第96話 新学期になりました


この話から達也達は高校三年生になります。


――――――


 俺立石達也。数日前の加奈子さんからの連絡は少しショックだったが、今日までには何とか精神的に落ち着いて来た。


 色々な事を想像すると恐ろしくなるのでなるべく忘れる様にしている。もちろん早苗には何も言っていない。話した時の彼女のショックを考えるととても話す気になれなかった。


 そして今日から俺は、いや俺達は三年生だ。何となく優越感を感じるのは俺だけだろうか。


 顔を洗って一階のダイニングに行くと


「お兄ちゃんおはよ」

 そう言えば妹の瞳も今日から二年生だ。可愛い妹の新しい二年生の制服姿を見ると微笑ましくなってしまった。


「おはよう瞳」

「なにジロジロ見ているの。今更私の魅力に気付いたって訳?」

 はあ、口まで二年生になったな。


「いやいや、妹の成長に喜んでいるだけだ」

「何言っているの一年違うだけでしょ。私先行くね」


 瞳は俺より十五分位家を先に出る。俺と違って駅まではセキュリティが周りの人に気付かれないように後ろから付いて行く。個人的にはもう大丈夫と思うが、そこはやはり女の子だ。父さんも心配なんだろう。



 朝食を終えた俺も新調した三年生用の制服を着て家を出る。気合でもうコートは着ないがやはり少し寒い。

 玄関を出ると早苗が待っていた。彼女はまだスプリングコートを制服の上に着ている。


「おはよ達也」

「早苗おはよ」

「ふふっ、いよいよ三年生だね」


 俺の右手をサッと繋いで一緒に歩き始める。とても新鮮な気分だ。

去年の二年生の新学期の時の事を思い出すと何とも言えない気分だ。そして今回の件、今年も素直には始まらなかったな。


「達也何考えているの?」

「いや、早苗が可愛いなと思ってな」

「私の顔も見てないくせに良く言うわよ。でも許してあげる。ふふふっ」

 握っている手をにぎにぎして来た。


 玲子さんのマンションを通り過ぎて駅の改札に着くと彼女が待っていた。

「達也さん、桐谷さん、おはようございます」

「玲子さんおはよ」

「立花さんおはようございます」


 私立花玲子。今日はお二人共柔らかいお顔をしています。心が落ち着いているのですね。良い事です。

 桐谷さん誘拐未遂事件は、私にも情報が入っていますけど、彼女の顔を見ると達也さんは教えていない様ですね。正解です達也さん。



 二つ隣の駅に着くと本宮さんが乗って来ていつもの様に桐谷さんの隣に立って軽く挨拶をして来た。彼女も落ち着いていますね。良い事です。




 俺達は学校について下駄箱で上履きに履き替えるとさっそく掲示板に張り出されているクラス分け表を見た。


「達也、一緒だよ。良かったあ」

「桐谷さん、三年になると成績順でクラス分けしますから当然です」

「知っているわよそんな事」

 はあ、朝からこれかよ。


「あれ、達也おかしいよ。私達のAクラスだけ三十四人だ。でもBからEクラスまで三十五人だ。何故かな?」

「さあ?」

 良く見ると笠井の名前がない。なるほど。しかしなんでAクラスを三十四人にしたんだ?」


「さあ、達也さん教室に行きましょう」

「ああ」


 教室に着くとほとんどの生徒が来ていた。何か騒いでいる。それを無視して黒板に書いて有る席位置を見ると


 俺が廊下側から三列目、前から四番目なのは良いが、俺の右が早苗、俺の後ろが玲子さん、玲子さんの右隣りが涼子。


 更に玲子さんの後ろが健司で、健司の右横が小松原さんだ。何とも言えない布陣だな。静かだと良いんだが。

 あれっ、何故か玲子さんの左横が空白だ。どうしたんだ?


「ふふっ、た・つ・や。隣同士だね」

「あぁ早苗、良かったよ」

「達也さんの傍にずっと居れるので嬉しいです」

「あぁ玲子さん、良かったですね」

「達也、直ぐ側になったね」

「あぁ涼子、良かったな」


 誰だ、こんな席順作った奴。絞めてやる。

「ふふっ、達也さん。苗字のあいうえお順です。仕方ありません」

 やっぱりこの人、心読めるって本当なのか? それにしても普通出席番号順とかじゃないのか?


