第69話 二学期も終わりですが
いよいよ後一週間で二学期も終了する。そして終業式の日はなんとクリスマスイブ。
普通なら心ウキウキという所だろうが、俺は大きな問題を抱えている。それは早苗と玲子さんそして涼子との約束もある。当然そこに加奈子さんも入って来るだろう。頭痛がしそうだ。
あの事を約束をした後どうすればいいかなんて考える事自体無責任だと自分では思っている。
まさに安請合いの見本みたいなものだが、あの時の状況を考えると致し方ない所だという考えも出来る。事情を知らない人からは文句の嵐だろうけど。
だが、あの約束をした日から誰からもいつという事を聞いてこない。どう見ても不自然だ。普通に考えれば二十四日クリスマスイブを狙っているんだろう。
でも会えるは一人。だからその前に対応を考えておく必要がある。だがここでまた問題が発生する。
誰が最初で、誰をクリスマスイブにするかだ。
それともイブの日は誰とも会わないなんて策もある。まあ無理だろうが。
ジリジリジリ。
ベッドの上で目が覚めた後、考え込んでいた俺に机の上に有るアラームが午前七時を教えてくれた。
「行って来まーす」
玄関を出ると門には寒そうな顔で早苗が待っていた。
「おはよう達也」
「おはよう早苗」
「なあ、寒いんだから玄関の中に入って待って居るか自分の家で待っていてくれ。お前が風邪引いたら、早苗の両親に会わせる顔が無い」
「良いのよ。私が勝手にしているだけだから」
毎朝繰り返される同じ会話だ。早苗は意地でも門の所で待っていたいらしい。その方が待合わせして登校するという気分になるそうだ。
そんなものなのか?
「ねえ、達也、もうすぐクリスマスだね」
「ああ」
「イブは私と一緒で良いかな?」
やっぱり来たか。
「早苗、その事なんだが…」
「えっ、もう誰かと約束しているの?」
「いやしていない」
「じゃあ良いじゃない」
「…………」
話をしている内に最寄りの駅に着いてしまった。電車に乗れば二つ先で涼子が乗って来る。この会話は出来ないだろう。
二つ先の駅で涼子が乗って来ると
「ねえ、本宮さん、イブはどうするの?」
電車の中でとんでもない事を早苗が涼子に聞いている。
「えっ、どうしたんですか桐谷さん?」
「本宮さん、あなたイブの日に達也と一緒なんて考えている?」
おい、早苗どういうつもりだ。
「いえ、考えておりません。イブは家で家族で過ごそうと思っています」
「えっ?!」
早苗が驚いた。俺も驚く。
「どうかしたんですか桐谷さん?」
「いえ、ごめんなさい。なんでもないわ」
おかしい。私が考え過ぎだったのかな。どういう考えか知らないけど本宮さんはイブに達也と会う気はないらしい。良かった。
私本宮涼子、電車に乗るといきなり桐谷さんがイブの予定を聞いて来た。予想された内容だった。でも私は達也とイブに会う約束はしない。そんな日は他の人達と取合いになる。達也とは別の日にクリスマスを二人で過ごせばいいだけ。
学校のある駅に着くと早苗と涼子は先に降りて学校へ向かった。改札を出ると
「達也さん、おはようございます」
「おはよう玲子さん」
「達也さん、イブはお約束入っています?」
「ええ、まあ」
「そうですか。それではイブの前にお会いする事出来ますか。今日から終業式まで午前授業だけですので昼食も一緒に食べれません。だからどこかの日の午後ご一緒したいのですが」
そう来たか。
「分かりました。日にちは玲子さんに任せます」
「では金曜日では如何でしょうか?」
金曜日は何も入っていない。
「良いですよ」
「ふふっ、そうですか。では楽しみにしています。その日は私と一緒に駅から車で移動しましょう」
「…………」
ふふっ、これであの事については問題なくなったわ。どうせイブは他の人が予定を入れるはず。無理に競い合う必要はない。
俺達は教室に着くと入り口で別れた。自分の席に行くと
「おはよ達也」
「おう、おはよ健司」
「おい、立花さん嬉しそうな顔をしていたが、なんか有ったのか?」
「何も無いが」
チラッと早苗の顔を見ると険しい表情をしている。
一限目が終わった中休み、俺がトイレに行こうと廊下に出ると早苗が
「達也、玲子さんとイブの日の話したの?」
「していない」
「じゃあ…。私と会ってくれる?」
もう大丈夫だろう。
「ああ、良いよ。イブは早苗と過ごすか」
「ほんと!やったー。じゃあ後でね」
不味い早くトイレ行かないと。
早苗のお陰で二限目がギリギリになってしまった。
二限目の中休み、俺は窓から外を見ていると俺の耳元で
「達也、夕方電話して良い?」
「あっ、涼子か。いいぞ」
「じゃあ、後で」
なんか、俺の朝の心配はどこ行ったんだ。だが加奈子さんとははっきりしていない。
午前授業も終わった。図書室も先週木曜日で終わりだ。俺が帰ろうとすると玲子さんが
「達也さん、一緒でいいですか?」
「いいですよ」
早苗を見ると少し不満そうだが、思い切り嫌な顔はしていない。中休みの話が効いているのかな?
