第26話✤王都に来ました
※近況ノートにいろいろ絵を載せてますので宜しければご覧くださいませo(*・ω・)ノ
◆◇◆
あっさりと王都・ルクレツィアに着いてしまいました。
フラグ1級師?そんな称号もスキルもありませんよ、あははは。
「んじゃ、王宮の転送陣まで行くかね」
と、ピクニックに行くかのような気軽さで、クレイさんはそんな事を言った。
一応、転送管理師が居るとはいえ、設置場所は王宮の庭先だ。
なんで転送陣が王宮にあるのかと言うと、結界が張りやすいからだ。
初代勇者の改革のひとつで、王宮は悪意を寄せ付けない様に、敷地内全体を立体魔術で囲ってあるのだ。
人間がどうにか出来る企てなんかの悪意はスルーするけど、殺意や侵攻は弾いてくれる。
なので転送陣での他国侵略は完全に無効化されるのだ。
そして、基本的に転送陣を使えるのは王族、もしくはそれに準じる者、勇者で、貴族連中は王様に申請して内容が妥当であるかの協議後となる。
無論、緊急性は優先されるが、使用者は少ないかな。
「王宮·····きれいねー」
メルトが転送陣まで続くお庭を見ながら、ため息をついた。
うん、これは本当に綺麗だな。
「お?気に入ってくてたか?俺の母上·····つっても側室なんだが、庭師、緑の手、植物研究のスキル持ちでさ、王宮の庭全部、母上の仕事なんだ」
「ベアトリクス様でしたよね。毎年新しい花の種類を作り出し、希少薬草を育ててるって聞きました」
「お?よく知ってるな」
「母、おさえてね?」
「枢、先に行くところがあるからな?」
薬草、という言葉に聖とメルトがビクリと反応した。
大丈夫だって。
·····実際に見なければね。
「見えてきたぞ、あれが転送陣だ」
お庭のほぼ中央に設置された高さ5m程の円形をした転送陣がそこにあった。
時空魔法と相性の良いウルツァイト鉱石を鋳造して作った幅50センチの輪っかが何重にも重なり、それらはゆっくりとくるくると動いていた。
輪の側面には幾何学模様のようにビッシリと魔術文字が刻みこまれているので、魔力を通せば時空魔法を取得してなくても転送陣は動くのだ。
これも初代勇者の発明品だった。
「んじゃ、ノイエファルカス国に行くか」
と、クレイ殿下は輪っかの前まで来ると、転送管理師を見てうなずいた。
「転送陣・展開。接続先・ノイエファルカス」
転送師さんがそう告げると、輪っかの重なった所が青く光りだした。
そして、その先の風景が段々と見えてきた。
完全に向こうの風景がクリアになったら接続完了、聖、クレイ殿下、メルト、僕の順で転送陣の中へ入っていった。
ヴン·····という振動音がして1歩進むとそこはノイエファルカス国だった。
同じような、しかし自然豊かな庭園の中にあり、感じる寒さからも、ここが目的の地であることは確かと言えた。
なにせノイエファルカス国、年間平均気温が12度で寒いとマイナス気温なんかザラだ。
そして今、例の事件·····騒動?のおかげで、さらに気温がダダ下がりなのだ。
「さっむ!」
「確かにな」
聖がジャケットの上から両腕をする動作をすると、クレイ殿下は頷いた。
すると·····。
「クレイ様ー!」
「クレイ兄様ー!!」
と、向こうから駆け寄ってくる銀髪の幼い子が2人·····。
「お、ミルッヒ、ラクト、久しぶりだな!」
飛びついてきた幼子2人を同時に軽々と抱き上げ、クレイ殿下は嬉しそうに笑った。
そして僕らに向き直り、2人を紹介してくれた。
「この子達が俺の嫁達だ。第三王女のミルッヒと第四王子のラクトだ」
「クレイ様の腕の中から失礼致します。勇者聖様、神宮寺枢様、エクメルディア様。私はこのノイエファルカス の第三王女、ミルッヒと申します。以後、お友達として接して頂けると嬉しいわ!」
「同じく、クレイ兄様の腕の中から失礼致します。ただいまご挨拶致しました第三王女ミルッヒの双子の弟であり、このノイエファルカス国の第四王子であるラクトと申します。姉共々同じように接し頂ければ幸いです」
「ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。俺は今代の召喚勇者・八握聖です。今回はこのノイエファルカス国からのご依頼と、クレイ殿下の護衛としてやって参りました。こちらは俺の伴侶と娘です」
