第97話 達也の塾問題


 今日も早苗と駅まで一緒に歩いている。


「なあ、早苗」

「なに?」

「お前は必要ないかもしれないけど…。俺大学に行くにはちょっと学力足らない気がして。だから塾に行こうと思っているんだけど」

「えっ?達也の学力が足らないって。何言っているの学年二位でしょ」

「いやあれは早苗達が出題予想をしていてくれたから。実際に俺の力だけだと三十位にも入らないんじゃないかと思ってさ」


「うーん、そんな事無いと思うけど。だって私や立花さんの話している事を理解出来てそれが考査に反映出来ているって事は、ベースがしっかり出来ているって事だから」

 なんか加奈子さんと同じ事を言っている様な?


「でもベースだけじゃ、大学は受からないだろう」

「まあ、それはそうだけど。ねえこの話誰かにした?」

「いや、早苗が初めてだけど」

「じゃあ、立花さんには言わないでね。本宮さんにももちろんだけど」

「なんで?」


「達也が塾に行くって言ったら他の人も絶対私も一緒に行くって言うから。達也と塾に一緒に行くのは私だけだから」

「えっ、でも早苗も玲子さんも塾なんて行く必要ないだろう。俺だけで良いんじゃないか?」

「良いの。達也が塾にいくなら私も行く」

 そうすれば少しでも達也と二人きりで居れる。駅が近づいて来た。


「達也、玲子さんには行ったら駄目だからね!」

「わ、分かった」

 なんか早苗怖い。



 駅の改札に着くと

「達也さん、桐谷さん。おはようございます」

「おはよう玲子さん」

「立花さんおはよう」


 三人で電車に乗ると二つ目の駅で涼子が乗って来た。涼香ちゃんは瞳と一緒に登校している様だ。

 いつもの様に早苗の隣に立って挨拶をして来た。



 俺達は学校の最寄りの駅について改札を出て学校に向かう。このまま静かに学校に着くと思っていたが、

「玲子、達也、桐谷さんおはよう」


 いきなり後ろから四条院さんの声が聞こえて俺達の前に来た。

「おはようございます。明日香」

「おはよう四条院さん」

「ねえ達也、私も名前で呼んでよ明日香って」

「…………」

 昨日転校して来たばかりで何言っているんだ。この人は?


「明日香、いきなり何を言っているのですか。登校中ですよ。退きなさい」

「えーっ、玲子は私の味方じゃないの?」

「それとこれとは違います。早く行かないと遅刻しますよ」

「つまんないの。達也いずれは呼んでよね」

「…………」



 結局五人で登校。四条院さんは背が高くスタイルも抜群の為、彼女を知らない他の生徒から思い切り注目されている。


「なあ、あんな子うちの学校にいた?」

「さあ、知らねえな。でも凄いなあのスタイル。触ってみたいな」

「ムリムリ。一緒に歩いている男を見てみろ」

「ちぇっ、また立石か。全くあの野郎の所ばっか、良い女が集まってさ」

「諦めて学校へ急ごうぜ」


 酷いとばっちりだ。俺は関係ない。



校門を通って下駄箱で履き替えて教室に行くまででも四条院さんの注目度は凄い。更に早苗や玲子さん、それに涼子までいるんだから、仕方ないとはいえ…。一緒に歩きたくない気分だ。



 午前中の授業を終え、お昼になると

「達也さん、お昼にしましょう」

 俺が振り向くだけで場所が決まってしまう席順になっている。それに健司や小松原さんも一緒になって七人が一緒に食べる状況だ。


「あれ玲子、達也の分まで持って来ているの?」

「はい、今週は私が達也さんのお弁当を作っています。来週は桐谷さんが達也さんのお弁当を作ります」

「えっ、どういう事?」

「そういう事よ明日香。さあお昼にしましょう。達也さん」

 なんかどう見ても玲子さん、最近早苗を相当に意識した発言をしている。どうしたんだ?


「達也食べよ」

 早苗が言って来た。涼子はそれを見て何故か微笑みながら自分のお弁当を広げている。四条院さん、誰が作ったのか分からないが凄い彩のお弁当だ。全体量は少ないが、とても美味しそうに感じる。


「駄目ですよ。達也さん。明日香のお弁当はお手伝いの方が作ってくれていますから」

「へっ?」

 俺、玲子さんの方に顔向けるの止そうかな?


「達也が私の手作りお弁当食べたいなら作って来てもいいわよ」

「明日香、ハンバーグが炭になった事覚えていないのですか?」

「えっ、あれは…なにもここで言わなくても…」

 どうも四条院さんは料理が苦手なようだ。




 昼食が終わった所で、

「明日香、学校の案内が全部済んでいないですよね。今から行きますか?」

「うーん、いいよ。どうせ授業で使う以外の所は行かないだろうし」

「良いのですか?」

「うん、分からなかったら達也に聞く」

「明日香!」

「四条院さん!」


 なんか頭痛いのが一人増えただけの様な…。



「ところで達也さん、塾の事ですけど」

「えっ、なんで立花さんが達也の塾の事知っているの?」

 早苗が俺の顔を見て来た。


「いや、俺は何も…」

「どうしたのですか二人共。私は達也さんの学力補強の為に塾に一緒に行きませんかと誘うとしただけですけど?」

「駄目、塾は私と達也だけで行くの!」


「えっ、それはどういう?」

 早苗、自分で暴露してどうするんだよ。


「あっ、いえ今のは聞かなかった事にして」

「ふふっ、もう遅いです。達也さんの学力を向上させるには私が必要です。達也さん一緒に塾に行きましょうか」

「駄目、私とだけ一緒」


 なんでこうなるんだ。



 私本宮涼子。ふふふっ、いい事を聞いたわ。これで私も一緒に行けば達也といる時間が長くなる。


「あの、桐谷さん、立花さん。私も一緒に行けばお二人が達也を引っ張り合う事は無いと思うのですが」

「それは良い考えです。本宮さん」

「いやよ。なにが良い考えよ。私と達也だけで行くの」

「あら、楽しそう。私も一緒に行くわ」


「「「えっ?!」」」


 その時予鈴が鳴ってしまった。


――――――


 早苗の独占欲(=焼餅)と涼子の中和策に四条院明日香まで乗って来ました。どうなる事やらです。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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