第70話 クリスマスイブイブイブの木曜日
今日から四日間達也と女の子達のクリスマスイベントが続きます。
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二学期が終わるまで後二日。今日は木曜日。今日は午前中二限だけ授業をした後、大掃除をする日、授業も終わりみんなのんびりしている。
図書室は図書委員である三頭さん、涼香ちゃん、そして俺だ。桃坂先生も顔を出したが、直ぐに戻ってしまった。
三人だと大変と思うかもしれないが、普段から少しずつしているのでそんなに汚れてはいない。普段貸出しの少ない書棚の埃取りとか机を移動して床掃除程度だ。
涼香ちゃんがやたらと俺に手伝いをお願いしてくるが、何故か三頭さんが俺の代りにそれをするという、変な構図で何とか終わらせた。
一通り終わると
「本宮さん、お疲れ様。教室に戻っていいわよ」
「いえ、鍵を掛けるまでいます」
「いいわ、そういう事は私がしておくから」
「でも…」
「さっ、早く教室に戻りなさい」
「はい」
不満顔一杯で涼香ちゃんが教室に戻って行った。涼香ちゃんが完全にいなくなったのを確認すると三頭さんは、図書室の入口を閉めて
「ふふっ達也。二人きりよ」
「…………」
「ねえ、キスして」
「駄目です、校内では絶対にしません」
「良いじゃない。誰もいないんだから。それに裏庭ではしているでしょう」
「それはそれです。絶対に駄目です」
「もう、達也の意気地なし。日曜日覚えてらっしゃい」
何言っているんだこの人。
「とにかく、鍵を閉めて教室に戻りましょう。あまり遅くなると疑われますよ」
「何を疑われるの?」
「…とにかく戻ります」
全くこの人は。
なんとか三頭さんを説き伏せて職員室に鍵を返してから教室に戻ると、ほとんどが終わっていた。
教室に戻ると直ぐに早苗が近づいて来た。
「達也、遅かったわね」
「そうか、普通だろう」
俺の顔をじっと見ながら俺に近付くとスッと離れた。
「ふーん。まあいいわ」
私、桐谷早苗。達也は図書室の掃除に行ったが、図書委員は三人。涼香ちゃんは良いとしても三頭さんは、分からない。
直ぐに確認する為に達也の側に行って、顔を見る振りをして顔を近づけたが、制服や顔から彼女のファンデの匂いはしていなかった。
当たり前だけど、きちんと確認しておかないとあの人は油断出来ない。
放課後になり、下駄箱に行くと
「達也さん、一緒に帰りましょうか」
「いいですよ」
今日は玲子さんと帰る日ではないが、今週だけは授業が午前中だけになっているので、一緒に帰っている。
そう言えば早苗すぐに教室出て行ったな。
駅で玲子さんと別れる時
「達也さん、明日を楽しみにしています」
「はい」
こんな時は、俺も楽しみにしているとか言えばいいのかな?分からん。
俺は家方向に行くホームに行って電車に乗った。家のある駅より二つ前の駅で降りると改札口で涼子が待っていた。少し元気なさそうだ。どうしたんだろうか。
あっ、こっちを見た。
「達也!」
パッと顔が明るくなって俺に近寄って来た。
「どうしたんだ。元気なさそうだったぞ」
「ううん。何でのない。達也が来てくれたから元気出た」
「そうか。良かった」
涼子の家の方に歩きながら
「達也が本当に来てくれるか心配だったんだ。もしかしてこなかったらどうしよう。無理言ったんだし。そう思っていたら…」
「涼子、来ると言ったら何が何でも来る。心配するな」
「うん!」
「達也入って。今日は家族夕方までいないから」
「…分かった」
「達也、鞄(スクールバック)私の部屋に置いてくるから」
「いいよ」
「でも、持って行く」
「分かった」
俺の鞄を持って行ってしまったよ。
直ぐに帰って来ると
「達也、そこに座っていて。直ぐに用意するから」
俺は仕方なしにダイニングテーブルの一つの椅子に座っていると、昨日下ごしらえして有ったのか、冷蔵庫から具材を取出してテキパキと温めたり、盛付けしたりしている。
ローストビーフやスペアリブがルッコラやクレソンの上に乗っている。ボリューム感満載だ。
テーブルの上にあっという間に料理が並んだ。最後に冷蔵庫から可愛いけどメリークリスマスと書かれたプレートが置いてあるホールケーキが出て来た。
「達也、カーテン閉めて」
「ああ」
俺は窓の内側にあるカーテンを閉めると涼子はケーキの上に有るローソクに火をつけて
「座って達也」
「ああ」
「達也メリークリスマス。これ達也に」
いつ用意したのが、小さな箱が彼女の手の上に有った。
「ありがとう涼子。俺の涼子へのプレゼント、鞄の中なんだが」
「ふふっ、じゃあ後で貰うね」
ローソクの火を消してから、カーテンを開けて小さな箱を開けると男物のハンカチが入っていた。端にイニシャルが縫い付けられている。
R.M to T.T
「これって」
「そう、私から達也に。本当は手袋とかマフラーにしたかったんだけど、私が送ったものを達也使う訳にはいかないでしょ。だからハンカチ。イニシャルは見えない様に使って貰えばいいし」
そういう事か。
「涼子、とても嬉しいよ。ありがとう」
「ふふっ、喜んでくれて嬉しい。これ私が昨日から準備した料理なんだ。食べて」
「ああ、頂くよ」
涼子が作ってくれた料理は絶品だった。
「涼子美味しかった。もう入らない」
「本当、嬉しいな。じゃあ食器洗うからちょっと待っていて」
「俺も手伝うよ」
「じゃあ、お皿とコップをキッチンに持って来て」
「分かった」
大きなウサギマークのエプロンが可愛い。普段炊事をしているのか?
