第89話 春休みはもうすぐ
学年末考査が行われた翌週の水曜日に結果の発表が有った。
一位 立花玲子
同一位 桐谷早苗
二位 本宮涼子
同二位 立石達也
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五位 高頭健司
六位 小松原佐紀
「流石立花さん、一学期から一位の座を譲らなかったわね。それに桐谷さん。二学期末考査から立花さんと同一位よ。凄いわねえ」
「はぁどうしたら満点なんて取れるの。私なんか二十五位だもの」
「あなたはいいわよ。私は三十二位よ。トップ三十にも載らないんだから」
「でも来年もクラス同じだね」
「うんそれだけは良かった」
「達也さん、二学期末と同じ五点差でしたね。その原因をはっきりさせましょう」
「い、いや俺はこれで十分だから」
実際にこの位置にいるのは玲子さんと早苗の予想問題のお陰だ。独自で勉強していたら三十位にも入れたか分からない。
「そうだよ達也。だから私と毎日一緒にいよ」
「何を言っているんですか。達也さんは友達の私と一緒に居るのが良いんです。彼女のあなたでは甘えが出ます」
「わぁ、また始めたよあの二人」
「年明けてからというか桐谷さんが彼女になってから立花さん積極的よね」
「やはり立石君のカノポジはまだ固まって…。ひっ!」
早苗がおしゃべりしていた二人を睨みつけた。
流石にそこにいると、とばっちりを受けそうなので教室に戻ろうとすると
「達也、もう偶々とは言わないよな。凄いじゃないか」
「健司か。本当に偶々だよ」
「三回続いたら必然だぜ。達也の実力だよ」
「…………」
健司と一緒に教室の方へ歩いて行くと
「達也、並んだね」
嬉しそうな顔で涼子が話して来た。
「涼子、五点差じゃないか。お前も凄いぞ」
「ふふっ達也、私は二番目でいい。達也と一緒がいいの。じゃあまた後でね」
「達也、まさか本宮さんわざと二位を」
「まさかと思いたいけど…」
ほんとこの三人俺の頭と出来が絶対違う。
「達也、来年も楽しそうだな」
「健司勘弁してくれ」
騒がしかった学年末考査も終わり、当面イベントもない。静かな時間を過ごせると思っていたが、二時限目が終わり俺がトイレに行こうとして教室を出ると涼子が出口の外に居た。
「達也、今日の夜電話して良い」
「ああ、いいぞ。電話位俺に確認しなくてもいいから、いつでもかけて来いよ」
「でも、悪いかなと思って」
「そんな事無い。あっちょっと俺行って来たいから」
「うん」
私、本宮涼子。最近一年の子に付きまとわれている。二学期の時に告白された一年生。最初断ったのに、私が好きな相手が立石達也だと言ってしまったのがいけなかった。達也は、早苗さんと付き合っているのが登下校でもはっきりと分かる。
だからあの子が
「立石先輩は他に彼女がいるじゃないですか。俺と付き合って下さい」
と言って諦めてくれない。悪い子じゃないんだけど卒業するまでは達也一人が私の心の中の彼。あの子と付き合う訳にはいかないし、付き合う気もない。
だから達也に相談に乗って貰う事にした。
私立花玲子、今日は水曜日。先延ばしをしていた達也さんに四条院明日香を合わせる日。会っても今の状況が解決出来る訳はないけど、なんかしらのヒントが得られるかもしれない。
もう一つの目的は明日香に桐谷さんを見て貰う事。彼女の弱点を何か掴むことが出来れば、もちろん悪い事をしようというのではなく私が彼女より優位に立てるきっかけをつかむ為。今日は駅で会う約束をしている。
放課後、
「ねえ達也、なんで立花さんの友達とあなたが話をしなくてはいけないの。意味分かんないんだけど」
「早苗だって会う約束したじゃ無ないか」
「私は、立花さんから変な虫でもつけられたら困るから心配で一緒に行くだけよ」
「ふふっ、桐谷さん。別に今日会う人は虫ではありません。私の前の学園のお友達です。達也さんの事を話したらぜひ一度お会いしたいというので、機会を作っただけです。
ですから桐谷さんが同席しても何の問題もありません。むしろお会いして頂いて交遊を広げて貰えればと思っています」
なんかどう見ても怪しい。何考えているんだ、この女。
俺と早苗は玲子さんと一緒にいつもの下校と同じ様に駅に向かった。少し後ろに涼子がいる。
