第101話 四条院明日香のテニス騒動
「玲子、女子テニス部復活させよ。私テニスしたいから」
女子テニス同好会の子達から現状を聞いた四条院明日香が発したとんでもない発言。
玲子さん本人だけでなく、俺も早苗も驚いた。
「明日香、簡単に言わない。早々に女子テニス部を復活させるなんて出来る訳ないでしょう」
「玲子、それはどうかな。今練習している子達は、過去の件に関しては全く関係ない子達よ。取敢えずどの先生に言うかも有るけど、男子テニス部の子達はどう思っているのか聞いてみてからでも良いんじゃない」
そう言うと彼女はいきなり男子テニス部員に声を掛けた。
「ねえ、部長って誰?」
「えっ、えーと。あなたは?」
「私は四条院明日香。この前この学校に転校して来たばかりよ」
その男の子が、練習中の他の子に声を掛けた。その子がじっと四条院さんを見た後、こちらに歩いて来て
「俺、南部和人って言います。今部長不在なので代理しています」
「クラスは?」
南部は迷惑そうな顔で
「あの何の用事でしょうか。いま練習中なんですけど」
「私女子テニス部を復活させたいんだけど男子テニス部の子達はどう思っているか聞きたいんだけど」
「…今度にして貰えます。今練習中なので。俺二年A組です。じゃあ」
「明日香、もう帰りましょう。皆さん迷惑がってますよ」
「そうね。また今度にするわ」
俺立石達也。四条院さん凄いわ。相手を考えない行動力というか、無茶と言うか。あんまり波風立てないで欲しいのだが。
その日は、いつも通り、駅で四条院さんと別れ、マンションの前で玲子さんと別れ、早苗と二人きりで家に向っている。
「達也、あの四条院って人、結構静かな池に石投げ込むタイプだね」
「ああ、流石にあれは俺も驚いた。女子テニス部を復活させるのは反対じゃないが、結構強引そうな気もする。ちょっと心配だな」
「どちらにしろGW明けでしょ。もう日にち無いし。それより達也、GWは何しようか。私、映画見て、買い物して、公園散歩して、あれしたい」
おい、まだ予定決まっていないぞ。
「塾は前半三日間だからな。大丈夫じゃないか?」
「えっ、四日間全部いいの?」
「前半二日だけだ」
「…後半二日はあの人なの?」
「早苗…」
本当は加奈子さんは二泊三日の旅行に行きたい様だが、早苗の事を考えると一泊二日にして貰おう。でもまだ話していないし、面倒そうだな。でも仕方ない早苗だけ一日にする訳にはいかない。
「頭では理解できても、心が理解出来ない。分かっているんだけど…」
俺は何も言い返せずに早苗が彼女の家の玄関に入って行くのを見届けてから家に帰った。
私桐谷早苗。達也と三頭さんの事、もう仕方ない事だと頭では分かっている。達也も私を大事にしてくれているのは良く分かるし。
でも彼が三頭さんとしている事を想像するととても我慢出来ない。慣れるしかないのかな。でも一生だよ。
簡単に割り切れる何かいい方法無いのかな?彼女と一度話してみようかな。どうなんだろう。
翌日もいつもと変りなく早苗、玲子さん、涼子それに四条院さんという五人で学校に向かった。四条院さんを見慣れていない子は多く、俺達いや俺への妬み、嫉妬の視線が凄い。一人で登校出来ないものかな。
午前中の授業が終わり、昼休みになりいつもの様に七人でお昼ご飯を食べていると四条院さんが
「玲子、お昼休みちょっと付き合ってくれない?」
「何処にですか?」
「2Aの南部和人って子に会いに行くから」
「「「えっ!」」」
俺、早苗、玲子さん、涼子以外にも健司と小松原さんも驚いた。涼子がもう少しで箸を落としそうになっている。
「明日香、急に何を言いだすの。あなたは昔から走り始めると止まらないわね。でも今回はもう少しゆっくりとで良いんじゃない」
「駄目よ。昨日彼に印象付けたんだから一気に畳み込まないと」
「明日香、戦いではないのです。それに事情は話してあるでしょう。急がずに事を進めては?」
「玲子が一緒に行かないなら達也一緒に行って?」
おい、俺に振るな!
