第177話 玲子さんキャラ変わった?
俺、立石達也。妹の瞳が玲子さんの兄洋二さんと正式に婚約した。洋二さん二十六才、瞳十九才。兄として表向きは嬉しいが、心の中では、寂しい気持ちが一杯だ。
瞳は大学の卒業を機に結婚する段取りになっている。父さんも洋二さんのお父さんも仕事も絡んでお互いの家の益々の発展になると大喜びだ。
婚約の儀は、内輪だけで行われた。場所は、立花物産が所有するホテルのスイートルームを利用した。
瞳の指に婚約指輪が通った時、瞳の喜びは最高潮だったが、俺の心は思い切り沈んだ。可愛い妹が離れていく感じだ。仕方ないとは分かっていてもどうしようもない。
当然、この場所には玲子さんも居る訳で、俺へのアプローチが凄かった。彼女が冗談だろうけど、私達もこうなりたいですねなんて言ったものだから、父さんは俺と早苗の結婚が決まっているのに悪乗りしていた。
洋二さんのお父さんとお母さんは乗り気だった様ようだけど。親に対して一言言いたい気分だ。
婚約の儀が終わり、両方の両親は車で自宅に戻るようなので俺も帰ろうとした時、
「達也さん、今日はもう少しお話しませんか?」
「それは構わないですけど、どこで話します。ここはもう出ないといけないんですよね?」
「達也さん、ここは立花家が所有するホテルです。時間などいくらでもあります。でも残念ながらこの場所は兄と瞳ちゃんが、この後二人で利用する事になっていますので、他に場所を移しましょう」
俺が玲子さんに連れられて来たのは、同じ階の別の部屋。クラス的にはスペリオールだ。スイートまでは行かないが結構な部屋。
「あの玲子さん、ただ話をするだけでこの部屋ですか?」
「もちろんです。ただ話をするだけですよ」
玲子さんがゆっくりと俺に近付いて来て、俺の背中に手を回した。
「達也さん、最近お会いしていなくて寂しかったです。だからお話しましょう。ベッドの上で。ねっ!」
「いやでも…今日は妹の婚約の儀の日だから」
「だから何ですか。私達は縁戚になるんです。もっと親しくしないといけないと思いますよ」
止めさせようとした時に彼女が背伸びして口を塞いで来た。彼女の柔らかい唇は確かに久しぶりだけど…。負けてしまった。
……………。
「今日持っていないですけど」
「大丈夫な日です。遠慮なさらないで」
ふふっ、嬉しい。達也さんと縁戚関係になれた。これも兄と瞳ちゃんのお陰。お二人を理由に今までと違う位会うきっかけが作れる。桐谷さんだけが、達也さんの正妻候補では無いわ。もうあれはリセットよ。
彼に腕の中にいると本当に幸せを感じる。この足の先から頭の芯まで突き抜ける感覚久しぶり、堪らない。
もう桐谷さんや三頭さん達だけにさせない。これからは私の達也さんにするのよ。
婚約の儀が終わったのが午後三時。そして今はもう午後七時だ。もう四時間近くこの部屋にいる。
俺の隣で玲子さんが眠っている。最近は早苗と加奈子さんだけだった。もう玲子さんとは関係を持つことを止めようと思っていた。
そこに妹の瞳と玲子さんの兄洋二さんの婚約というビッグイベントが発生してしまった。本当は俺達の関係には影響がないと思いたかったけど、やはりこうなった。不味いな。
俺達はもうすぐ三年生になる。後二年しかない。玲子さんが俺を諦めてくれる様にするにはどうすればいいんだ。
そっとベッドを出てシャワールームに向かう。音が出ない様にそっとシャワールームに入ると
ガチャ。
振り向くと何も身にまとっていない玲子さんがいた。
「達也さん、狡いです。一緒にシャワーを浴びましょう」
「えっ?」
前はこんな事する人じゃなかったのに。
「達也さん。めっ、ですよ。私だけをベッドにおいて一人でシャワーを浴びるなんて」
「…………」
玲子さんのキャラが変わっている。
二人で静かに?一時間程?シャワーを浴びた後、バスローブを着て部屋に戻った。彼女は頭にタオルを巻いている。
「達也さん、夕飯はどうされます?」
「今日は帰ります。早苗が作って待っています」
「そうですか。残念です。でもこれからは私も達也さんのご飯を作らせて下さい。縁戚ある人間として当然の事と思います」
「いやそれは流石に困ります」
「何が困るんですか。桐谷さんに私もご飯を作る様になると言って頂ければ良いだけです」
「それは言えません。早苗は俺の妻になる人間です。彼女からしても自分が作るのが当たり前と思っています」
「では、私から言います」
「玲子さん。これ以上波風を立てるのは止めて下さい」
「では、言わない代わりに私と会って下さる日を決めて下さい。三頭さんと同じ様に」
「…………」
参ったなあ。予想通りだ。不味い事になった。
その後、玲子さんと少しやり取りをしたが、決着は着かなかった。仕方なしに今日はこのまま帰る事にした。
このまま電車に乗る訳には行かないのでタクシーを利用しようとすると
「達也さん、近くにマンションが有るんです。乗って行って下さい」
「分かりました。ありがとうございます」
まあ、これは断る理由がない。
結局、自分のマンションの部屋に帰ったのは午後九時過ぎ。そして俺の部屋の中では、
「達也遅い!もっと早く帰って来るって言ってたじゃない。何していたの?」
「うん、色々有って」
早苗が俺に近付いて来た。そして抱き着くとゆっくりと顔を上げて
「ねえ、達也。不思議ね。何故達也の体から玲子さんの香水の匂いがするのかしら?」
「ああ、それは、席が近かったからじゃないか」
「達也、本当の事を言いなさい。浮気したでしょ!」
「う、浮気?」
「そう、もう達也は私だけのものよ。三頭さんは棚に上げてあげるけど。達也と私が結婚するまで後二年と少しよ。もう他の女の匂いが付いたら浮気よ」
おい、どうしてこうなった。俺の予想通りになって来たぞ。何とかしないと。
――――――
まだまだ悩める達也です。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価★★★頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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