第90話 春休みはもうすぐその二


「達也、お父様はお元気?あの時、偶々私が悪戯にセキュリティを巻いて駅の脇道に行ってしまった時、男の人二人がいきなり私を連れて行こうとした。


 抵抗も出来なく車に乗せられようとした時、貴方がいきなり、男の背中に蹴りを入れて怯んだ隙に私を車から出して、男二人相手に戦い始めた。


 でも私のセキュリティが直ぐに駆けつけてくれて、その男達は逃げてしまったけど。直ぐに行ってしまおうとしたあなたの手を取って、嫌がるあなたから名前だけ聞き出した。

「俺は立石達也だ。もういいだろう」そう言ってどこかに行ってしまったけど。


 あの時の事は、今でも忘れていないわ。その後私はお父様に厳しくしかられたけど、あなたの事は直ぐに分かったみたいで、あなたの家にお礼に行った。


 覚えて無いかしら。でもまさか玲子が好きになった相手があなたとは。玲子から写真を見せられた時は分からなかったけど、名前を聞いて驚いたわ」


「だから何なのよ。今更達也の事思い出したからって近寄らないでよ。それに助けて貰ったのはあなただけじゃないわ。私は達也に一杯助けて貰っている。玲子さんだってそうよ」


「ふふふっ、桐谷さんだっけ。そんなに熱くならないで。私は達也が懐かしくなっただけ。それに今時、彼女が居たからって友達と会うのは自然な事よ。それが女性だって事だけじゃない。

 私も彼がいるけど、達也とデートしたって構わないわ」


「いい加減にして。達也はあなたなんかとデートは絶対にしない。もういいでしょ。達也帰ろ」

「そうだな。四条院さん、今回は玲子さんのお願いだったので会う事にしたけど、どうも玲子さんとあなたでは会う目的が違ったようだ。俺達は帰る」

「あっ、待って達也さん」


 玲子さんの声を無視して俺達の分だけの会計を済ませて喫茶店を出た。俺も不愉快だった。


「達也、あんな友達がいる立花さんとは口も聞かないでよ。お昼も無し。本当に頭に来た」

「早苗落ち着け。玲子さんの肩を持つ訳じゃないけど、玲子さんもあの子の言葉には驚いていた。決して本意じゃないだろう。あの子が悪いからって玲子さんまで悪く言うのは止めろ」

「…その通りだけど頭に来ている。達也を馬鹿にして、その上私はあなたを知っているのよって。何よあれ。人を馬鹿にしているわ」

 駄目だ。早苗完全に怒っている。このまま帰るか。




その頃喫茶店では、

「明日香どういうつもり。それに達也さんと知合いだったなんて知らなかった。なんで教えてくれなかったの?」

「ごめんごめん。立石君の彼女がどう反応するか見たかったの。先に玲子にこの事教えていたら、上手くいかないじゃない。

 立石君の彼女桐谷さんだっけ、あの子目の前の事で簡単に頭に来るタイプでしょ。それに思い切り焼き餅焼き。ちょっと冷静になれば分かる事も見えなくなる。あんな子どうにでもなるわ」


「明日香どういう事?」

「立石君は優しい。だからそれを利用する。私が彼に近付くわ。少しやりすぎな位にね。それをわざと桐谷さんにバレる様にする。

そうすればあの子は見境なく怒る。今日の話はその布石よ。一時桐谷さんが彼から離れている間に玲子が彼の心にぐっと入り込めばいいじゃない」


「でもどうやって」

「ふふふっ、私も貴方の学校に転校するわ」

「ええーっ。冗談でしょ」

「冗談ではないわ。今の学校面白くない。玲子が居なくなってから特にね。だからそっちに行って残りの高校生活をエンジョイする。今の彼だって私に会いやすくなるだろうし」


「お父様が許さないでしょ」

「大丈夫よ。四条院家だからってお嬢様学校に居なければならない訳じゃないし。それに家は兄が継ぐと決まっているもの」

「駄目よ、そんな事して、もしばれたら私が達也さんの傍に入れなくなる。それに明日香の転校も駄目。これ以上彼の側に女の子を増やしたくない」


「増やしたくないってどういう事?」

「今、彼の周りには桐谷さん以外に三頭さん、本宮さんがいる。私も居る。そこの明日香が加わったらもっと大変な事になる」

「ちょっと、三頭って、あの三頭家。そこの女性ってもしかして三頭加奈子?」

「そうだけど?」


「はーぁ、あの女か。それは不味いわ。あの家には目を付けられたくない。万一有ったら四条院家なんてひとたまりもない。それは駄目だわ」

「ふふっ、分かってくれればいいわ」

「でも転校はしようかな。面白そうだし」

「明日香!」





 俺、立石達也。玲子さんとその友達四条院明日香と喫茶店で別れてからずっと早苗は文句ばかり言っていた。

気持ちは分かるが、今回の件で焼餅焼き癖に拍車が掛かった様だ。明日からがまた大変だ。そう言えば涼子が夜電話すると言っていたな。



俺は早苗を送って行ってと言っても隣だが、家に帰った。

夕飯も終わって風呂にも入り終わった後、自分の部屋で涼子の電話を待っていた。


ブルル。


スマホが震えた。画面を見ると涼子からだ。直ぐに画面をタップすると


『達也、私涼子』

『涼子か、どうしたんだ』

『実は…』

 私は一年生の南部和人いう子に告白されて断ってもしつこく付きまとわれている事を話した。一週間位達也と一緒に帰れなかったのもその子の所為だという事も話した。


『涼子、何か嫌がらせでも受けているのか?』

『ううん、とにかく付き合って欲しいの一点張り。私はあの子の事全然知らないし、付き合う気も無いんだけどしつこくて』

『それで俺にどうにかしろって訳か?』

『うん。私ではどうにもならなくて』

『しかし、俺ではどうする事も出来ないぞ。ストーカーとかされている訳ではないんだろ?』

『うん、変な事はされていない』


 困ったなあ。俺では解決できる話じゃないんじゃないか。


『達也、お願いが有る。毎日一緒に帰って。それとあの子からまた声掛けられたら側に来て。そうすればあの子が諦めてくれるかもしれない』

『うーん、毎日一緒に帰るのは良いけど、涼子が声を掛けられた時、一緒に居ろというのは難しい』

『でも達也しか頼れる人がいない』


 どうすればいいんだ。俺には解決出来そうにないんだが。



『そうだ。涼子、涼香ちゃんにその南部和人という子の事聞いてみれば良いじゃないか。なにか対応方法が見つかるかも知れない』

『達也、妹には聞けないよ。こんな事。それだったら瞳ちゃんから聞けないかな。あの子がどんな子か』


 瞳か、聞いてみるかな。


『分かった。瞳に聞いてみる。今日聞けるか分からないがなるべく早く教える』

『達也ありがとう』

『礼は良いよ。まだ何も分かっていないんだから。それじゃあな』

『あっ、達也待って』

『なんだ?』

『もう少し話していれないかな』

『いいぞ』


 それから俺達は三十分位、春休みや三年になった時の事を話してから電話を切った。もう午後十一時だ。瞳から南部和人の事を聞くのは明日にしよう。


――――――


 これ以上達也の周りに女性が増えるのは問題です。話題が多すぎて書く方も大変です!

 しかし、涼子も難しい問題を達也に頼ってきましたね。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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