第55話 日常の中にある気持ち
後書き長いですが読んで頂けると幸いです。
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今日は金曜日。俺は朝いつもの様に玄関を出ると門で早苗が待っていた。
「達也おはよ」
「おはよ早苗」
「行こうか」
「ああ」
昨日、達也のお母さんと妹の瞳ちゃんに私と達也が口付けした事を知られた。考えようによっては外堀を埋めると言う事で良いかもしれないが、やはりちょっと恥ずかしい。
「達也、昨日おばさんと瞳ちゃんに何か聞かれた?」
「ああ、大分聞かれたよ」
「そうか、ごめんね」
「早苗が謝る必要はない。まあ大分恥ずかしかったけどな」
「そ、そう」
達也は私との口付けを認めてくれている?
「達也、明日学校の帰りに会えない」
「学校の後か。うーん」
涼香ちゃんの事がスッキリしていない。どうすればいいか。
「私、明日図書室で待っていても良いよ」
「…………」
そうか早苗はまだ図書室担当が代わった事を知らないんだ。
「早苗、図書室担当が代わって俺は水木だけになった。月曜日は連絡会だけだ。だから明日は空いていると言えば空いているんだが」
「何か不都合な事があるの?」
「ああ、涼香ちゃんの事なんだ。今までずっと一緒に帰っていたんだが、涼子の事が収まってからもう別々に帰ろうと言ったんだが、まだ襲われるかもしれないからこれからも一緒に帰ってくれと言われているんだ」
えっ、まさかあの子達也の事が…。なんて姉妹なの。
「達也はどうするつもり?」
「うーん、考えている。ああ言われるとちょっとなあ」
達也の優しさに付け込んで姉といい妹といい、許されない。
「達也、明日は私のお願い優先して。私が本宮さんの妹に言っておく」
「いや、それは」
「私が言っておく!」
早苗は言い出すと聞かないからな。でも今回は止めさせた方がいい。
「早苗、俺が言うよ」
「じゃあ、私を優先したって事もはっきり言って」
「はっ?」
「ねっ、お願い」
話している内に駅に着いてしまった。二人で学校のある駅まで行くと早苗は先に降りて改札を出た。
俺が改札を出ると
「達也さんおはようございます」
「たちば・・・玲子さんおはようございます」
急に玲子さんが花開いたように目を大きくして笑顔になった。
「た、達也さん、いま名前で呼んで頂きました」
「一応、学校の外では名前呼びって約束したんで」
達也さんはやっぱり優しい、約束は必ず守ってくれる。私もきちんとしないと。
「達也さん、玲子嬉しいです」
あれ、顔が赤くなったよ。早苗や加奈子さんと同じつもりで言ったんだけど。
「じゃあ、玲子さん学校に行きましょうか」
「はい♡」
俺達が下駄箱で履き替えて教室に入って自分の席に行くと玲子さんも自分の席に向かった。
「健司おはよ」
「おはよ達也。なあ立花さんとなんか有った?」
「いや何も」
「そ、そうか。なんか最終ラインを突破した位明るい顔しているんだけど」
「それはないが」
うっ、視線を感じてその方向を見ると早苗が凄い形相で俺を睨みつけていた。
俺なんか誤解されたかな?
今の時期は大きなイベントも無く平穏な時期だ。俺も平穏な高校生活を送れる。…と思っているのだが。
午前中の授業も平穏に過ぎ、
「達也さん、お弁当食べましょう」
「いつもすみません」
「もうそういう事は言わないで下さい。私が達也さんのお弁当を作るのは当然の事です」
「…………」
何でこの人は静かな池に石を投げ込むのかなあ。あーあ、早苗がこちらを睨んでいるよ。
「達也さん、今日のだし巻き卵如何ですか?」
「あっ、いつもより美味しいです」
「ふふっ、良かったあ。私が一人で出汁から作ったんです。こちらのきんぴらも私が作ってみました」
「美味しいです」
なんかいつもと違うぞ。なんだこのアピールは?早苗の表情が険しくなっている。
俺は一通り昼食を摂り終わると
「立花さん、ちょっと行く所があるんで」
「えっ、そうですか。少しお話したかったんですけど」
「済みません」
俺は流石に教室の中にいるのが息苦しくなって裏庭の花壇の所に来ていた。
参ったなあ。なんか立花さん、あの発言意図的な感じがする。どうしたんだろう。
「達也」
「あっ、三頭さん」
「誰もいない時は加奈子」
「駄目です。学校内です」
「もう達也は固いんだから。それでどうしたの一人でここ来るなんて。水やりは今日じゃないわよ」
「いえ、少し花を見たくなっただけです」
「ふふっ、達也は嘘が下手ね。いいわ。明後日聞いてあげる」
「…………」
翌土曜日の放課後、俺は教室に早苗を待たせて図書室に行った。もう図書室は空いている。受付で涼香ちゃんが開室処理をしているを見ながら
「涼香ちゃんちょっといいか」
「あっ、はい立石先輩」
「今日用事が出来て一緒に帰れない」
「えっ、そんな」
「ごめん」
先輩が図書室を出て行ってしまった。なんの用事だろう。私はお姉ちゃんの様な失敗はしない。それに無理に先輩の隣の席も取ろうとしない。
でも高校生活の中で先輩が側に、ううん深く私の中に…心の中も体もそうするだけで良いのに。
そうすれば後一年半素敵な高校生活を送れる。何とかしないと。でも誰だろう。今日会う人って。
俺は教室に戻ると
「早苗待たせたな」
「ううん、良いよ。行こうか」
「ああ」
駅まで一緒に行き電車に乗った。早苗が下を向いて何も言わない。家のある最寄りの駅に着くと
「達也、今日私の部屋に来ない?」
「良いけど」
別に子供の頃からの習慣だ。でも早苗の部屋でなにかあるのかな?