涼子は十五分位で洗い終えると
「達也、私の部屋に行こう」
「ああ」
行くという事の意味では覚悟して来ている。
部屋に入ると
「達也、狭いからベッドの上に座っていいよ」
「いや、床で良いよ」
「そう」
「そうだ、プレゼント」
俺は鞄から四角いケースを取り出すと
「これ涼子に」
「嬉しい、開けていい?」
「もちろんだ」
涼子はケースの蓋を開けると
「…達也、これ本当にいいの?」
「ああ」
妹に選んで貰ったなんて言えない。俺も良く分からない。
送ったのは金の揺れのあるイヤリング。あまり大きくないが少し揺れる。涼子の顔に会うと瞳が言っていた。
早速涼子が耳に着けて鏡で見るとパッと笑顔が広がった。
「素敵」
「涼子似合っているぞ」
「う、うん。ありがとう」
嬉しい。私ではこういう物買えないから。
貰ったイヤリングを耳から外すと涼子はそっと俺の前に来た。
「達也、狡いのは分かっている。こんな事お願いしたからって、よりを戻してくれとか絶対に言わない。しつこくお願いもしない。期末考査のご褒美欲しい」
涼子がゆっくりと俺の体にくっ付いて来た。断るのは簡単だ。でも…。
「涼子…」
「達也、してくれればずっと不安だった心が落ち着く。お願い」
私本宮涼子。今狡い事をしている。達也にこんな事お願いするのは筋違い。でもあいつの事を忘れる為には達也に上書きして貰うしかない。最後に残った体の感覚を達也のものにしたい。そうすれば心が落ち着く。
俺立石達也、涼子が抱いてくれと言っている。一度これを許せば、何回も要求してくる可能性がある。それは止めたい。だけど彼女はそんなことしないと言っている。
しかし…。
「涼子、して欲しいのは単に体がそうして欲しいからか?それとも他に意味が有るのか?」
「…達也、ごめんなさい。今のままでは不安なの。私の体は最後があいつになっている。達也が最後でいたい。あなたに抱かれた感触を最後にしていたい。そうすれば心が落ち着く」
「…………」
涼子に口付けされた。俺の体が拒否しない。久しぶりの感触。柔らかくて甘い。
「達也、散歩に行こうか」
「ああ」
俺達は、後三十分位しか持たない夕日を見ながら川べりを散歩した。涼子が思い切り俺の手を握っている。
「達也、ありがとう。とても嬉しい。明日は終業式だね。今度会えるのは正月明けになる。ちょっと寂しいけど…ふふっ、でも十分我慢出来そう」
そう言って俺の方に体を寄せて来た。
「そ、そうか良かったな」
「達也…」
「なんだ?」
「高校卒業まででいい。今の関係を続けて」
「涼子…」
やはりこうなるか。
「涼子、俺はお前の命を救った時から、それは何かの縁だと思って、涼子の生きる為の心の支えになろうと思っている。もちろん出来ても高校生活一杯だろうけど。
だからそれまでに他に好きな人を見つけてくれると嬉しいんだが」
「…分かった。じゃあ好きな人が見つかるまでは今のままでいい?」
高校生活の中で見つかるはずないよ。私の心の中は達也だけだから。そんな事大学行ってからでいい。
「ああ、良いけど。彼氏見つける努力はしろよ」
「うん、するする」
そう言って俺の腕を思い切り掴んで来た。する気ないだろう!
――――――
涼子にとっては確かに不安な心を落ち着かせる方法だったんですね。
でもはっきり達也言いましたね。彼氏見つけろって。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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