第93話 春休みは静かにしたいその二
話の最後に大事なお知らせがございます。
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次の日の日曜日。今日は朝から瞳と一緒に爺ちゃんの所で稽古だ。空手、棒術の型と組手を行った。集中できる。やっぱり俺はこれが向いている。
最近瞳の奴、技に切れが出て来た。一緒にやっている相手に綺麗に技を繰り出している。これなら変な奴らに声を掛けられても相手の事を心配するだけで良い様だ。
身長も百六十五センチは超えているんじゃないか。早苗や玲子さんよりも大きい。まあ、爺ちゃんも父さんも俺も百八十センチは超えている。瞳が百七十以上になってもおかしくないが、女の子としてはどうなんだろう?
午後一時には加奈子さんと会う事になっている。この事は早苗も玲子さんも知っている。二人共渋々の承知だが、早苗にはしっかりと言い聞かせている。
玲子さんの心の中は分からない。平然と受け止めているどう思っているんだろう。
午後一時、加奈子さんの自宅のある駅でいつもの様に待った。あっ、加奈子さんが駅前の交差点の所に来た。いつもながら綺麗だ。男女区別なく周りの人がチラチラと見ているのが分かる。
「達也待ったあ」
「いえ、いつも通りです」
「ふふっ、今日は私の家に行こうか」
「いいんですか?」
「当たり前よ。三頭家に取っても達也は大切な人間よ。何を遠慮しているの?」
「…………」
………………。
嬉しい、達也と一つになると頭の先から足の先まで痺れる様に幸せを感じる。堪らない。
達也の子供が欲しいけどそれは後四年待つだけ。それまで思い切り彼と楽しむ。一緒に旅行も行きたい。
ふふふっ、堪らなく嬉しい。
達也が目を閉じている。彼は朝稽古だから少し疲れているのかしら。それとも…。
あっ、目を開けた。
「あっ、済みません。眠ってしまいました」
「いいのよ達也。またして」
もう抜け出せない。ううん、抜け出さなくても良いんだ。
「加奈子さん、もう五時です」
「いいのよ。達也、正式にあなたとの関係が決まった以上時間は気にしなくて良いわ。そうだ。夕飯作ってあげようか」
「いや、流石にそれは」
「いいじゃない。お父様もお爺様もいないわ。今の時期お仕事が忙しいから。でもその前に、もう一回ね」
ふふふっ、これでまた一週間頑張れる。
「達也、そう言えば大学の事だけど、私と同じ大学に来るのよね?」
「はい、希望はしていますが、俺の学力では全然届かない事が分かりました。なので他の国公立も考えています」
「駄目よ。同じ大学に来て。塾に行けばいいじゃない。達也はあの高校でトップスリーに入っているんだから問題ないよ」
「いやあれは…」
俺はあの三人が考査で出る問題を予想して教えてくれていたので偶々出来ただけだと説明すると
「達也、それが理解出来て応用になる考査の問題を解けるという事はベースは出来ているわ。後は試験問題の経験値だけよ。大学の試験なんて過去問からがほとんどよ。あれが問題なければ、あそこの大学なんて簡単よ。
もちろん、その後ハーバード大かコロンビア大の院に一緒に行ってもいいわよ」
「いや流石にそれは止めておきます。目の前だけでも大変なので」
なんて事言うんだこの人。俺そんなに勉強したくない。
その後、流石に加奈子さんの手作りの料理を頂くのは止めておいた。帰れなくなる可能性もある。
加奈子さんには、また家の最寄りの駅まで送って貰い、車が見えなくなるまで見送った。家に歩いて帰ろうとした時、
「達也さん」
「えっ?玲子さん。どうしてここに?それにもう午後八時ですよ」
「ふふふっ、そんな事良いではないですか。それより私の部屋に寄って行きませんか?」
「で、でもこんなに遅い時間は失礼ですから。また明日にでも」
「午後八時は遅い時間ですか?ここから達也さんのおうちまで十分も掛かりません。二時間位良いではないですか」
「え、えーとそれでも…」
玲子さんが俺の腕をぎゅっと掴んで来た。なんか柔らかい物が…。
「達也さん、三頭さんでお疲れなのでしょう。私の所で休んで行かれれば良いではないですか」
なんか、段々玲子さんの顔が妖麗な顔に見えて来た。
「れ、玲子さん。今日はやっぱりやめます。明日にしましょう」
「えーっ、でも。偶には私の事も…。三頭さんと早苗さんばかり狡いです」