俺達は制服のまま、早苗の玄関に入った。
「お邪魔しまーす」
「…………」
「あれっ、誰もいないの?」
「あっ、うん。それより早く上がって」
「ああ」
早苗の部屋は二階に上がって突き当りに有る八畳の部屋だ。何も考えずに部屋に入ると
「達也、ちょっと待っててね」
俺が床に座って待っていると
「紅茶、暖かくて良かったかな?」
「ああ、もうだいぶ寒くなって来たからな」
早苗がじっと俺の顔を見ている。顔になんかついているのか。
スススと早苗が寄って来て俺の足の上に跨いで座った。
「お、おい」
顔を両手で持たれて、え、ええっ?
チュッ、チュッ、チューッ。
少しの間そうしていると顔を離して俺の肩に顔を乗せて来た。
「達也…私の事好き?」
どういう意味で聞いているんだ?
「ああ好きだよ。大切な幼馴染だからな」
急に早苗が自分の顔を俺の顔の前に持ってくると
「達也、幼馴染だけだったら口付けはしないよ。私は達也の事好き、だーい好き。ねえ、して。今日は午後六時まで誰も返ってこないから」
「な、なに!早苗どうしたんだ?」
「達也、私不安なの。本宮さんの事が落着いたと思ったら、今度は妹が達也に言い寄っている。もちろん姉も隙あらばと達也を狙っている。
立花さんは、夏休み前より凄く積極的。…三頭さんも。ねえ三頭さんとしたの?」
「何でそんな事聞く?」
「三頭さんのあなたに対する態度、女の感。怒らないから正直に答えて」
「…………」
「黙っているって事は肯定するのね。いいよ、あの人積極的だから仕方ない。だから私にもして。そうすれば彼女と同じになれる」
チューッ。
「達也して」
早苗の手が俺の手を彼女の胸に持って行った。そのままにしていると、えっ!
ブラウスを脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと待て早苗」
あっ、ブラウスを脱いでしまったよ。
「達也、あなたの為に誰も触らせていない。達也が初めて。お願い」
「…………」
どうすればいいんだ。早苗は俺の大事な幼馴染。キスはしてしまったけど。これは…。
あっ、ブラまで取っちゃった。
「ふふっ、達也見せたわよ。もう後には引けないから」
俺の手を彼女の…とても柔らかい…に持って行かれた。俺の頭の中に危険信号が思い切り燈っている。
「早苗、お前の気持ちはよーく分かった。俺も覚悟を決める。お前を抱く事にする。
でもお互いが十八になるまで待ってくれ。万一有ったらお前の両親に顔を向け出来ない」
「そんな事ない。今したら両親だって喜んでくれる。それに達也のここ。良いよって言っている。私を認めている。だから…」
くそっ、なんて事だ。でも俺も男。これは物理的なものだ。大人しくなれ!
「早苗、気持ちは十分に受け取ったらから、だから十八の誕生日まで待ってくれ。頼む。そしたら何が有っても責任取るから」
「ほんと、本当にほんとだよね。嘘ついたら達也を殺して私も死ぬから」
「わ、分かった」
何とか納得してくれたようだ。でも早苗の胸綺麗だな。
「達也何処見ているの。エッチ」
サッと両手で自分の胸を隠した。それでもはみ出ているけど。
「え、エッチって言われても…」
早苗がまた抱き着いて来て思い切り唇を合わせて来た。
どの位経ったか分からない。そっと早苗が唇を離した。
「達也、絶対に離さないから。誰にも譲らないから。達也は私の彼で未来の旦那様なんだから」
「わ、分かった」
「本当に分かったの?」
意味合っていない様な。でもここはこれで。
早苗が抱き着いたまま
「ふふっ、気持ちいいでしょ。結構大きのよ。ぜんぶ達也のものだから。でも誕生日一緒だね。でも後半年かー長いなー。ねえ達也フライング有だよ。遠慮なく」
「駄目無い」
「もう達也のケチ」
何がケチなんだ?
「達也、散歩に行こう」
「ああ」
――――――
危機?を脱出した達也。でも皆色々な思いがあります。
達也に関して読者様から色々なご意見が寄せられていますので、ちょっと説明。
複数の女性から好意を寄せられている達也。彼女未経験、中学校まで女っけ無しの男の子がどう対応して行けばいいか分からず悩んでいるのが、今の彼の状況です。優しさがあだとなっている所もあります。
三頭先輩:好きでなくてもいい、高校生活の間だけという条件の中で、思い切り美少女から好意を寄せられ、無下に拒否するのはというのと男の子なので。
玲子さん:親同士の関係もあり、またあくまで本人同士という事で高校卒業を一つの区切りとして大学まで真摯に向き合うというスタンスです。これは彼自身の立場としてしなければいけないと思っています。
早苗:この子が誰かを好きになり自分から離れていく予定だったと思っていましたが、早苗と達也の家同士の関係もあり、無下に出来ないところです。
涼子:命を助けた事もあり、精神的に支えてあげようという気持ちでお友達しています。
ちょっと長くなりましたが、達也なりに考えての行動と思って頂けると幸いです。彼が今後どうやって好意を寄せてくれている女の子達を説得して一人を選ぶかも読みどころとしてくれると嬉しいです。
次回をお楽しみに
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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