「四条院さん、俺は行かないよ」
ここで南部和人に会うのはあまりにも愚策だ。
「じゃあ、一人で行くわ」
「仕方ありませんね。私も行きます。一人で行かせるとどうなるか心配ですから」
「玲子、ありがとう。でも後ろの言葉酷いんじゃない」
「いつもの事でしょう」
「…………」
玲子さんと四条院さんは昼食が終わると二人で教室を出て行った。
「達也、大丈夫かな?」
「俺には分からん」
私四条院明日香。女子テニス部を復活させる前に男子テニス部員達がその事をどう思っているか聞いておく必要がある。立ち上げた後に男子と女子がぎくしゃくしても仕方ない。
「あっ、ここ2Aだ。ねえ、君南部和人って子いる?」
入口に居た男子にいきなり明日香が声を掛けた。声を掛けられた男の子が驚いている。身長が自分と同じ位で腰まである長い黒髪の飛び切りかわいい子だ。分からない事も無いけど。
「あ、あのちょっと待って下さい。南部、お前を訪ねて来た人がいるぞ」
その声で教室にいる生徒が一斉にこっちを見た。
「「「おおーっ!、凄い美人とカワイ子ちゃんだ」
「おい、上級生だぞ」
「南部、お前いつから上級生とハーレムしてんだよ」
「いや、俺は…」
俺南部和人、昨日部活の練習中にいきなり声を掛けて来た人だ。徽章で三年ってわかるけどいったいなんの様なんだ。
「いきなり何ですか?」
「ちょっと良いかな」
仕方なく先輩二人に付いて行くと後ろから冷やかしの声が飛んでいる。後で覚えているよ。
校舎裏の花壇の側に連れて来られた。
「ねえ、時間無いから直ぐ聞くけど。あなた女子テニスの子達をどう思っているの?」
「どうって。なんでそんな事聞くんですか?」
「私、女子テニス部を復活させたいのよ。でも男子がその事どう思うか気になるでしょ」
「そういう事ですか。俺達は女子テニス部が無くなった時、まだ高校一年でしたし、細かい事もほとんど知りません。でも俺達が口出しする事じゃないから黙っているだけです」
「女子テニス部が復活する事はどう思っているの?」
「そんな事出来るんですか?俺達は女子達を見て可哀想だとは思っていますが、さっき言ったように俺達ではどうにも出来ません。
でも女子が復活するのに反対している部員は居ないですよ。今だって出来ればコート使わせてあげたいと思っている男子多いですから。でもそんな事したら俺達が叱られますからね」
「そう、それだけ聞けば十分だわ。ありがとう」
「あの、もし女子テニス部復活したら本宮涼子さん戻ってきますかね?」
「さあ、知らないわ。それに彼女三年だし」
「そうですか。そうですよね。もう失礼して良いですか?」
「良いわよ、ありがとう」
南部君が教室に戻って行く姿を見ながら
「玲子、あの子良い子だね。結構簡単に女子テニス部復活できるかもしれない」
「安易に判断は出来ませんが、復活させる事に部員レベルの障害はなさそうですね」
「GW開けに頑張りますか。玲子協力して」
「嫌です。明日香だけでやりなさい」
「えーっ。良いじゃない。それより玲子GWはどうするの?」
「達也さんと会いたいですが、残念ながら実家に帰ります。両親が心配していますから」
「流石、立花家のお嬢様」
「ふふっ、達也さんとはまだ五年あります。私に振向かせる時間はまだ十分あります」
――――――
四条院さん、凄いですね。でも南部君中々いい子では。
皆さん色々と考えています。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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