「へっ?」
この人まさか? それって休むどころか俺がもっと疲れる事に…。
「あの、やっぱり帰ります。帰ったら電話しますからそれで勘弁して下さい」
「仕方ないですね。帰られましたら必ずお電話下さいね。後明日必ず会って下さいね」
「わ、分かりました」
ふう、何とか玲子さんの魔の手?から逃れる事が出来たようだ。しかし、玲子さん本当に今年になってから凄い積極的だ。あれが彼女の本性?うーん、分からない。
私立花玲子。せっかくセキュリティを使って三頭さんの動きを捉えていたのに。仕方ないです。でも流石に二人で話をしたいです。あれもして貰いたいです。
「玲子お嬢様、寒いのでそろそろお入りを」
「分かったわ」
俺は家に帰った後、お腹を先に満たした後、直ぐに風呂に入った。最近は妹の瞳が玄関に迎えに来てもじーっと見た後、自分の部屋に行ってしまう。
前のように一言二言言わなくなった。そう言えば早苗と会った時はニコニコしているのだが…。やはり女の子という生き物は俺にとって未知の生命体だ。
風呂から戻り自分の部屋で少し落ち着いた後、玲子さんに電話をした。
ブルル。
あっ、達也さんだ。
『もしもし玲子です』
『立石です』
『達也さん、今日帰られたのは残念ですが仕方ありません。明日は朝から私と会って下さいませんか?』
『えっと、友達としてですよね』
『はい、もちろんです。明日は二人で映画とか見てみたいです』
『そうですか。分かりました。あの一応早苗にはこの事言っておきますけど良いですよね』
なんでですかと言いたいところですが、仕方ない事です。これが達也さんの良い所でもありますから。
『はい、もちろんです。明日はデパートのある駅の改札に午前十一時で宜しいですか。昼食を摂った後、映画を見たいと思っています』
『分かりました。では明日午前十一時に』
『はい楽しみにしています』
私は、達也さんとの電話を切った後、桐谷さん対策を考えた。あの人は必ず後を付いてくる。上手く巻いてしまいましょう。
俺は、玲子さんとの電話を切った後、早苗に電話を入れた。
ブルル。
あっ達也からだ。何だろうこんな時間に?
『早苗、俺だ』
『達也どうしたの。こんな時間に?』
『…ちょっと言いづらいんだが、明日玲子さんと映画を見る事になった』
『えーっ、ぜっーたいに駄目。駄目駄目。なんであの人と二人で映画に行くの。どうしてもと言うなら私も一緒に行く』
これは困ったぞ。流石に三人は一昨日のゲームセンターと同じになる。
『早苗、ちょっと我慢してくれ。その代わり明後日はお前と一日過ごすから』
『…ほんと、本当に私と朝から寝るまで一緒に居てくれるのね』
おい、また過大要求になっている。
『分かった。早苗の言う通りにする』
『後達也。…後ぜーったいに玲子さんとしないでね。あの人結構好きに見える。女の感だけど』
いや、お前のが凄いと思うよ。
『分かっている。あくまで友達として会うだけだ』
『何時に会うの?』
『デパートの有る駅の改札に午前十一時だ。…まさか駄目だぞ』
『行かないから安心して。じゃあね達也おやすみなさい』
『ああ、お休み早苗』
――――――
玲子さん積極的ですが、早苗の最後の言葉、気になります。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
以下近況ノートにも記載しています。
「寝取られた元カノ?、知らない許嫁、陽キャな幼馴染も皆要らない。俺の望みは平穏な高校生活だ!」を読んで頂いている読者の皆様大変ありがとうございます。
また多くのご感想誤字脱字の指摘も頂き、大変嬉しく思っています。
実は来週(9/18の週)から大学に行ってお手伝いをする事になりました。
前々からお話が有って在宅でもお手伝いしていましたが、週三日程大学にも行く必要が出て来ました。
お世話になった教授からの依頼なので断れず…。
この作品6/16の投稿開始から毎日投稿しており最後まで毎日投稿するつもりだったのですが、予約投稿をしている9/23分以降、投稿がランダムになると思います。ご感想の返事もその日の内にと言う訳にはいかなくなります。
手前勝手な理由でございますが、ご理解を頂ければ幸いです。
宜しくお願いします。
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