第54話 それぞれの事情


 俺立石達也。俺は自宅に戻った後、食事をする前に早苗に電話した。多分玲子さんと同じ事だと思うが。


『あっ、達也』

『早苗、電話した。なんの話があるんだ?』

『達也、本宮さんと二人で会っている?』

『いきなりだな。友達の範囲として会っている』

『それって、ええーもいい。ちょっと待って。そっちに行く』

『おいちょっと待て…』

 切ってしまったよ。


ピンポーン。


ガチャ。


「あら、早苗ちゃんどうしたの?」

「今、達也と電話で話していたんですけど、直接会って話したいと思って」

「あら、あらあら。そう分かったわ。達也は自分の部屋よ。上がりなさい」

「ありがとうございます」


 私は急いで達也の部屋に行った。


ガチャ。


「達也」

「早苗か」

 ローテーブルで本を読んでいた俺の前にいきなり座った。


「お、おい」

「いいじゃない。達也、本宮さんと会っているの?」

「だから友達としてだ。早苗も俺が涼子と友達関係に戻したというのは知っているだろう」

「知っている。でも…。達也本当の事言って。中間考査の勉強で彼女と二人で会った?」


「……会った」

「どこで?」

「図書館で」

「本当に図書館でだけ?彼女の家とか行っていないよね?」

「行っていない。本当だ」


「うわっ」

 早苗がいきなり抱き着いて来た。そして上目遣いに顔を上げて


「達也、やだよ本宮さんとよりを戻しちゃ。達也私を彼女にしてくれるんだよね?」

「早苗…。心配するな。俺は涼子とよりを戻すつもりはない。信用しろ」


 じっと俺の顔を見ている。そして俺の胸に顔を付けて

「絶対やだからね。達也の事は信用する。私に嘘ついた事無いから。でも心が不安。ねえ不安をなくして」


 えっ、顔を上げて目を閉じたよ参ったな。でも仕方ないか。それに何回しているし。この位なら。


チュッ。


「もう一回もっとゆっくりと」


チューッ。


「抱きしめて」

 我儘だなあ。仕方ない。俺はゆっくりと早苗の背中に手を回すと早苗も俺の背中に手を回して来た。そして


チューッ………。


「はあ、はあ。ありがと達也。少し落ち着いた。ねえ本宮さんと会うのはいいけど、会う時教えて」

「なんで?」

「だって、心配で。達也、彼女とその…。心配なの!」

「早苗、俺を信用しろと言ったはずだ」

「…分かった」

 達也がここまで強く言うなら大丈夫かな。私は立ち上がると


「じゃあ、帰るね」

「ああ」



ガチャ。


「あっ、瞳ちゃん」

「えっ、なんで早苗お姉ちゃんがお兄ちゃんの部屋にいるの?」

「うんちょっとお話が有って」

「そう。お兄ちゃん、お母さんがご飯…ぶ、ぶ、ぶーっ」


タタタッ。


「お母さん、お兄ちゃんの口に早苗お姉ちゃんの口紅が付いているー」

「「ああーっ」」


 私が玄関へ行くと

「ふふふっ、早苗ちゃん、泊って行く?達也の部屋に?」

「か、帰ります」

 もう自分の顔が真っ赤になっているのが分かった。



 俺は早苗が返った後、ティッシュで口を拭いてダイニングに行ったが、母さんと瞳の質問攻撃でまともにご飯が喉を通らなかった。


 質問はご飯後も続いたが、何とか解放いや逃げて自分の部屋に戻った。


 早苗なら涼子の事を聞かれても頭に来ることはない。むしろ早苗の気持ちがスッと心に入って来る。やはり玲子さんとは…。でも高校生の間は真摯に向き合うしかないか。



 私桐谷早苗。達也と口付けしている所を見られなかったけど、口付けした事は達也のお母さんと瞳ちゃんにバレてしまった。


 いずれお母さんにも伝わるだろう。お母さん達仲いいし。恥ずかしいけど、これは良い既成事実になるかもしれない。


 でも本宮さんとの事は注視しないと。達也はああ言ったけど、今後は分からない。二人共好きで愛し合った仲。いつその気持ちが元に戻るか分からない。


 そうしたら立花さん、三頭さんでさえ大変なのにこの二人より強力なライバルの出現になる。


 私も本当は達也と…。でもまだ私にはその勇気が無い。知らない事への怖さだ。自分がどうなってしまうのかも分からない怖さ。だからする事が出来ない。


 でも躊躇していたら、取られてしまうかも知れない。どうすれば。達也に正直に話す?何を話すの。もう待ってって言ってある。私が勇気を持つだけ。でもどうしよう。





 私三頭加奈子。今自分の部屋にいる。ここで達也と…。思い出しただけでも顔が熱くなる。

今度の日曜日、達也とまたに会える嬉しい。映画見てそしてふふふっ。何着て行こうかな。


コンコン。


ガチャ。


「あっ、お母様」

「加奈子、お父様が呼んでいます。書斎に行きなさい」

「分かりました」

 なんだろう?お父様が私に声を掛けるなんて。



 私はお父様の書斎に行くとお父様が一人で待っていた。私は部屋の中のソファに座ると

「お父様、何ですか?」


「加奈子、お前今付き合っている人がいるか?」

「…どういう意味で聞かれています?」


「加奈子、お前はもう十八だ。見合いして見ないか。もちろん結婚とか直ぐに決める訳ではないが」

「お断りします」

 冗談じゃないわ。達也以外の男なんて。


「何故だ?」

「私には意中の人がいます。正式ではありませんがお付き合いしています。友達以上の関係で」

「…そうか」

 お父様が腕を組んで考えている。何だろう。でもお見合いなんてする気は毛頭ない。


「会って見るだけでも良いんだが」

「お断りします」


「加奈子が交際をしているという男の名前は何という?」

「聞いてどうするおつもりですか?」

「別にどうもしない。気になっただけだ」

「ではお気になさらないで下さい」


「ははっ、爺さんに似て頑固だな。まあいずれ三頭の頂点に立つ人間だ。その位でいい。しかし早々男を相手にしないお前が、友達以上の関係とはな。父さんは気になるが」

「…お父様が調べればすぐに分かる事ですよね。何もしない事を条件に名前教えます。宜しいですか?」


「分かった。それだけは約束しよう」

「立石達也さんです。これで宜しいですか。くれぐれも何もしないで下さいね。もし何かしたら私は三頭家を出ます」

 三頭家が本気を出せば例え一部上場企業でも潰される。絶対に手は出させない。


「立石?」

「お父様は何か知っているのですか?」

「加奈子、その立石達也という男は一部上場企業の立石産業の家の者か?」

「はい、そうですが」

「ふむ、おもしろい。分かった。見合いの話は聞かなかった事にしてくれ。もう下がっていい」

「分かりました。約束は守って下さいね。お願いします」

 お父様は立石家の事を知っている様子。何故だろう。



 加奈子が、立石家の倅と縁を持つとはな。時の流れとは面白いものだ。この事爺さんに話したら喜ぶだろうな。さて楽しみが増えたな。


――――――


早苗と達也の関係思い切りお母さんと瞳ちゃんに誤解された様な。

でも三頭家と立石家って?


次回をお楽しみに


読者の皆様へ

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