#6

テト爺さんから渡された本は幻魔法の魔導書と影魔法の魔法書の2冊だった。僕はテテおじいさんに尋ねずにはいられなかった。


 テト爺さん?どうして本が2冊あるの?後僕が欲しい本は幻影魔法のことが書いてある魔導書だよ。


 ほっほっほ。不思議に思うのも当たり前のことじゃ。坊ちゃんの言うとうり、魔法の属性自体は幻影魔法という括りであっておる。じゃが、独自に研究をしておった方が幻影魔法は昔、幻魔法と影魔法の二つが合わさってできたものだということがわかったのじゃ。何を隠そうそのことを突き止めた人物こそ坊ちゃんのお父様、カナン様なのじゃよ。


 つまり、この本を書いたのは僕のお父さんってこと?


 そうじゃ。カナン様は幻影魔法の第一人者と言って差し支えない人じゃ。今も魔王城の方で魔法の研究、および魔王軍の参謀役として忙しなく働いておられるじゃろう。


テト爺さんから聞いた衝撃の事実。僕のお父さんは生きていた。しかも魔王城で魔法の研究?参謀?でもどうして今まで会いにきてくれなかったのか。なぜ?わからない、怒りと寂しさが心の中で渦巻いている時に横から悲しそうな顔でお母さんが声をかける。


 ねぇ、ルナ?『血統至上主義』って知ってる?高位の魔族はそれ相当の高位な魔族と結婚し、純粋な魔族の血族を絶やさない考え方。お父さんも至上主義の人たちに言われお母さんではない高位の魔族と結婚する予定だったの。でもね、お父さんは私と結婚したの。お母さんはそもそも人間なの。人間の私と結婚なんてしたら周りの人は黙ってなかったわ。その人たちにあなたは呪われた子として殺されそうになって今住んでいる村に逃げてきたの。村の人もそのことは知っているわ。お父さんは私とルナを助けるためにここに残っているの。だからお父さんを責めないであげて?ね?


 つまり悪いのはその至上主義を掲げている人たちってこと?


 そういうこと。お母さんは、そんなものクソ喰らえって思ってるわ。そんなので家族がバラバラになるのなら至上主義なんてものは必要ない。そう考えているの。


 坊ちゃん、ライラお嬢ちゃん。お話はそこまでにしてそろそろ村に帰ったほうがいいですぞ。至上主義者の奴らがこちらへ向かってくるはずじゃ。


門番の人の誰かが情報を渡したらしい。僕のことを殺すため送られた人が追いかけてくる。


 お嬢ちゃんたち。その本は坊ちゃんにお渡しします。ささ、裏口からお逃げください。


 ありがとうございます!テト爺さん!!


テト爺さんに託された本を絶対に持って帰ろう。今すぐ王都から逃げなくては。

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