下駄箱を出て校門に向っているとテニスコートの一面だけを女子テニス同好会の子達が使っていた。楽しそうな顔をしている。もう一面は空いている。男子は練習していない様だ。
女子テニスが同好会になった理由は分かるが一年の子達には何の関係も無かったはず。苛めの事すら知らなかったはずなのに。
一年生の女の子達の練習を見ていると少し胸が痛んだ。
「達也さん、気にしているんですか。女子テニス」
「…少し、あの子達一年の子達には何の責任も無いんですからね」
「ふふっ、達也さんは優しいですね。確かにその通りですが。でも決まりです。あの子達が本当にテニスを一生懸命練習している姿を見せていれば、努力を見せていれば、またクラブに戻れるでしょう」
「そうなんですか?」
「そうですよ」
俺は家に帰って自分の部屋に行くと早速スマホが震えた。涼子だと思っていると
えっ、加奈子さん。スマホをタップすると
「達也、私。ねえクリスマスの事なんだけど」
やっぱり。
「イブは、どうせあの子達が騒いでいるんでしょう。どう二十五日クリスマスの日に会わない。午前十時、デパートのある駅の改札で」
おっと、いきなり細かく来たな。しかし…。
「良いですよ」
「ふふっ、良かった、ところでイブは誰と会うの?」
「早苗です」
「そう。立花さんとは?」
「金曜日です」
「ふふっ、そうそれは良かったわ。じゃあ二十五日楽しみにしている」
これでいい。予定通りだ。桐谷さんや立花さん、もしかしてだけど本宮さんも私より前に会っていてくれれば、最後は私が全部上書きする事が出来る。
俺は朝の悩みが全く無駄だった事を今知った。なんて事だ。あの分寝ていればよかった。
そんな事を思っていると、またスマホが震えた。今度は涼子からだ。
「達也、私」
「涼子か」
「ねえ、達也、木曜日午後から空いているかな?期末考査一位のご褒美でもあるんだけど」
「木曜日午後?空いているけど」
「じゃあ、会えるかな?」
「ああ良いよ」
「ほんとやったあ。じゃあ、その日は私の家でいい。二人で簡単なクリスマスしたい」
「…………」
「駄目だよね。ごめんなさい」
「涼子いいぞ」
「えっ?!本当にいいの?」
「良いと言った」
「じゃあ、授業が終わったら、私の家のある駅の改札で待合せで良いかな?。達也来るまで改札で待っている」
「分かった」
「じゃあ、木曜日楽しみにしている」
「ああ俺もだ」
涼子との会話が終わった後、頭がパンクした。
木曜に涼子。
金曜日に玲子さん。
土曜日に早苗。
日曜日に加奈子さん。
なんだこれ?誰も交差する日が無かった。あいつら俺の知らない所で打合せでもしていたのか?
しかしこれはこれで問題が出来た。直近で木曜日か。今日は月曜日。四人へのクリスマスプレゼントどうするんだ。明日と明後日しかないぞ。
それに何を買えばいいんだ。全く分からない。そもそも去年まで生まれてこの方クリスマスプレゼントなんて全く縁が無かった。
ここは瞳に頼るか。
――――――
達也、女の子のリスクヘッジ機能は男より高いのです。彼には苦難の日々?が続きます。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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