第110話 夏休みの宿題は静かにすべき

えーっ、読者の皆様。

なんと41話と42話の間に本来投稿されていたはずの「早苗と一緒にプールにお出かけ」が未投稿のままになっていました。第41-2話として間に差込投稿しました。

ストーリーには影響はないですが、達也と早苗の初期の心模様が描かれています。

お時間有りましたら読んで頂ければ幸いです。


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 夏休み初日、みんなと約束した夏休み宿題会は午前十時に開始という事になった。なったはずだ。昨日までは!!!


 だが、まだ午前八時だと言うのに何故か俺の前には、いや俺のベッドの前には早苗、玲子さん、涼子が正座して座っている。

 

 悪夢だ。多分昨日の約束事が俺の記憶に残り未だに消えないだけだ。だから俺はもう一度目を瞑り……。


「達也、起きて」

「達也さん、もう起きられては」

「達也起きよ」


 まだ、悪夢を見ているんだ。こんな事あるはずがない。耳に聞こえた幻聴を振り払い再度闇の中に入り込もうとすると


「達也起きないとキスするよ」

「そうです達也さんの目覚めの為に唇を」

「達也、良いかな」


「何を言っているの二人共。達也にキスを出来るのは私だけよ」

「桐谷さん、口付けは皆で分けましょう」

「私もそうしたい」

「はあ、何を言っているの?」


 どうも現実らしい。夢では無いのか。ゆっくりと目を擦りながら開けてしっかりとベッドの横を見ると


「えっ??? あのどういう事?ここ俺の部屋だよね?」

「そうよ達也の部屋よ」

「じゃあ、何でこんなに早い時間に三人が」


「私が先に来たのにこの二人も強引に入って来て」

「何を言っているんですか。私は達也さんのお母様からこの部屋に入ってあなたを起こしてあげてと言われたのです」

「達也、私も同じ」


 母さんどういう事考えているんだよ。全く。


「みんなまだ早いけど、起きるから部屋出てリビングで待っていて」

「達也着替え手伝う」

「私もです達也さん」

「私も」


 俺はもう一度枕に頭を倒し込むとタオルケットを顔にかぶせて悪霊退散、南無妙法蓮華経、羊が一匹、羊が二匹…とにかく出て行ってと心の中で念じたが、タオルケットを引っ張られた。


「うわっ!」


 俺、パンツとTシャツだけ。不味い!


「ちょ、ちょっと早苗何する!」

「着替えを手伝うのよ」

「俺、こんな格好だぞ。タオルケット返せ」

「いいじゃない。ここに居る人は皆達也の裸知っているんだから」

「そういう問題じゃない。とにかく出て行ってくれ」


コンコン。


ガチャ。


「朝からうるさいよ。お兄ちゃん。えっ、どうしたのその格好。お姉さん達三人に今から何しようとしているの?酷い!」


ガチャ。


タタタッ。


「お母さーん。お兄ちゃんが早苗お姉ちゃん達にエッチな事しようとしている」



「はぁ、頼むから皆リビングで待っていて」

「達也おはよのキスは」

「達也さん私にも」

「達也私も」


「無い、絶対にしない。みんな頼むから部屋から出て行って」


「達也、じゃあ後でいい」

「涼子ありがとう」

 涼子が部屋を出て行った。


「ちょ、ちょっと待って。達也どういう事?」

「何が?」

「だって今の会話。本宮さんに後でキスするって約束だよね?」

「えっ、俺そんな事言っていない」


「達也さん、私も後で」

 そう言って今度は玲子さんが出て行った。


「何なのよあの二人は!」

「早苗落ち着け。とにかく早苗もリビングに行ってくれ」

「駄目。おはよのキスしないと駄目行かない」

「いやでも…」


 強引に唇を合わせて来た。少しすると

「ふふっ、これでいいの。私は達也の彼女だから。唇拭いてあげる」


 早苗が出て行った後、普段着に着替えたが、一応鏡で唇をチェックすると

「あいつ、わざと」

 端にだけ少し淡い赤い色が着いていた。


「まったく」



 その後しっかりと顔を洗ってリビングに行くと三人がテーブルの周りに別れて座っていた。俺が顔を出すと

「あっ、達也、朝ご飯まだだよね。私用意する」

「達也さん今日は私も」

 あっという間に早苗と玲子さんがリビングから消えた。涼子がじっと俺の顔を見ている。そしてそっと立ち上がると背伸びして俺の首に腕を回して来た。


 チュッ。


「達也ありがと。私はこれでいい。ここで待っているね」

「涼子…」

複雑な心境だ。



 ダイニングに行くと何故か早苗がジャーから俺のお茶碗にご飯を盛り、玲子さんがお椀にお味噌汁を持っている。

 そしてテーブルでは、母さんと瞳がニコニコしながら二人の様子を見ていた。

 いったいどうなっているんだ。


 俺が朝食を取っている間も俺の前に二人で座ってじっと見ている。

「なあ、頼むからリビングに行ってくれ」

「駄目よ。達也の食器は私が洗う」

「いえ、それは私の役目です」


「あらあら、二人共もうしっかり達也のお嫁さんね」

「「はい」」

 

