第67話 期末考査とその後で


 週が明けて期末考査まで後一週間、全ての部活は休みになる。そして図書室はほぼ満室だ。

 玲子さん、早苗、涼子、涼香ちゃんや瞳、珍しく健司や小松原さんや三頭さんもいる。

もっとも三頭さんは月火と図書室担当なのでいるんだけど。


更に男子生徒が一杯だ。なんか凄い状況になっている。この面子だと帰りが大変そうなので早めに下校する事にした。


周りに気付かない様に静かに出る、十一月も終わりの所為か、ちょっとトイレに寄って行く気分になった。まだ下校時間まで十分にある。まあ大丈夫だろうと思ってトイレに寄った後、下駄箱に行くと……。甘かった。


 彼女達の視線に合わない様になるべく下を見ながら靴を履き替えて。そっと…。


「まって、達也」

「達也さん」

「達也」

「…」


「あの、俺今日は一人で帰りたいんですけど」


 何故か、皆俺の言う事を聞いてくれた。でも俺の後ろを四人が位置を少しずつ変えながら後ろを付いてくる。俺を先頭にした美女行列だ。周りの人が何だと言う顔をしている。


 気まずく思いながらもなんとか駅まで着いた。三頭さんと玲子さんはここで別れるけど早苗と涼子は俺と一緒だ。


 電車に乗っても早苗も涼子も何も言わない。この子達何考えているんだろう。

やがて涼子が

「達也、また明日」

「ああ」

 涼子が笑顔で手を振りながら降りて行った。周りの人が彼女をチラチラ見ている。確かに最近付き合い始めた頃より可愛くなった感じだ。


「本宮さん、前より可愛くなったわね。気持ちが吹っ切れたからなんでしょうけど」

「まあ、いいじゃないか。心の枷が取れたんだ。良い事だよ」

「良くない」

「えっ?」


「本宮さん、明らかに元カノの元を取ろうとしている」

「早苗、それは無いと思う。涼子もその気は無いと口ではっきり言っている訳ではないけど分かる」


「あら、随分心を通わせているのね。ふん」

「早苗、変な方向に焼き餅焼くな」

「じゃあ、期末考査終わったら証拠見せてよ」

「だから、前向きに考えるから」

「…………」


 早苗が自分の家の玄関に入るのを確認して俺も自分で戻った。何とかしないと本当に不味い事になる。どうしたものか。



 そうは考えたが、火金は涼子が作った予想問題、土日は早苗と玲子さんが作った予想問題を解いた。この三人、俺の頭とレベル違い過ぎ。俺こんな事出来ない。




 そして迎えた期末考査は木金と翌週月火と土日を挟んで四日間に渡って行われた。そして結果はその更に翌週の月曜日発表された。


結果は凄い事になっていた。


一位 立花玲子

同一位 本宮涼子

同一位 桐谷早苗

二位 立石達也

四位 小松原佐紀

五位 高頭健司


 結果を見に来た生徒達も唖然としていた。


「一位満点が三人もいる。どうなっているんだ」

「凄いわ。立花さんはずっとだけど桐谷さんに本宮さんまで」

「でも三人共立石さんの…」

「だよね…。カノポジでも争っているのかな?」

「期末考査の点数で。ありえないでしょう。…いやあり得るかも」


 雑音を無視して俺は結果に驚いていた。満点は取れなかったが五点差で二位だ。やっぱりあの三人に教えて貰うとこうなるのか。


「達也、どうしたんだ。中間もそうだったけど。期末は一段と凄いじゃないか」

「健司か、偶々だよ」

「中間の時も同じ事言っていたぜ。でも凄いな」


「健司、私達だって悪くないわ。一緒に勉強して良かったね」

「ああ、そうだな佐紀。俺もそう思うよ」

「じゃあ、約束は守ってね」

「ああ」

 あれ小松原さんが赤くなったよ。


 俺は健司達と教室に戻ろうとした時、

「達也さん、お話したい事があります。今日のお昼休み宜しいですか?」

「良いですけど」

「達也、じゃあ私は放課後話をしたい」

「早苗か、分かった」

 何だろう。もう終業式までイベントは無い筈だが。


 教室に入ろうとした時、更に涼子が、

「達也、今日の夜電話して良い?」

「良いけど」

「じゃあ、するね。午後九時位なら大丈夫だよね」

「ああ、その時間なら部屋にいる」

「じゃあ、その時にね」


「達也、益々のモテぶりだな」

「健司か。何とかしたいよ全く」

「ははっ、贅沢な悩みだな」



 

 そして午前中の授業が終わり、昼休みとなった。

「達也さん、今日は裏の花壇のベンチで一緒に食べませんか?」

「いいですよ」


 玲子さんが作ってくれたお弁当の入ったバックを俺が持ち、裏の花壇に行くと運よく誰もいなかった。


 玲子さんが、ベンチをティッシュで軽く拭くと

「ここで広げて食べましょうか」

「はい」


「どうですか、お味は?もう全部私が作っています」

「はい、どれもとても美味しいです」


玲子さんは嬉しそうな顔で

「良かった。達也さんにそう言って貰えると作る励みになります」

「そうですか。良かったです」


 一通り食べ終わるとお弁当をバッグに入れて彼女が話し始めるのを待った。



「達也さん、私がここに転校してきて七か月になります。達也さんとはもっと早く相思相愛の関係になると思っていました。

 私は自分で言うのも恥ずかしいですけど、それなりに容姿も良いと思っています。勉強も出来ます。性格は…決して悪いとは思っていません」

「…………」


 そこで言葉を切って花壇を見ている。この季節は冬薔薇が綺麗に咲いている。気温が低いので水撒きも一週間に一回だ。三頭さんと手分けしてやっている。そんな事を思っていると


玲子さんは花壇の方を見たまま、

「でも実際は三頭さんという綺麗で頭脳明晰な方がいて、桐谷さんというとても可愛くて頭脳明晰な方がいる。それに本宮さんも。

 私はとんだ思い上がりでした。井の中の蛙でした。だから気持ちの焦りであなたと早く体を合せればそのポジションを決める事が出来ると思っていました。

 でも達也さんは最後までしてくれていません。私に魅力が無いのでしょう」


 また言葉を切って花壇を見た後、俺の顔をじっと見て

「達也さん、あなたから見て私はあなたに相応しくない女なのでしょうか?」

「えっ?」


「もしそうならばそう言って下さい。私は身を引きます。元の学園に戻ります」

 涙が目元に溜まって来ている。


「玲子さん…」

 もう涙が目からあふれ出て来た。


「玲子さん、俺はあなたに何度も言いました。大学卒業するまでは真摯に向き合うと。今俺の心がどっちに向いているかは、本当の所自分でも分かりません。

 でもあなたが俺に相応しくないという言葉は止めて下さい。俺こそあなたに相応しくない人間かもしれません」


「ならば、それが本当ならば、例えあなたの気持ちが今私に向いていなくても…。お願いします。そうすればこの不安な気持ちを落ち着かせる事が出来ます。毎日が不安で仕方ないんです。達也さんお願いします」

「玲子さん…」


――――――


 さて達也、玲子さんにどんな返事したのかな?


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。



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