 俺の後ろから声が掛かった。

「達也、良かったぜ。またお前の側に座れるよ。あっ、佐紀ちょっと」

「達也、佐紀も三年では一緒だ。仲良くしてくれ」

「立石君、宜しくね」

「小松原さん、こちらこそ宜しく」



 みんなで話をしている内に担任の先生が前の入口から入って来た。


「「「おおーっ!」」」


 なんと!この学校じゃ人気一番の白鳥麗子先生だ。真直ぐに肩まで伸びた黒髪。ピンクの眼鏡を掛け、鼻はスッとして綺麗だ。眼鏡を外せば相当に綺麗と思われる大きな切れ長の目。そしてそれを引き立たせる輪郭。ここまでなら桃坂先生も譲らないだろうが、その立ち姿である。


 上着を着ていても分かるはち切れんばかりの大きな胸、腰はキュッと絞まり、そしてタイトスカートがはち切れるんじゃないかと思う位の大きなお尻。そしてスカートから覗かせるすらっとした足に履いている少しだけピンクのハイヒール。ヒールを履いている所為か百六十五センチは超えていそうだ。これは確かに人気ある訳だ。


 その先生が、

「今日から君達の担任になる白鳥麗子よ。皆始業式が始まるから整列して体育館に行って」


「「「おーっ!」」」


 何故か先生の命令にまで驚嘆の声を上げる男子達。




 始業式は校長先生の有難ーいお話の他にも説明が何点か有った。それを聞き終えた俺達は、ざわざわと廊下を歩き三階まで階段を登り階段のすぐ横にあるAクラスへと入った。



「なあ、転校生が来るって噂があるぜ」

「本当かよ?」

「でも、立花さんの横が空いているじゃないか」

「あれは…うーんそうかもな」


 雑音を無視して早苗達と話をしていると担任の白鳥先生が入って来た。



「静かに!皆さん、転校生を紹介します。入って来て」

 そう言って廊下の方を向いて手招きした。現れたのは身長百七十センチはあり、腰まで伸びる輝く黒髪。前髪は眉毛の上で綺麗にそろえられている。クリっとした大きな目にスッとした鼻。下唇がプルンとしてとても可愛いい。胸は大きく腰は括れていてお尻もしっかりしている。スタイルだけだったら横にいる白鳥先生に引けを取らない。しかし…まさか…。



「「「おーっ!」」」


「すげえ可愛い」

「何て胸の大きさだ」

「背も高いな。あれは百七十センチ超えているぜ」

「うわーっ、友達になりてえ」

「何となく桐谷さんに似てないか?」

「そう言えば」




「はーい。男子静かにして。四条院さん自己紹介して」

「はい、名前は四条院明日香と言います。前の学校は帝都女子学園です。立花玲子さんとは一番のお友達です。皆さん宜しくお願いします」


「おうーっ、あのお嬢様学校から二人もこのクラスに!」

「凄いぜこれは」


「男子、静かに!四条院さん立花さんの横の空いている席に座って」

「はい」



 四条院さんは、こっちに歩いて来て俺の前に立ち止まると

「た・つ・や。あなたを追いかけて転校して来たわよ。もう逃がさないわ」

「っ!」

 こいつなんて事言い出すんだ。


「おい、また立石かよ。許せねえ。不平等禁止法作ろうぜ!」

「「「おーっ!」」」


「玲子来たわよ」

「明日香、いきなり何てこと言うの!」

「だってえ。楽しいそうだから」

「まったくあなたって子は!」


「あれ、さっきのは冗談なのか」

「そのようだ。良かったぜ。でも立花さんの友達なんだ。なんかハードル高そう」


 その声に四条院明日香が振り向いて

「ふふっ、そんな事無いわよ」


「「えーっ!」」


「明日香!」



「そこの男子二人。静かに!」

 白鳥先生がまた怒った。


――――――


 始業式から大変です。しかし四条院さんの行動力に負けそう。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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