「神宮寺枢です。聖のサポーターをしております」
「初めましてミルッヒ様、ラクト様。勇者聖が娘、エクメルディアと申します。どうぞメルトとお呼び下さいませ」
ちょん、とカテーシーをして頭を下げるメルト。
それを見て、2人はクレイ殿下の腕の中から降りると、それぞれ同じように頭を下げた。
「メルトさんは8歳と聞きましたが、とても礼儀作法がしっかりとしていますね。素晴らしいことです」
「ありがとうございます。母の教育の賜物ですので、お褒めいただけて光栄です」
「まぁ!お話の通りに、枢様はなんでも出来るのですね!」
ぱぁ!と顔を輝かせたミルッヒ様の言葉に、ジト目でクレイ殿下を見る。
クレイ殿下はそっと視線を逸らしたので、確定した。
情報源はお前か·····。
「姉様、立ち話はこの位で皆様を王宮にご案内しなくては」
「そうでしたね、ラクト。申し訳ありません、ではご案内致しますね」
双子の先導で、僕らは王宮へと進んで行くのであった。
◆◇◆
王宮は気温調整の魔道具がふんだんに使われており、年間通して20度に保たれているとラクト殿下が説明してくれた。
本格的な寒期に入ると、15度位まで下がるが、それでも外よりかは暖かくなっている。
そして豪雪地帯という名の通り、一ヶ月間はほぼ雪で外に出る事さえ危ぶまれている。
今回の魔物騒動では二か月間は雪の中だろう。
その間、王国騎士団が各地に食料を運んだり、支援はするようだ。
この王都でもかなりの量の保存食が蓄えられている。
「お父様とお母様にご挨拶が終わったら、私たちが暮らす離れへご案内いたしますね」
「この王宮の森の中である、王族用のセカンドハウスのようなものです」
と、ニコニコしながら説明をしてくれる二人。
……ちょっとまって?
そこに僕らも入ってるんじゃないよね?
クレイ殿下はいいとして、僕らいわば部外者ですよ??
ちょん、と隣にいるクレイ殿下をつつくと、あからさまに顔をそむけた。
……ギルティですな!
(クレイ殿下?聞いてないんですけれど?)
(え?だって一緒にいた方が便利じゃね?)
(便利かどうかは僕らが決める事ですが?)
コソコソと話あうが、何だかんだで護衛任務もあることだし、と途中からコソコソ話に参加した聖がそういうので、渋々ながら承諾した。
むう。
メルトに本場の王宮マナーを教えてもらういい機会だと思えば……いいのかな?
メルトのやる気次第だけれどさ。
それから、王様と王妃様えの謁見と、今回の件を引き受けてくれたことに関して感謝をされた。
王宮騎士でも駄目だったんだってさ。
相手は
どちらも精霊の括りではあるが、古代種に属している。
そんな面倒な存在同士の戦いに手も足も出るはずもなく……。
そして、お二人の横にいる、16歳くらいの少年がおりましてですね……。
「枢、久しぶり」
「……お師匠様におかれましてはご健在で何よりでございます」
「他人行儀だね、枢?」
「くっ……。お久しぶりです!じいじ!」
自棄である。
ハイエルフで80歳はまだまだ子供枠、それが僕です。
人間でいうなればまだ12歳とかそんなあたり。
対して、カルナ・ヘイレス・ヴァルプルギスは現在52歳で生粋の人間……のはず。
なんでも魔力が高すぎて日常生活に支障がでるから、普段はぎゅっと魔力を絞っているんだけれど、なぜかぎゅっと絞っている間はこの少年タイプになってしまうらしい。
五大王国七不思議のひとつとして数えられているのだ。
「カルナじっちゃん!久しぶり!」
「おお、聖はいつも素直でかわいいなぁ。枢はほんと大人として在ろうとするから、僕は悲しいよ」
「あはは。まぁ枢がしっかりしているから、俺もメルトも楽できているところがあるんで、あんまりいじめないであげて?」
「おお、そうだった。メルトちゃん!僕がひいじいじだよ!カルナおじいちゃんでもいいよ」
「うちの子に嘘教えないで!じいじ!」
「カルナおじいちゃん。初めまして、エクメルディアです。父と母からは大切に育てられてます」
「えー、なにこの子可愛い!ほんとに枢が育ててるの?」
うう。
なんで師匠には頭が上がらないんだろう……。
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