#9
僕たちは送られてきた刺客が思いのほか弱いおかげでとりあえず村に戻ってくることができた。帰ってきてから先ほどのことについてお母さんに尋ねる。
ねぇお母さん、魔法には詠唱が必要なの?僕一回も詠唱とかしたこと無いけど。
それが魔法を使うにおいての制約の一つだね。基本の属性の魔法を使うときも特殊な属性、空間魔法や幻影魔法を使うときも本当は詠唱をしないといけないんだよ。
それならどうして僕は詠唱をしないで魔法が使えるようになっているの?
お母さんがルナに魔法を教えるときは『イメージをしっかりと持って』って言っているでしょ?実は詠唱なんかしなくてもその『イメージ』さえしっかりとしていればちゃんと使えるのよ。
それってお母さんが知っているのなら誰でも知っているんじゃないの?
無詠唱が広まると今まで培われてきた魔法文明の根底から覆りかねないから知る人ぞのみ知る事実ってことね。
お母さんは言葉を続ける。
今まで魔法文明が栄えてきたけれどそれまでで何一つ変わらなかったもの、それは詠唱は絶対に必要だってこと。それを真っ向から否定していくことになるから広まるととてもまずいのよ。詠唱の省略をすることに成功した研究者はいるけれどそれでも省略ができるようになったのは研究者の間でのみだった。魔法の性質を少しでも理解している人しかできなかった。だからこそ無詠唱はできないものと信じられてきたの。
できないものと信じられてきたものが崩されてしまうと混乱を招いてしまうって認識でいいのかな。
そう思ってもらってていいわ。
むやみに無詠唱魔法をすると驚かれるし。周囲の人に混乱を招く恐れがある。これからは詠唱をしなくてはいけない。
いや、だからあれ恥ずかしいんだよな。
詠唱を省略して唱えることにしたいけど魔法の名称を唱えるだけで良いのだろうか。
クイックムーブ
そう唱えると今まで使っていたものよりも長い距離移動することができた。
なるほど、イメージがしっかりしている上で詠唱を行うと効果が上がるということか。
さまざまな魔法を試したがストレージは魔力量依存なため詠唱をしても全く効果がなかった。どうやら効果が上がるものとそうで無いものがあるようだ。
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