第121話 立花玲子の思い
私、立花玲子。明日達也さんと会えるそれも一日中。この所は駅で彼を誘って夜二時間位一緒にいれるだけ。
達也さんと体を合せると体中が喜びを感じるけど偶には一緒に映画を見たりお買物したり彼に寄り添いながら公園を一緒に歩いてみたい。もちろんその後もしたいけど。
明日は何を着ていくか迷っています。夏は、どうしてもトップスとスカートかパンツに目が行きますけど、明日は思い切ってキュロットスカートにしますか。でも…。
うーん、迷います。あっ、もうこんな時間早く眠らないと肌荒れの原因。困ったものです。
午前十時、今日は私のマンションに迎えに来て貰う事にしています。
ビーッ。
あっ、彼がマンションの下に来た。直ぐに入り口ドアを開けて、今度はエレベータで私が居る階を押せるようにしないといけません。あっ、その前に中ドアも開かないと。
セキュリティが厳しいのは良いですがこれは面倒です。彼が鍵を持ってくれると嬉しいのですがそんな訳には行きません。はぁ。
ピンポーン。
インタフォンのディスプレイに彼が映っています。直ぐにロックを外して玄関まで行きました。
ガチャ。ガチャ。 ダブルロックです。
「達也さんおはようございます」
いきなり抱き着いてしまいました。彼の体、彼の匂いが堪らなく好きです。
「あの、玲子さん?」
「あっ、ごめんなさい。久しぶりなのでつい」
顔を赤くしながら体から離れた。
「入って下さい」
「ありがとうございます」
玲子さんは、綺麗な花柄のワンピースを着ていた。直ぐに出かけられる様だ。手を引かれてリビングまで行くと
「達也さん、朝の挨拶を」
そう言って俺の体にもう一度抱き着いて目を閉じた。どうしたんだろう玲子さん。仕方なく軽く唇を合すと
目を瞑ったまま
「もう少し」
彼女から強く吸い付いて来た。少しの間そうさせていると彼女から離れて
「ふふっ、充電出来ました。この後はまた後で♡
あっちょっと待って下さい」
彼女はティッシュで俺の唇を拭くと自分の唇にもう一度リップを塗り直した。
「さあ、出かけましょうか」
「今日はどうします?」
「朝一番で上映されている映画を見て、食事をして公園を散歩して、その後は…」
顔を赤くしてもじもじしている。
「分かりましたそうしましょうか」
「はい♡」
この前、早苗と過ごした同じようなシチュだな。まあいいか玲子さんがそれで良いと言うなら。
映画を見た後またSCで昼食を摂るのかと思っていたら
「達也さん、今日はホテルのレストランを予約しています。そこで食事したいと思います」
「えっ、良いんですか」
「はい」
映画館のある方から改札を横目に見てデパートのある方に歩いて行くと見慣れた黒塗りの車が止まっていた。なるほど予定通りか。
後部座席に乗ると運転席には沖田さんが居る。
「沖田、お願いします」
「畏まりました」
加奈子さんもそうだが、どうもこの感覚は慣れない。家の車を使っている瞳に今度どんな気分なのか聞いてみるか。
ホテルに着くと胸に金のプレートを付けたチーフマネージャが直ぐに車のドアの側に来て深くお辞儀をしている。沖田さんが運転席を降りて後部座席のドアを開けた。
「立花様お待ちしておりました」
玲子さんは何も言わずに頷くとチーフマネージャが、
「どうぞこちらへ」
そう言って俺達を先導した。連れて来られたのはホテル内のレストラン。良かった個室で無くて。そう考えていると
「達也さん、ここで食事をした後、お庭を散歩しましょう」
「…………」
なるほど、俺の想像とは全く違ったが、映画を見て食事をして公園で散歩は確かに間違いない。
外でならその後の事は拒否する事も出来たが、ここまでコースをロックされたら仕方ないか。参った。
「達也さん、今日はランチコースを用意しています。足らなかったら仰ってくださいね」
「ありがとうございます」
同じ料理なのに何故か俺の方だけしっかりと量が有った。その後、ホテル内にある庭園に行った。一階のフロアから出れる。
「達也さん、如何ですか。いつもの公園も宜しいですが、ここも良いと思います。この造形は庭園師に作らせたものです。達也さんにはつまらないかも知れませんが私との散歩と思い見ていて下さい」
「…………」
ほんと参ったなあ。ここまで言われ何を拒否すればいいんだ。
「達也さん、あそこの東屋で少し休みましょう」
さっき歩き始めたばかりなのに?
玲子さんは、自分のハンカチでサッと二人の座る所を吹き払うと
「座りましょう」
言い逃れが出来ない。
じっと俺の顔を見ながら
「達也さん、私では駄目ですか。あなたの周りにはとても美しく、常にあなたの事を思いあなたに寄り添うとしている方達が居ます。
私生活においても家柄においても、その…体の関係においてもあなたの側に居たいと思う人が何人もいます。私もその一人です。
でも私にはその人達との不利な条件が一杯有ります。桐谷さんは幼馴染、三頭さんは家柄の繋がりそして本宮さんは運命の繋がり、でも私には何もありません。
私の心が言うんです。いつまでのんびりしているの、達也さんはこのままでは気が付けば私の側からいなくなると。
…そんな事にはなりたくありません。どうすれば私はあの方達のようにあなたの側に、あなたの心の中にいる事が出来るのでしょう」
「…………」
何も答えられない。何と返事をすればいいんだ。まさかここまで思い込んでいたとは。
だけど、この人とはあくまでも大学卒業まで付き合うというだけの事と思っていた。でもそれだけでは済まされないという事か。
だけど、俺にはその答えは…。
「達也さん、お部屋お話しましょう。ここでは日差しが強すぎて」
「そうですか?」
今日は花曇りだが?
今このホテルのスイートルームに居る。
「達也さん、久しぶりです」
そうでもないと思うけど?
「今日は夜まで思い切り…」
………………。
幸せです。彼と一つになっている時のこの頭の先からつま先まで痺れる様な感覚。もっと。
「ふふっ、嬉しいです。達也さんとこうして居られるなんて夢のようです」
「…………」
「本当は、本当は私だけを見ていて欲しいんです。でも無理なのですよね。でしたらせめて三番目でもいいんです。偶にはこうした時間を私に下さい。お願いします」
「玲子さん…」
出来ない相談だ。今日は仕方ないと思う所もあった。だからこうしたけどこれを続ける訳には行かない。
この人がよりいっそう俺に依存してします。それだけは避けなければならない。
「達也さん、心配なんですね。こういう事を続けると私が達也さんに依存するのではないかと。心配はいりません。でも大学卒業までこうして下さい。お願いします」
「…………」
やはりこう言われたか。
「達也さん、もうお話は終わりです」
唇を合わせて来た。
ホテルを出たのは午後七時を過ぎていた。
――――――
うーん、達也苦しい所だけど流されてはいけません。…と思います。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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