
「ほめてねぇからな?」
「いやだってさぁ、ここまで絡め取られてるとか思わないじゃない?」
枢はへらりと笑う。
ああそうか、こいつはただの神宮寺枢として聖とメルトのそばにいて、出来ればどちらかのために死にたいのか。
枢、それは愛情じゃないからね、ただのエゴだからね。
お前は自分勝手に自分の命の使い所を決めてしまっているんだからね。
聖が居ればあとは何とかなると思ってたら大間違いだから。
「まぁいいや、魔力移植やっとけ」
「いいんですか?」
「お前に貰った分で色々と研究したし、外部ストレージくらいはもう構築済みなんだよ」
「流石師匠!あとでそれ教えて下さいね!」
「お前がとっとと聖の子をこさえたらな」
「えー」
一応、魔力が高いもの同士でなら、子を成すことは可能だ。
異性でも同性でも。
優性種の遺伝子を残すためとか何とかで、神竜がそういう処置が施した世界だからな。
それで少しは抱えている、前々からの魔力を減らすことは可能だろう。
なにせ、互いの魔力の半数が注ぎ込まれるんだから。
「まぁ、よく考えろよ。自分のためじゃなく、偽善でもなく、あの二人のために」
「解りました!じゃぁこの位よろしくお願いします!」
枢はそう言って、飴玉位に圧縮されて魔力の固まりを3個程、渡してきた。
軽いなー!
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