第10話 彼女の決意、俺の覚悟


 俺は涼子に言われた通り遊園地に行った翌日、涼子の家に午前十時に来た。


 玄関のインタフォーンを鳴らす。


 ガチャ。


「達也、入って」


 勉強会で彼女の家に入る事は慣れていたので抵抗なく入った。靴を脱ぐとリビングに行くと思っていた俺は彼女の言った事に驚いた。


「達也、今日は私の部屋」

「えっ!」

「驚いた顔しないで。二階だから」


 どういう事だ。流石に緊張した。

「入って」


 彼女がドアを開けると女の子の匂いなのか部屋の中から甘い匂いが流れて来た。

「…………」


「ほら、そんなに緊張しないの」

「…………」

 緊張するなと言われてもしない方がおかしい。俺が女の子の部屋に入るのは始めただ。

 もちろん、性別的女性である妹の瞳の部屋と早苗の部屋は入ったことが有るが、小さい時からそうしているので何も感慨深いものはない。


 だ、だけどだ。ここは俺の彼女涼子の部屋だ。


「は、入るぞ」

「ふふっ、入って下さい」


 壁は白、机に本棚。洋服ダンスが二つ、それにベッドだ。可愛いカバーが掛けられている。

「座って」

「…………」


「どう私の部屋の感想は?」

「と、とっても可愛いよ」

「そうかあ」

そう言っている涼子を改めて見ると水色のTシャツとコットン生地の薄い茶色の短パンだ。


 俺の側にピタリとくっ付いて座った。俺の方を向くと

「達也、今日はね午後五時まで誰も帰ってこないんだ」

「そ、そうか。涼子は留守番か?」

「ふふっ、そうだよ。達也と二人で留守番。何しても誰にも分からない」

「へっ?」


 五分位沈黙が続いた。


「達也、私の事好き?」

「今更、もちろん好きだ」

「じゃあ私をずっと守ってくれる?」

「もちろんだ」


「ずっとだよ、ずーっとだよ」

「ああ、もちろんずーっと守る」


 彼女が俺に向いて唇を合わせて来た。長い時間合わせて来た。一度離れると


「ねえ、分かるよね」

 

 こ、これってもしかして。いやでも勘違いだったら大変な事だし。ど、どうすれば。


「達也、分かるよね」

 そう言って涼子は俺の手を彼女の胸に置いた。


「でも、俺何も知らないぞ。した事無いし」

「ふふっ、達也は女の子私が初めてだもんね。私も貴方が初めて。分からないけど…」


 彼女はゆっくりと自分のTシャツを脱いだ。



「優しくしてね」


…………………。



「痛い」

「ごめん」

「大丈夫だから」




 全く手探りだった。でも何とか最後まで出来たみたいだ。彼女の口から初めて聞く甘い可愛い声を一杯聞けた。


「なあ、終わってからこんな事聞いちゃいけないんだろうけど…。大丈夫だったのか?」

「うん、大丈夫な日だからあなたを呼んだの」


 俺達は少し休んだ後、更に二回体を合せた。そして


 グ~ッ。


「ご、ごめん」

「ふふっ、こんな時に」

「そんな事言ったって」

「分かった。ご飯作ってあげる。でももう少し休ませて」

「う、うん」


 少しして彼女がベッドから降りるととても歩き辛そうだ。

「大丈夫か?」

「だって。でも大丈夫」



 彼女はキッチンで簡単に焼きそばを作ってくれた。俺のお皿には一杯に、彼女のお皿には少なめに。


「こんなものしか作れなかった。ごめん」

「とんでもないよ。頂きます」

「召し上がれ」


「とっても美味いよ」

「ふふっ、ありがとう」



 食べ終わって、食器を洗い終わって彼女の部屋に戻るとまだ、午後三時だ。


「ねえ、もっかいする?」


 もう一度二人でした。少し余裕が出来た。


 二人で横になると結構狭い。俺が大きい所為だけど。壁側に彼女を寝かせて何とか並んで抱合いながら

「達也、ずっと守ってね。ずーっとだよ」

「ああ、涼子をずーっと守るよ」


 彼女の柔らかくて暖かい体を抱きしめながら、

涼子は俺に全てを委ねた。だから俺はこの子をずっと守る。しかし本当に俺で良いのか?


「こらっ、また考えているでしょ。俺で良いのかって」

 えっ、顔に出ているの?


「達也、私は自分の意思でこうしているの。あなたでないと嫌なの。もう分って」

「分かった」


「もうこうしちゃう」


 俺の体の上に乗って思い切り唇を合わせて来た。



 


 俺達は午後四時半に彼女の家を出た。まだこの時間は明るい。少し歩き辛そうだが、散歩に行きたいと言うので、ゆっくりといつもの河川敷の公園に行った。夕日が綺麗に輝いている。


「達也、二学期までまだ一週間あるね。毎日会える?」

「ああ、いいよ」

「嬉しい」


 俺の腕に寄りかかりながら上目遣いに俺を見て来る。とても可愛い。


 午後五時半位に彼女を家に送り届けると自分の家に帰った。


「ただいま」


タタタッ。


「おかえりおにいちゃ……」


タタタッ。


「お母さーん。お兄ちゃんの体から女の人の匂いがするー」


「えっ?」

 涼子の体に思い切りくっ付いていたから匂いが移ったのか。これは不味いぞ。何か言い訳考えないと。


 その夜。俺はまた妹と母さんから執拗に追及された。一応誤魔化し通したつもりだが、最後に母さんが、


「達也、夏休み中に連れて来なさい。お母さん会いたいわ。あなたが選んだお嬢さんを」

「あ、ああそのうちに」

「お兄ちゃん。お母さんは夏休み中と言っているのよ。日にち決めて。私も出かけないから」

「え、えーっ、いやいや、瞳は出かければいいだろう」

「駄目、私も妹としてお兄ちゃんの彼女さんを見る責任があります」

 どんな責任だよ?


 俺は風呂から出ると涼子に電話した。


『涼子、俺』

『達也、どうしたの?』

『実は、母さんがどうしてもお前と会いたいと。それも夏休み中に』

『えーっ…………。そう言って頂けるのは嬉しいけど…。心の準備が』

『そ、そうだよな。でも後一週間しかない』

『……お母さんの都合はどうなの?』

『どうもこっちの都合に合わせるみたいだ』

『じゃあ、明後日でどうかな』

『分かった明日聞いてみる』

『明日会った時に教えて。明日は私の方の駅に午前十時で良いかな?』

『分かった』




 翌日母さんからは直ぐにOKが出た。瞳も都合付けると言っている。参った。翌日それを教えると

「じゃあ、午後一時に私の家に迎えに来てくれる?」

「分かった」


 その日は映画を見て一緒に昼食をとって散歩で過ごした。


―――――


 ふむっ、達也君、覚悟は出来たみたいですね。


次回をお楽しみに


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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