第102話 GWに入りました


 俺立石達也。今日からGWに入った。早速塾のGW特別講習とやらを受けている。右に早苗、左に玲子さん、俺の右後ろに涼子、左後ろに四条院さんが座っている。

 俺の後ろだと前が見えないだろうと涼子に行ったが、俺が見える後ろが良いという事でこの配置になった。


 この講習は午前二枠と午後二枠を三日間行うので全科目やるとかではなく、国語、数学、英語に特化した構成になっている。

 

 そして午後の部が終わると通称自習室という半地下一階のフロアでその日やった内容を復習する事が出来る。但し、声はあまり出せない為、皆自分の分をだけを行っている。


 偶に俺が手を止めていると直ぐに早苗と玲子さんが

「達也、何処が分からないの?」

「達也さん、分からない所は直ぐに聞いて下さい」


という感じで少し悪目立しているが仕方ない。そして午後五時になると帰宅という流れだ。


 塾に入る時に選んだコースが有名国立コースなので、結構教えて貰う内容や問題集のレベルが高い。俺にとっては結構厳しい時が有る。


 本当は楽しい学生ライフを思い描いていただけになぜこうなっているという思いが有る。俺に帰結するところが大きいのだけど。


 そして最後の日、それぞれの科目の講習成果を見るテストが行われた。結果はGW開けに渡されるという事なので少しだけホッとしている。全問解答はしたが、迷う問題が何ヶ所か有ったからだ。




 明日から早苗と加奈子さんに会う。加奈子さんには、GW前に二泊三日の旅行には行けないと言った所、鋭く

「理由は桐谷さんね。私が先に約束したのよ。もう予約もしているから」

と言われたけど


「済みません。でも早苗とも二日会います。前半二日は彼女と会います」

「どうにかならないの?」

「済みません」

「分かったわ」


 こんなやり取りで納得して貰ったが、まあ加奈子さん本人は納得していないんだろうけど、この辺ははっきりとしないと後々問題になる。あくまで早苗が正、加奈子さんは副だ。

 加奈子さんには悪いがその辺ははっきりとして行った方がいい。




 塾の特別講習が終わった翌日、特に早苗とは時間の約束はしていなかったのでいつもの時間で起きるつもりでいた。




 まるで深い海の底から水面に上がって来るようにゆっくりと頭が覚醒していく。

 うんっ、何か暖かくて柔らかい物が俺にくっ付いているけど、どうせ早苗だろうと思って寝ている事にした。ただ以前の事はさせないようにして。




 私桐谷早苗。いま、達也のベッドの中。まだ午前六時半。少し早いけど外はもう十分明るい。達也のお母さんが、喜んで入れてくれた。



 ふふっ、今日も洋服も下着も全部脱いでいる。何も着けない方が彼を思い切り感じる事が出来る。

 本当はこのまま一日していたけど、さすがにそれは出来ないから。朝だけでも体を寄り添っていたい。もちろんいつでもしたい訳じゃない。体が触れているだけでも心の安らぎには十分になる。

 あっ、達也の手が私のお尻に。



「えっ?」

 俺は柔らかすぎる感覚に目を覚ますと


「えへへ、達也おはよ」

「早苗、また…」

「いいでしょ。こうしているだけで幸せなの」

「そ、そうなのか」

 だが、俺の本能の方が目を覚ましてしまう。


「ふふっ、達也こっちは元気になったね」

「こら触るな」

「いいよ。準備出来ているから」

「駄目だ。起きるぞ」

「えーっ、まだ午前七時少し過ぎただけだよ」

「駄目だ。起きる」


 いきなり早苗が毛布を剥がした。

「えっ」

 急いで目を閉じると早苗が俺の目を開けようとしている。

「痛い、痛い。止めてくれ」

「じゃあ、目を開けてよ」

「早苗が洋服着たら開ける」

「良いじゃない。達也が見ても私の体は減らないわ」

「とにかく着ろ」

「達也のケチ」

 何がケチなのかさっぱり分からん?



「達也もういいわよ」


 目を開けると可愛い水色の下着だ。

「おまっ、まだ下着じゃないか」

「良いじゃない。達也だけのものなんだから」

「もう、分かったら早く洋服を着てくれ」

 俺はもう一度目を閉じた。


 ふふふっ、こうして私の魅力を達也の目に焼き付けするんだ。スタイルだけなら三頭さんにだって負けない自信はある。

今日は達也と映画を見て買い物するんだ。




 俺と早苗は朝食を食べた後、早苗はもう一度家に戻った。どうも男には分からない事情があるようだ。


 俺は家で待っていると一時間程して早苗がやって来た。


「達也どうかな?」

 

 彼女は爽やかな春色のワンピースに淡いピンクのローヒールの靴と同色の小さなバッグを持っている。自分の彼女だという事を差し引いてもとても可愛い。


「うん、似合っているぞ。とても可愛い」

「そ、そっかあ、えへへ」


「母さん行って来るね」

 母さんが玄関までやって来て


「あら、早苗ちゃん可愛いわねえ。今日はゆっくりしてきていいのよ。行ってらっしゃい」

「はい、行って来ます」

 早苗が嬉しそうな顔をして返事をした。



「ふふふっ、最近こうして達也と二人だけのデートってしてなかったわね。嬉しいな♡」


 おい、この前の事忘れたのかよ。


「達也何見ようか?」

「この前見たばかりだからなあ」

「あっ、そうだっけ。まあいいじゃない。あれなんかどう?」

 外国の有名な男優がハイジャックされた飛行機を奪い返すアクション物だ。


「ああ、俺はいいぞ」

「じゃあ、決まり」



 映画はしっかりと二時間あった。見終わると

「達也、お昼食べてから買物ね」

「そうだな。何食べる?」

「いつもの所でいいよ」

「〇ックか?偶には良いぞ。他でも」

「うーん、じゃあスパが食べたい」

「分かった」


 俺達は映画館がある所から駅の反対側に行って買い物をする予定のデパートの横にあるSCに入った。


レストランフロアを回りながら、

「うーん、高いよね。ここ」

「仕方ないだろう。そういう人相手のフロアだから。偶には早苗の好きな所に入って良いだぞ」

「でもーっ、うーん…分かった。じゃああのお店に入ろうか」


 早苗が指を差したのは、少し高めのイタリアンレストランだ。今日は一応お財布の中に諭吉さんが何枚か入っている。大丈夫だろう。


「ああ、いいぞ」


 俺達がお店に入ろうとすると

「あっ、達也あれ」

「えっ?」


 四条院さんが、俺達の知らない人(男)と手を繋いで歩いている。結構なイケメンだ。

「ふーん、彼女の彼かな?」

「早苗、それよりお店に入ろう」

「うん」


 俺達はテーブルに案内されて、メニューを見ながら

「あの男の人誰だったんだろう?」

「早苗、そんなに気になるのか?四条院さんが誰と一緒に居ようが関係無いだろう」

「うーん、そうだけど。気になるなあ」



 私四条院明日香。今日は彼と一緒にデパートに買い物に来ている。会う時間が遅かったからその前に食事をしようという事になった。


 彼は、帝都女子学園の時に友達の紹介で知り合った。イケメンだけどチャラそうで体目当て位にしか思っていなかったので、最初相手にしなかったけど半年経ってやっとこちらから手を繋ぐ位の奥手。


 私の事は好きだと言っている割には、キスさえしない。でも性格も悪くない。礼儀も正しいという訳で今に至っている。まあ私に興味無ければ、適当に別れても良いし位の気持ちで付き合っている。


 さっき達也と桐谷さんがイタリアンレストランに入って行った。こっちを見ていたから知られたけど別に困らないから無視した。




 俺達は昼食を摂った後、隣にあるデパートに移動した。

「なあ早苗、買い物する前に聞いておきたいけど、俺が困る様なところじゃないよな?」

「うん、大丈夫、大丈夫。さっ行こう」

 なんか怪しい。



「お前、ここって」

「この前一緒に入ってくれたでしょ。最近サイズが合わなくって。達也に選んで貰いたいの」

「この前は別だ。とにかく今日は絶対に入らない」

「いいじゃない」

 俺の手を引っ張って店の中に連れ込もうとしているが


「絶対に入らない。そこのベンチで待っている」

「えーっ。達也の好きな下着付けたいの」

「駄目だ。絶対に駄目だ」

「じゃあ、入らなくていいけど、この後事私の好きにしていい?」

 なんか、このパターン多いよな。


「わ、分かった」


 ふふっ、達也が入らない事位分かっている。この前は達也から一緒に入ってくれたけど。それにこの後は…。



 買い物が終わった後、試着したいからと…。



 ふふっ、嬉しいな。一日中達也と一緒。それにこういうとこ初めてだけど…。いいかも。



 俺達が家に帰ったのは、午後七時を過ぎていた。


――――――


 達也の心の中で早苗が一番だとしっかりと考え始めたのは良い事ですね。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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