駅の近くに来ると何となくいつもと流れが悪い。少し歩くと理由が分かった。駅の外で一人で立っている女の子を駅を利用する人が歩く速度を緩めて横目で見ているからだ。
上着は薄いグレーのブレザーに金のストライプが襟に沿っている。ポケットの縁取りも同じだ。赤茶系のチェックにプリーツが入ったスカート。白いシャツに赤のリボンそれに金のストライプが入っている。白のハイソックスを履いて足はローファーだ。
百七十センチは有りそうな身長に、腰まで伸びる輝く黒髪。前髪は眉毛の上で綺麗にそろえられている。
クリっとした大きな目にスッとした鼻。下唇がプルンとしてとても可愛いい。胸は大きく腰は括れていてお尻もしっかりしている。これでは目立つ訳だ。
「あっ、玲子」
こちらに早足で来た。
「待った。明日香」
「ううん」
「今日は車?」
「うん、反対側のロータリーに待たせている」
「そうですか。では近くの喫茶店に入りましょうか」
俺達はファミレスや〇ックではなく、老夫婦が経営している静かな喫茶店に入った。
「達也さん、桐谷さん紹介します。こちら四条院明日香さん。帝都女子学園時代の一番のお友達です」
「初めまして四条院明日香です」
「俺は立石達也。玲子さんの友達だ」
「私は桐谷早苗。達也の彼女。立花さんとは友達よ」
私四条院明日香。写真では見ていたけど、玲子目が悪いのかしら。こんな強面ゴリラのどこが良いの。まあ今日は目的だけ達成すればいいわ。しかしあの時と随分顔が変わったわ。
「明日香、達也さんは素敵な方よ」
「ふふっ、いつもながら玲子の人の心を読む力は健全ね」
「「えっ?!」」
「二人共何を驚いているの。玲子は人の顔を見るだけで相手の頭の中が読めるわ。この子の小さい時からの特技よ」
「明日香!余分な事言わなくていいの」
全くなんて事を教えるの。これでは会わせた事がマイナスじゃない。
「ごめんなさいね。今のは冗談よ。ところで立石君、お久しぶりですね。お父様はお元気でいられます?」
「えっ?」
俺はこいつなんか知らないぞ。
「ふふっ、いいわその内思い出すから」
「達也どういう事。この人を知っているの?」
「知る訳が無い。どうして俺が初めて会った人を知っているって言うんだ。四条院さん何でそんな事を言う。俺はあなたの事を知らない。玲子さん、これはどういう事だ」
「達也さん私も初めて聞いたので驚いています。明日香どういう事?」
「そんな事どうでもいいわ。それより今日立石君に会いたかったのは、玲子の事。
この子はね。男なんて汚らわしい位にしか思っていなかったの。ところが玲子のお父様と立石君のお父様の縁であなたと会う事になった。
それを私が聞いた時、彼女の事だから断って帰って来ると思ったら、付き合う事にしたから転校するなんて言い出した。
この子が気に入る程の男だから余程のイケメンかと思って写真を見せて貰ったら…。まさかゴリ…、いえ凄く強面の男。玲子の頭が可笑しくなったのかと思ってしまったわ」
早苗がいきなり立ち上がった。
「ちょっと、いい加減にしなさいよ。大人しく聞いていれば達也の事を馬鹿にしてばかり。達也帰ろ。立花さんもどういうつもりでこんなバカ女に私達を合わせたの?」
「早苗、座れ。とにかく落ち着け。四条院さん、どういうつもりで俺達と会ったのか知らないが、俺達はもう帰る。俺達にとっては無駄な時間の様だ」
「達也さん待って。明日香どういうつもり」
「立石君、いえ達也座ってよ。小学校の時、デパートのある駅で暴漢に襲われそうになった可愛い女の子をあなたは大人二人相手に戦って助けてくれたじゃない」
「えっ!」
俺は頭の中の歴史を必死に巻き戻した。
「俺が助けたのは髪の毛が長い眼鏡を掛けた細くて弱弱しい女の子だ」
四条院という子が鞄の中から眼鏡を出して掛けた。
「あっ!」
「そうよ。これで思い出した。さっ、座って。これからが本当に会う事にした話をするわ」
――――――
どうなってんの?
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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