 俺はこの時、皆で夏休みの宿題をやる考えが間違いだったことに気が付いた。もう遅いけど。

 しかし、玲子さんのこの積極性はどうなっているんだ。人が変わった様だ。


 何とか朝食を食べ終わった後、俺の食器は母さんが洗うからという事で二人はリビングに行って貰う事が出来た。


 その姿を見ながら瞳が

「お兄ちゃん、お嫁さん候補多くて大変ね。いっその事、みんな振ったら。私がお兄ちゃんのお嫁さんになってあげるから。そうしたら今の問題一気に片付くよ」

「瞳、余計混乱を生むだけだ」

「そんな事無いと思うけど」

「ところで瞳、夏休みどうするんだ?」

「うん、今日から涼香ちゃんと一緒に夏休みの宿題を図書館で一緒にやる事にしている」

「そうか」

 おれもそっちで宿題したい。



 結局、午前九時半過ぎにリビングで夏休み宿題会は始まった。俺の隣に早苗、テーブルを挟んで前には玲子さん、玲子さんの横には涼子が座っている。


カリカリカリ カリカリカリ


カリカリカリ カリカリカリ


俺の手が止まると

「達也何処が分からないの」

「達也さんどこですか」

 玲子さんがテーブルに身を乗り出してくる。チラッと胸元を見ると第二ボタン外れている。彼女の綺麗な肌が見えて谷間も覗かせている。絶対意図的だ。


「立花さん。私が教えるから身を乗り出さないでよ。わざとでしょ」

「何がですか」

「むーっ」

 第二ボタン外れているなんて言えない。絶対意図的なのに。


「玲子さん、じゃあ俺の横に来ますか?」

「はい♡」


 何故か涼子が俺の前に来た。第二ボタンが外れている。参った。



 午後十二時を過ぎた。俺より遥かに優秀な三人のおかげでストレスなく宿題が進んいく。

 俺の頭に残らない位のスピードで。やっぱりこれでは勉強にならない。


 俺は顔を上げると

「なあ、皆のお陰で宿題が早く解けるのは良いが、全く俺の頭に残らない。だから…」

「「「だから?」」」


「俺一人でやる」

「「「駄目!」」」


「じゃあ、こうしよう。前半五日間俺一人でやる。残りの五日間で遅れている分をフォローしてくれ」

「「「駄目!」」」

「どして?」


「達也、それでは万が一終わらないと言う事もあるから」

「そうですよ達也さん」

「達也私もそう思う」

「じゃあ、どうすればいいんだ!」

 半分投げやりになって来た。


「達也さん、ではこうしましょう。午前十時から午後三時まで午前二時間、午後二時間各々で宿題をした後、振り返りも含めて残り二時間で達也さんの進捗と内容を確認しましょう」

 悔しいけど立花さんの案は正しい。


「達也、私もそれでいいわ」

「達也それで良いと思う」


「でも教えるのは私よ」

「桐谷さん何を言っているんですか。ここは三等分にしましょう。割り切れない分は私が」

「「駄目!」」


「もういい、分かったから。とにかくお昼にするか」

「じゃあ、私お母さんに聞いてくるね」

「達也さん私も」


 二人がダイニングに行ってしまった後


「涼子いいのかこんなんで」

「ふふっ、私は達也の側に居れればいい。それだけ」

 テーブルに身を乗り出して


チュッ。


「ふふふっ、あの二人には内緒ね」

 幸せ。私はこれでいい。あの二人みたいにはなりたくない。でも今日、達也二回もキスを許してくれた。どうしたのかな?私は嬉しいけど。



 なんか早苗と玲子さんが重たくなって来た。涼子が爽やかでいい。キスを二回もさせてしまったが、前みたいな抵抗感が無い。どうしたんだ俺?


――――――


 夏休み宿題会、初日から賑やかです。どうなる事やら。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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