第178話 諦めない玲子さん
俺達は、三年生になり本格的に法学の専攻に入って来た。だが、俺、早苗、涼子、玲子さん、四条院さんは二年次と同じように全て同じ授業に出て、同じゼミに入り、同じ法学研という同好会に入った。
そしてそのゼミと同好会には当然加奈子さんとセキュリティの竜野通子さんもいる。
もう法学部で俺達の事を知らない学生や先生はいない位有名になってしまった。
最初俺達の関係や家柄を知らない学生が、早苗や玲子さん、涼子や四条院さんに声を掛けたりしていたが、全く相手にされない事や変なちょっかいを出そうとした男の学生が次の日から俺達に近付かなくなった事で噂が噂を呼び、今では俺達に声を掛けてくる学生はいない。
そして加奈子さんも同様だ。彼女に触れようとした学生は一瞬にして地を這う事になった。そして即時退学。理由など関係のないやりように、やはり加奈子さんに近付く学生はいない。
教授や講師達も俺達には相当に注意を払っているのが良く分かる。特に法学部振興基金に立石家、立花家、三頭家、四条院家から過去の寄付金とは桁違いの寄付を提供された事もあり、俺達の機嫌を損ねない様にというか触らぬ神に祟りなしという感じだ。
それに俺を含めて全員、全科目評価Aなので、何も言って来ない。
だが、新たな問題も発生している。そう妹の瞳と立石洋二さんの婚約が決まった事を受けて、玲子さんが積極的に俺に関わり始めた事だ。
去年、瞳の婚約の儀の時に棚上げした玲子さんのリクエスト、加奈子さんと同じ様に日を決めてその日は終日会うという事をいくら断っても設定して欲しいと言って最終決着?が付かないままに来ている。
理由は簡単だ。住まいが遠ければ音沙汰無しなんて方法もあるが、お互いのマンションが近いし、大学に行くのも大学から帰って来るのも一緒だからだ。だから執拗に言って来る。
高校時代叶わなかったスローライフは、大学に入っても叶わなかった。
俺は、こんな事になっていなければ、バイトとかやって色々知見を広めたかったが、この状況では、全くできない。バイトしたら、全員同じになってバイト先に迷惑が掛かってしまうのは目に見えているからだ。
今日も、
「達也さん、授業は午前中で終わります。私と一緒に来て欲しいのですが」
「何処へですか?」
「お食事をしてお買物をしたいと思っています」
「ちょっと待ってよ立花さん。そんなの一人行けばいいじゃない。達也は今日は私と一緒なの!」
「桐谷さん、あなたは毎日達也さんと一緒なのだから、週に一日位、私が達也さんと一緒に居てもいいではないですか」
「ぜったいに駄目!」
「あら、私と達也さんは既に縁戚関係にある身です。この中で一番私が達也さんに近い人間です。週一回位会って当然です」
「な、なんて事言うのよ。私だって達也と婚約しているのよ。貴方だけではないわ」
「それは正式な婚約ではない口約束でしょ」
「達也、何とか言ってよ」
「そんな事言われても」
「達也!」
「玲子さん、とにかく今日は止めましょう」
「残念ですが、今度に致しましょう」
いつもこんな感じだ。これを涼子は我関せずという顔で見ているし、四条院さんは、お腹を抱えて笑っている。
加奈子さんは授業が違う為いない事はせめてもの幸いだ。
私、四条院明日香。最近玲子の達也に対するアプローチが積極的だ。彼の妹瞳ちゃんが玲子の兄と婚約したと聞いた時は驚いたけど、世の中、絶対に無いという事が無いと改めて思った。
私の彼、正人は相変わらず私に対して消極的というか、あっちだって一生懸命って感じで余裕がない。あれで本当に工藤工業を背負っていけるのか心配になる。
最近、流石に飽きて来た。本当は達也狙いなんだけど。玲子と桐谷さんが共倒れになるなんて事も起きるかもしれない。だから正人と別れて新しい相手を見つけるより、今のままで大学卒業までの間のチャンスを待った方がいい。絶対に無いなんて絶対に無いから。
今日も楽しい達也劇場を玲子と桐谷さんが見せてくれている。ほんとこの大学に来て良かった。
それに全員、法学を勉強しているとはいえ、法曹になる人はいないから、司法試験を受ける訳ではないのでキリキリしていない。
達也には悪いけど私にとって本当に楽しい大学生活を過ごしている。あと二年。何が起こるか楽しみだわ。
玲子さんと早苗が俺を挟んでまだ言い合っている。もう良い加減に止めてくれ。でも二年経って俺と早苗が結婚し、加奈子さんとも内縁の儀が行われれば、流石に玲子さんは諦めてくれるだろう。それまで待つしかない。
――――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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