第28話✤ところで、なんでここにいるの?
※近況ノートにカルナさんの絵姿を掲載してます。
◆◇◆
side︰聖
枢が戻ってこないから探しに行ったらカルナじっちゃんと一緒にいた。
道理で気配察知もパーティマーカーも念話も使えないはずだ、カルナじっちゃんの隔離魔法でこの空間だけ位階がズレてら。
枢はと言うと、カルナじっちゃん相手にギャーピーと文句を言っていた。
俺らには向けたことがない、素の表情で。
色々と総合的に見て枢の方が位は上なのに、未熟者の孫を相手にするように枢を弄んでいるから凄いよな。
枢も枢で、そういう所に懐いているんだろう。
口ではげーとかあのクソジジイとか言ってるくせに、ちゃんとカルナじっちゃんの好物を作って手土産セットを作っていたんだから。
「おお、聖か。探させたか?」
「いんや」
「聖、きいてよ!じいじが無茶ばかりいう!」
むきーー!と本気ではない怒りを露にしている枢がなんかおかしくて、つい頭を撫でてしまった。
「ふぇっ!?聖·····?」
「いや、俺の嫁は可愛いなぁって·····」
「ふぇぇぇ!!」
あ、撃沈した。
それを見てカルナじっちゃんはけたけたと大笑いしている。
「おお、そうだった。聖よ、僕をメルトの後見人として認証してくれないか?対価は·····そうだな、僕の研究成果の特許の半分をメルトに譲ろう」
「は?じいじ耄碌した?!」
「僕は本気なんだけどな?それにもう名声もお金も充分だから、のんびり研究したいんだよね」
「メルトの後ろ盾が増えるのはありがたいけれど、いいの?カルナじっちゃん、容認してたことになるんだよ?」
メルトに関して色々とあるから、下手に後見人を作ると、人間国側への裏切り行為と見なされてしまう。
「何、もう前線を退いてるし役目も返上、田舎に戻ってきたただ魔法と剣の得意な爺だよ」
得意ってレベルじゃないんだよなー。
なにせ、勇者である俺が未だに1本取れないことがあるし。
夕飯前にちょっと手合わせしたらすぐ転がされたし·····。
「メルトがいいならな」
「うむ。それとな、聖」
「ん?」
「はよ枢と子作りしとけ」
「「ブフォッ!!!」」
いやしてますよ?
毎回枢をぐずぐずにして、泣きながら甘させてよしよしするくらいには。
「いや、もうひとつの方法なんだが」
「あー、魔力を融合させてアダムアニマの核を作って~てやつ?」
「そう、それ。今回は枢の魔力の層を剥がす飲も目的としてるから、これを使うといい」
と、カルナじっちゃんは透明の小さなビー玉を渡してきた。
それを受け取った瞬間、俺の体が地面にめり込んだ。
「うぉっ?!」
「聖!」
その場でテラスの土台にヒビを入れながら倒れ込んだ俺を、枢は立ち上がって駆け寄ってきた。
なにこれおもーい!手がいたーい!
「カルナじっちゃんなにこれ?すげー重いしなんかじわじわ魔力吸われてる」
「じいじ!聖に何すんの!!」
俺らを見て、にんまりと笑うカルナじっちゃん。
なんかやられた?かな?
「まぁそうだろそうだろ。そいつはな、相手を想う気持ちの分魔力を吸って重くなるアダムアニマの核だからな」
「え?」
「は?」
「ふふん。対勇者&枢専用アダムアニマ研究の結果だな」
そんなことしてたんだ、カルナじっちゃん。
「たしかに、枢の魔力はぐらぐら煮立ってるからなぁ」
「えっ?!」
びっくりした顔で俺を見るけど、バレてないと思ってたんだろうなぁ。
何度も体を重ねて深い所まで繋がって、深層心理まで触れ合ってるからバレバレだっての。
何層にも重なって、それぞれが別の対流方向でぐるぐるぐらぐらしている枢の魔力はそれだけで異常だから、どうにかしないととは思ってたんだよな。
そっか、枢を心配してくれている人はちゃんといるんだ。
安心安心。
「じいじ·····ありがとう」
「カルナじっちゃん。ありがとな·····」
「何、可愛い弟子達に最大限の手助けをするのは師匠特権だからね。気にしないでいいよ」
ふんす!とドヤ顔のカルナじっちゃん。
でもですね·····。
「これ、重すぎて持ってられないんだけど·····」
「聖、貸して!」
「あ、おい!」
俺の手からひったくるように核を取った枢は·····。
「ふぎゃん!」
と言って同じように地面に沈み、クレーターを作った。
わぁお。
「この状況が嬉しい」
「わぁぁぁん!ヤダヤダ恥ずかしいーー!」
ふははは。
ほんと、俺の嫁は可愛いでできている。
「お前アホの子だろ。聖の状況みて重力魔法使うとか思いつかんの?」
「はっ!」
「そのまま手の中で重力フィールド展開して、さらに空間保護もつけて、収納しておくといいよ」
「ラーサ·····」
了解、と枢は呟いてから、手のひらに魔力を集中させた。
「あああああ。フィールド張るだけで魔力がガンガン吸われていくー。なにこれぇ」
泣きながらもきっちりやり遂げ、ダンジョン産のミミックから出た宝石箱の中にいれて、やっとの思いで空間収納へ。
これでひと段落かな?
「それを使うタイミングは任せるよ。さて、枢。ご褒美だ」
と、カルナじっちゃんは枢の頭に手を置いた。
あ!まさか!
「ぴぎゃん!」
「やっぱり·····」
直後に気絶して倒れ込んだ枢をやれやれと抱き上げる。
「あんまり虐めないでよ。可愛い嫁なんだから」
「この程度の魔術構築の焼き付けに耐えられない弟子がわるい」
「スパルタだなぁ」
「弟子を
にひひ、とカルナじっちゃんは面白そうに笑った。
「核は枢と相談して使う直話を決めるよ。もし産まれたら抱っこしてやって」
「僕の生きている内に頼むよ」
「うん。そのつもり」
そう言って俺は枢を抱き上げたまま、用意された離の部屋へと戻った。
ベットに寝かせた枢の頬にキスを贈ると、俺もその隣で横になり、目を閉じた。
まだなんか隠している領域はあるけれど、いつかは突破してやるからな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます